そのダンジョン、準備中につき・3
500ポイント貯まったことで、再び、俺とシエルが集まって俺の強化をすることにした。ムラサメはまた狩りに出かけた。
「シエル、罠の設置は終わったのか?」
「もちろんよ。落とし穴、岩の罠、丸太の罠の設置は終わったわ。ゴブリンとキラーアント、ムラサメには通らないようにもう言ったわ。ベビースライムは重量的に発動しないから――最後にタードも気を付けてね。はい、これ、罠の設置している場所を書いた地図よ」
俺はシエルから手書きの地図を貰う。
地図の中身を確認する前に、俺はその地図の表を見た。
『古着最大95パーセントオフ! 最安値50シール~』
……広告の裏に地図を書いたのか。
「最近、紙もだいぶ安くなったわよね。本当にチラシが増えて助かってるわ」
「一応、これ、迷宮の重要事項なんだがな」
チラシの裏に書かれた地図をボス部屋の奥の俺たちの自室の壁に貼り、
「起動」
と言ってスクリーンを展開させる。
魔物管理、タードから強化をする。
500ポイント……これで新たな力が得られるというわけか。
とりあえず、触手が伸びたのはなんとなくわかった。
そして、もうひとつ。身体の中に何か違和感が。
これは――
今回は自分の変化に気付きながら、一応管理画面を見た。
…………………………………………
名前:バス・タード
種族:スライム
年齢:十七日
状態:契約(パートナー:シエル・フワンフワン・シャイン)
スキル:触手3 溶解液1 自己再生1 接着粘液1
特殊スキル:魔法無効・超硬化
称号:元人間・ボスモンスター
備考:前世の知識と記憶一部有
…………………………………………
接着粘液――か。
一体、どのくらいの効果があるのだろうか?
「接着粘液って、ガムスライムが吐き出すあれよね。とにかくくっつく粘液で」
「あぁ、一般的に接着剤として使われているあれだ。どれ、どのくらいの効果があるか試してみるか」
俺はそう言うと、シエルの胸へとジャンプした。と同時に体に接着粘液を出す。
「きゃぁぁ、タード、離れてよっ!」
「見事にくっついて離れないな――でも、シエル。あんまり柔らかくないぞ」
「女の子の胸を触って柔らかくないって失礼でしょっ!」
「ムラサメよりは柔らかいけどな」
ムラサメの体はほとんど鉄と変わらないし。
よし、暫くこの感触を楽しもうか。
「タード、本当にこれってどうやってはがれるの?」
「なんだ、シエル。知らないのか? スライムの粘着液の中和剤は溶解液が使われるんだぞ」
「なら、溶解液を……って……溶解液を使ったら私の服が――」
「あぁ、溶けるな。お前の唯一の服が」
「そんなぁぁっ! そうだ! タードの体の表面をそぎ落とすっていうのはどう? 回復魔法かけてあげるから」
「嫌だよ、そんなの! いいだろ、当分このままで――」
「ダメに決まってるでしょっ!」
俺は笑い、シエルは泣いた。
俺たちの迷宮はいつも通りにぎやかだった。
※※※
一方、タードの対戦相手であるニキティスは、豪華絢爛なテーブルの上に広げている、先ほど届いた地図を凝視していた。
ダンジョンの構造は基本通り。罠を仕掛けそうな場所も予想はできる。
「シエルは基本に忠実ですから、きっと落とし穴、丸太の罠、岩の罠を使ってきますわね」
と、まさにシエルが設置した罠を言い当てていた。そのあたりは昔馴染みの特権でもある。ただし、自分の手の内もだいぶばれているとニキティスは思っていた。
マーレの存在も知られている以上、こちらの手勢がリザードマンであることもバレているだろう。
「正攻法の利点は、知られたからといって痛手は少ないことですわ」
とニキティスは後ろに控えるマーレに言った。
「主様の仰る通りです。ですが、あのムラサメという剣士――油断できません」
「そうですわね。リザードマンでは明らかに力量が足りませんわね」
「私が出向きましょう」
「マーレでは役不足でしょうが――他に相手できる者はいませんわね。ですが、それは最後の手段ですわ。相手は所詮ひとり。誰かがあの剣士を足止めしている間にボス部屋に入ればいいだけですわ。相手は所詮スライムですもの。リザードマン一体でも余裕ですわ」
「主様――そのことなのですが、あのバス・タードというスライムは別の意味で油断できない相手です」
「……どういうことですの?」
「ああいう輩は主様に召喚される前に何度か相手したことがあります。何を考えているかわかりません。そもそも、このダンジョンバトルそのものが罠である可能性もあります」
「本当ですの?」
「はい。己の利がない時に喧嘩を買うような者ではありません――防衛戦を指定したのも気になります。もしかしたら侵入者を皆殺しにし、ポイントを獲得するのが目的かもしれません。今回出撃するのは主戦力を除き、出動するリザードマンは全滅する覚悟をお持ちください」
「……わかりましたわ。マーレの言葉、しかと聞きました」
「はっ、ありがとうございます」
マーレがニキティスを主と認める理由がそこにある。ニキティスはできることは自分でする。部下への指示、他のダンジョンフェアリーやダンジョンボスとの交渉も。勧誘だけはマーレに任せないといけないので付き添うだけだが、その時の補助も的確。
だが、何よりもマーレが彼女を敬うのは、配下の言葉を全て考察することだ。どんな助言だろうと、時には的外れな提言だろうと、ニキティスはそれを邪険に扱うことはしない。
全ての言葉を聞き、最適な答えを導き出す。
マーレは、ニキティスにこそ王たる器があると思ってやまない。
だからこそ、こんなところで彼女を躓かせるわけにはいかないと思っていた。
(剣士、ムラサメ。ダンジョンフェアリー、シエル。そしてスライムのタード。あなたたちを私の倒すべき敵といたします)
マーレはそう心に決めると、おそらく今、とてつもない作戦を考えているであろうライバルたちに対抗するため、己を高める修練へと向かった。
※※※
「シエルさん、この服はどうでしょうか?」
「あぁ、かわいいけどちょっと値段は高いわね」
「やっぱりスライム用の服は売っていないな」
「ちょっと、タード! 動かないでよ。服が破れるでしょ!」
俺たちは今、混沌の町の古着屋で買い物をしていた。溶解液でシエルの服を溶かすしか解決法がないので、シエルは本気で泣きそうになったが、古着屋で服を買うことで話し合いは解決。
チラシについていたクーポン券の利用が今日までだったからだ。
そして、二時間の買い物の後、シエルが買ったのは今着ている服と全く同じ学生服三着だった。
大勢の卒業生が売りに来たそうなので在庫過多でたった50シールだった。
その後、試着室で服を溶かして俺とシエルは分離。シエルは学生服に着替えた。袖も元通りの長さになっている。
「同じ服を三着も買うなんて、本当にこんな贅沢していいの?」
「あぁ、贅沢でよかったな。余った金で雑貨品買って帰ろうぜ。さすがに本棚しかない部屋にじっといるのも辛くなってきた」
「雑貨!? なに、その魅惑な響き。雑貨を買うなんて子供の頃からの夢だったのよ」
「なんだよ、その軽い夢。って、そうだ。雑貨屋に行く前にお前の下着を買いに行かないとな」
「え? 買っていいの? 私、タードに一生ついていくわ」
「泣いて拝むなっ! 鬱陶しい」
俺に足を向けて寝られないと言うシエルの頭を触手で小突いて、追い払った。
「……シエルさん、本当は幸せ属性持ちなんじゃないですか?」
ムラサメが呟く問いに、俺も実はそうなのではないかと思った。ここまで徹底していると少しシエルが羨ましく思えてくる。
現在の課題 (クエスト)
・ダンジョンに罠を設置しよう
・ダンジョンバトルの準備をしよう
・500ポイントを使ってタードを強化しよう(complete)
・1000ポイントを使ってタードを強化しよう
・盗賊を二日以内に皆殺しにしよう
・妖刀ムラサメの解呪をしよう
・シエルの下着を買おう(complete)
現在、ツイッターでアンケートを行っています。
アンケートの結果によって2章のヒロインが決まります。ツイッターアカウントを持っている方はぜひアンケートにご回答ください。(23日、朝まで回答を受け付けています)
https://twitter.com/tokinoyousuke/status/866079978936455168
※追記
※アンケートは終了しました




