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その過去、茨の戒めにつき・2

 人気のない大通りを進む。

 生きている者の気配はまるでないが、亡者の気配はだんだんと強くなる。

「見られているのか、泳がされているのか」

 俺は両サイドの閉まっている扉を見て、心底疲れたように言う。

 あの扉の奥に魔物が待機しているのは丸わかりだ。気配を隠す気がないのか、気配を隠す技術がないのか、それとも俺の気配を読む力が優れているのか。

「一番恐ろしいのは、両サイドに隠れている魔物が囮で、本命の魔物がどこか別の場所に隠れていて、そっちの気配を隠すためにみえみえの気配の魔物を配置していることだな」

 俺は周りに聞こえるように言う。

 これは、お前の考えていることなど丸わかりだぞ、という牽制であると同時に、仲間たちにも油断しないように警戒を促す意味もある。

 敵探知エネミーサーチの魔法でも、結界の中に隠れている魔物はわからないからな。

 だが――

「安心したまえ。私は君と違い、そんな卑怯なことはしないよ」

 男はそう言って、正々堂々現れた。

 と同時に、両サイドの建物の扉が開き、スケルトンやゾンビたちが現れる。

 が、このくらい想定の範囲内だ。

「クロウリー、ここにいるのが誰かわかるか?」

「勿論だよ。エルザをあの牢獄から救い出してくれたこと、心から礼を言おう。そのまま彼女をその場に置いていくというのなら、君たちの身の安全は保障しよう」

「は? それはこっちの台詞だ。俺たちを無事に返せばエルザの身の安全を保障するぞ。逆に俺たちの邪魔をするというのなら、エルザがどうなっても知らないぞ」

 と俺は触手をエルザの首に巻き付けた。

 すると、クロウリーは一瞬目を丸くしたが、目を覆って嘲笑った。

「ははははは、何をバカなことを言っている。君にそんなことができるわけがないだろうがっ! 確かに私はエルザのことは大事だが、その体は君がわざわざ助けにやってきたシエルなんだ。傷つけることができるわけがないっ! お前等、その汚いスライムをエルザの頭から引きずり降ろせっ!」

 クロウリーの命令で、スケルトンやゾンビが俺たちに襲い掛かってくる。

「警告はしたぞっ!」

 俺が大きな声で言った。そして、俺は触手に力を込める。

「あ…………が…………」

 エルザが憑りついたシエルの顏が苦悶で歪んでいく。

「はははは、エルザ。君にウソは似合わない。そんな演技、私には――」

 クロウリーが言ったが、その顔から徐々に笑みが消えていき、

「と……止まれっ!」

 俺が本気だと気付いたのだろうか、クロウリーが魔物たちを止めた。

 そして、俺たちから距離を取った。

「さて、道を開けろ。さもないと、今度はこのエルザの穴という穴から出てはいけないものが出てしまうぞ」

 とエルザの首を絞めたままそう言う。

 クロウリーは喚くように言う。

「首から手を放せっ!」

「お前たちが道を開けるのが先だっ!」

「くっ、お前たちっ! 道を――」

 とクロウリーが俺に従おうとした、その時だった。


 ――スポンっ!


 シエルの右耳の穴から出てはいけないものが出てしまった。

 つまり、そこからエルザの幽体が抜けてしまったのだ。

『はっ! すみません、あまりにも苦しくて出てしまいました!』

「バカ! エルザ、直ぐにシエルの体の中に戻れっ!」

『はいっ! あぁぁぁ、シエルさんが気を失っていて、憑依できませんっ!』

「え、お前って相手が起きてないと憑依できないのか?」

『憑依できるのですが、気を失っている人に無理やり憑依すると、精神に支障をきたす恐れが――きゃぁぁぁぁぁっ!』

 と俺とエルザが言い合っていたその時、エルザの体が急にクロウリーに引き寄せられるように飛んでいく。


 ――クロウリーの魔法かっ!?


 やばい、人質を失ってしまった。

「もう万策尽きたようだな。その気を失っているパートナーを人質にするか? 首を絞めて殺すか? 今度はどんな手を打ってくる、スライムがっ! 私のエルザを傷つけたこと死をもって償え」

『やめてください、クロウリー様っ! お願いですから』

 エルザがクロウリーの手の中で叫ぶが、その声はクロウリーの耳には届かない。


 このまま混戦になったら、結構ヤバいぞ。


 そう思った時だった。


「タードちゃーーーん☆、助けに来たよーーー♪」


 その場に似つかわしくない、バカみたいな声が響いた。俺のことをちゃん付けで呼ぶ者は多くない。というか、文字に☆や♪を常時つけるバカはひとりしかいない。

 ミミコだ。

 そして、それは現れた。


「ガシャドクロちゃんを連れてきたよ♡」


 高さ十メートルにも達しようかという巨大な茶色い骨の魔物――ガシャドクロがミミコとムラサメを乗せて現れた。

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