その吸血鬼、からかいの対象につき
すみません、ちょっと仕事が忙しくてサブストーリーのストーリー進行する暇もなくて、
とりあえずネタ回です。
転移扉を使って移動した先は、まるでどこかの城の謁見の間みたいな場所だった。
アストゥートはゆっくりと石の床の上を歩いていき、マントを翻すと玉座と言ってもいいくらい立派な椅子に腰かけた。
「よく来たな――って何をしているっ!」
到着すると同時に思い思いに行動を始める俺たちに対してアストゥートがツッコミを入れた。
「何をしてるのかって? とりあえず知らない男の家に行ったらエロ本を探すところからだろ」
と俺は玉座の裏を調べることにした。
「タードちゃん! あっちの部屋に棺桶があったよっ! 大きな棺桶っ!」
「あぁ、それはアストゥートのベッドだろ。そっちも怪しいからあとで探しに行くよ」
と俺はミミコに返事をした。ちなみにムラサメは鎧の騎士像が持っていた剣を勝手に抜いては「模造刀ですが、なかなかの逸品です」等と勝手に品定めをはじめ、アドミラは「掃除が隅まで行き届いていないな」と言ってどこからともなく箒とチリトリを用意して掃除をしはじめた。
大人しくしているのはペスとモルモルくらいだ。
そして、俺は玉座の裏に隙間があるのを見つけ、触手を伸ばす。
「よし、見つけた。やっぱりロリっ子が出てくる官能小説じゃないか!」
「それはただの文学書だ」
「という体で売っていることくらい知ってる。官能小説のリストくらい頭の中にあるからな」
と俺はペラペラと本を捲った。挿絵も何もない文字だけの本なので面白みもなにもない。まぁ、とりあえず読んでみるかと最初のページに戻ったところで、チャイルに本を取り上げられた。
「やめてください、タードさん。この本は主人もまだ読んでいないのですから」
「あぁ、それは悪いことをしたな。確かに未読の本を先に読まれるのって、ネトラレと一緒だもんな」
「妙な言い方をするなっ! それと何故貴様がそのことを知っているっ!」
「まぁ、主人の趣味についてはそれなりに」
とチャイルが意地悪そうな笑みを浮かべ、そして注射器とワイングラスを持ってきた。
「では、失礼しますね」
と彼女は幼女の腕を取り、器用に採血をする。その後、ワイングラスに血を移し、幼女にトレイとワイングラスを渡した。
トレイを受け取った幼女は、
「どうぞ、ご主人様」
「うむ」
と幼女の前で威厳を取り戻したアストゥートがその血の匂いを嗅ぎ、そして飲み干す。
「うむ、美味だ。やはり良質な音楽を聴いた血は格別だ。雑味が薄くなっている」
「お粗末様です」
と幼女は空になったグラスを受け取り、奥の部屋へと下がった。
「……ひとりの幼女で食欲と性欲を満たせるって、結構幸せだよな」
「無礼なことを言うな。性欲などで彼女たちを見ているわけがないだろう。それに、吾輩の胃を満たそうと思えばひとりの血では足りん。彼女たちの健康を考えると最低二十は食糧が必要になる。それより、お前の部下たちを止めろっ! 貴様は吾輩に喧嘩を売りにきたのか」
「あぁ、そうだったな。ミミコ、アドミラ、ムラサメ、集合だ! これからアストゥートの家で飯を食ってからシエルを迎えに行くから大人しくしてろ」
「貴様、食事まで要求するのか?」
「町の領主なんだろ? 考えてみればアドミラも俺の代役ではあるが、あの村の領主なんだし領主対談なんだ。それなりの食事を用意してくれないと町の程度が知れちまうぞ?」
「……チャイル、食事を用意してやれ。吾輩は寝室で少し仮眠をとる」
とアストゥートはイライラしながら寝室に向かった。
そして、俺たちは食事をご馳走になる。
血液だけが出てくるんじゃないかと心配したが、そんなことはなく豪華な肉料理だった。
チャイル曰く、「主人の初めての友達だからね」とのこと。
アストゥートの弁じゃないが、友達になったつもりなど俺もないんだけどな。
「ところで、主人をどうやって説得したんだい? 主人は結構頑固者だから運び屋みたいな真似は滅多なことじゃしないと思ったんだけど」
「ん? あぁ、これをアストゥートにあげる約束をしたんだ」
と俺は一枚の紙をチャイルに渡した。
「全部終わったら渡しておいてくれ。ミミコライブのVIP観覧席(団体客用)の招待状だ。これでロリっ子全員連れてライブ鑑賞できるだろ?」
「なるほど、主人は優しいですね」
「いや、普通に大勢のロリっ子ハーレムの中でライブ鑑賞をしたいだけだろ」
と俺はツッコミを入れておいた。




