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その吸血鬼、情報源につき・3

 アストゥートと横にいる名前も知らない幼女、そして俺、ムラサメ、アドミラ、ミミコ、ペスとでアストゥートの迷宮に向かうことにした。


「ご主人様、私が刀の姿になればもう一人分、席に余裕ができましたが……」


 ムラサメが後ろで、待機組となったニキティスを見る。


「知ってるよ。空いた席にはモルモルを連れて行く」

「そういえば、モルモルいないね」


 ミミコが周囲を見回し、彼女がいないことに気付いたようだ。

 というか、あいつはライブ会場にいた時に既にいなかったのだが、誰も気付いていなかったのか?

 あんな特徴的な仮面を着けているにもかかわらず、もしかしたら影が薄いのかもしれない。

 まぁ仲間になって間もないからだけだと思うんだが。


「モルモルには買い物に行ってもらっている。今回は不死生物絡みだと最初から思っていたからな、それ対策だよ。聖水とか買いにいってもらっている」


 と俺が言うと、アストゥートの顔がしかめっ面になった。


「頼むから吾輩がいる場所でその瓶の蓋を空けないようにしてくれたまえ。吾輩レベルの吸血鬼ならば聖水を直接飲まない限り害はないが、だからといって気持ちのいいものではない」

「あぁ、それはわかる。俺も聖水の匂いは好きじゃない」

「タードの場合、聖水を飲んだら消滅してしまいそうだよな」


 とアドミラが意地悪気に笑う。

 それは俺の体が煩悩のみで構成されていると言いたいのか? それに関して言えば間違いではないが、だが俺の煩悩は聖水ごときでどうにかなるものじゃない。


「他にも食料とかもな。ミミコ、お前の宝箱の中に半分くらい入れておけよ」

「うん、わかった! 小麦粉と藁も入ってるよ」


 ……そう言えば、藁餅を作る時に勝手に机にあったものを入れていたな、こいつ。


「お前の宝箱の中に一体何が入っているのか今後じっくり見せてもらいたいよ」


 ただ、見たら酷く後悔するような気がするけど。


「ペス。お前は話に加わっていないようだが、安心しろ。お前のために骨も用意させてるからな」

「はっ、ありがとうございます」

「ありがたいのか?」

「はい、骨は大好物です」


 ……冗談だったのに、本気で喜ばれてしまった。尻尾も振ってるし。

 まぁ、骨付き肉は買わせているから別にいいんだけど。


「まるで遠足気分だな」


 これが遠足気分だと言うのなら、アストゥートは引率の教師気分だろうな。

 そして、町の入り口で待っているモルモルを見つけた。

 大きな袋を持っている。


「おぉ、待たせたな――モルモル、半分はミミコに渡しておけ」

「よろしいのですか? 割れ物も多いですが」


 とモルモルの荷物を見ると、確かに袋から瓶等も顔を見せている。ミミコに渡すと言うことは瓶が割れるということと同義だ。ミミコに卵と陶器とガラスは持たせてはいけない。


「空間魔法で収納いたしましょう」

「ん? お前、そんな魔法を使えたのか?」


 収納魔法があるという話は知識としてあり、暇を見てはシエルに覚えさせようと思っていたが、かなり高度な魔法だ。実際、ポイントで覚えようと思えば五万ポイントは必要になる。


「はい。何かと便利ですから」


 モルモルがそう言うと、彼女が持っていた荷物が一瞬にして消え失せた。ハンカチをかけてから消していたら手品のようだ。


「成程っと、こいつは吸血鬼アストゥートだ。お前は知ってるよな?」

「ええ、存じ上げています。私もダンジョン戦管理委員の末端ではございますが働かせていただいておりましたので」


 モルモルは口調を変えずに言ったが、内心はどう思っているんだろうな?

 アストゥートはかつて、ダンジョン戦管理委員の数名を洗脳し、情報を得ていた過去がある。それに関してはかなりの制裁金を支払って和解したことになっているが、どのような感情が残っているのかは想像できない。


「はじめまして、メントレ・ド・モルモル・マソットと申します」


 とモルモルは頭を下げた。そういえばそういう名前だったなと今更ながらに思い出す。

 どうでもいいことだが、ファーストネームのメントレと、サードネームのモルモルは彼女の父方の祖父と母方の祖父が考えた名前であり、それをどちらも使うのが彼女の家の慣わしらしい。マソットというのがファミリーネームらしいが、「ド」の名前の意味は彼女だけでなく、彼女の家族、親族誰もわからないんだとか。変わった家族だ。


「あぁ、よろしく頼むよ」


 と頭を下げたモルモルに対し、アストゥートは軽く言葉を返す。どちらも大人の対応だ。ちょっとしたイザコザがあっても不思議ではないと思っていたが、モルモルは現時点で俺の部下だからな。面倒事の責任が俺に来るのはごめんだからいいんだけどさ。


「私の連れもそこにいるよ」


 とアストゥートが言うと、褐色肌の見事な乳のダンジョンフェアリー、チャイル・コビッチが現れた。

 相変わらず見事な乳だ。大事なことなので二度言っておく。

 と、胸だけを言及したが、彼女は銀色の髪に金色の瞳の、見た目ニ十歳後半くらいの女性だ。無論、魔物だから実年齢はわからないけれど。


「久しぶり、タード」

「久しぶりだな、チャイル。相変わらず見事な乳だな」


 さらに大事なことなので口にも出しておく。大きいし、張りもある。

 勿論、うちのアドミラも負けてはいないが、自分の女ではない者の胸というのはやはり違うな。


「褒めてくれるのはあんただけだよ。うちの主人は全く興味ないからね」


 と言ってチャイルは横目でアストゥートを見た。主人と言っているが、本義での主人と部下という意味であり、当然ふたりに婚姻関係はない。


「ふん、吾輩からしてみればそのようなもの、巨大な脂肪の塊に過ぎん」


 まぁ、アストゥートはロリコンだからな。チャイルの魅力がわかるはずがない。

 ミミコのライブを聞きに行くのだって、彼女の歌が好きだからというだけでミミコの見た目に関しては全く興味がないようだし。


「チャイル。彼らを吾輩の迷宮に招待する。場所は吾輩の玉座の前だ。町の外に出て転移門の前に連れていく」

「へぇ、ボッチの主人にも友達ができたのか。こりゃ今夜はパーティの準備をしないとね」

「ボッチではない。ただの商談の結果そうなったに過ぎん」


 とアストゥートはチャイルを怒鳴りつけるが、怒られている彼女はどこ吹く風だ。

 アストゥートが俺のダンジョン攻略の時にチャイルを連れて来なかったのはダンジョンフェアリーとの関係が良好ではないのが原因だと思っていたが、もしかしたらこのように仲が良すぎるのが原因なのかもしれないなと俺は勝手に思うことにした。


「ボッチ卒業記念祝賀パーティーでも開く?」

「開かんっ!」

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