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その現状、要警戒につき

「驚かないんだな」


 今まで俺が喋り出すと、たいていの人間は驚いたものだ。いや、人間だけではない、ほぼ全ての者が驚いた。驚かない者がいるとすれば、生まれたときから俺のことを主人として認識しているらしい、スポーンから生まれた魔物。そして生まれた時から刷り込みにより俺を親と認識しているヒヨコたち。それくらいなものだ。


「あなたのことは最初から少し思うところがありましたから」


 とラズベリーはこともなげに言った。思うところがあった……か。そういうのはできれば俺の台詞でありたいものだが。


「その思うところ、というのが何か教えてくれないか?」

「それは今度にしましょう。時間がありません、トールくんには黙ってきています。私をここに呼び出したということは、彼には聞かれたくないことなんでしょ?」

「……そうだな。単刀直入に言う。奴となにを話していた? 奴があの村に来た目的はなんだ?」


 俺は駆け引き無しに尋ねた。


「……彼の目的は、恐らくあなたでしょう」

「俺? 教会の聖騎士としてダンジョンを滅ぼすためか……」


 俺の知識によると、聖騎士っていうのもそこまで暇な仕事ではなかったはずだが。

 でもその理由が一番納得できるんだよな。

 特に俺たちの村は、教会の属国に近い立場であるマレイル国から独立し、ハンガード都市同盟に入ろうとしているのだから、村の利益を度外視しているのかもしれないし。


「いえ、普通はそのダンジョンが近隣の村にとって有益であり、しかも魔物が外に溢れて人々を襲ったりしない場合、聖騎士が出向いてまでダンジョンを滅ぼすことはなありません。それに、トールさんの装備を見るとどうもおかしいのです」

「おかしい?」

「ええ、頑丈な檻を組み立てていました。それも大きさ的に、恐らくあなたを捕まえておくためのものでしょう」

「……ん?」


 わけがわからない。なんで俺なんかを狙ってるんだ?


「わかりませんが、トール君を動かせる人間がいるとすれば二人くらいしかいません」

「この国の国王……は絶対にないな」

「ええ。この国の国王はもはや教会の傀儡も同義ですからね。あるとすれば、教皇聖下。そして、彼の師匠であるイディオさんくらいでしょうね」

「イディオ……確かお前の仲間だったな」

「ええ……そうです。どちらの命令で動いているのかははっきりとしませんでしたが――」

 イディオが仲間だったと聞いた時のラズベリーの返答、どうも歯切れが悪いな。実はあんまり仲良くなかったのだろうか?

「一緒にいるカリエナの目的とかは何かわかるか?」

「そうですね、彼女はトールくんの補助みたいです。彼女とは初めて会うのですが、魔物の方ですよね? トールくんは気付いていないようですけど」

「気付いていない?」

「ええ、彼は彼女のことを優秀な魔術師であるとしか思っていないみたい。そうでなければ、魔物嫌いのトールくんが魔物と一緒に行動するなんてありえないわ」

「魔物嫌いなのか?」

 まぁ、さっきもあいつ、普通にファーストチキンを殺そうとしていたよな。

「勿論よ。だって、彼の家族、村人、全員魔物に殺されているんだから。一匹のオーガにね。そのオーガを追い払ったのが、イディオさんで、まだ子供だったトールくんを引き取ったみたい。最初はどうしてオーガを殺さなかったんだってだいぶイディオさんを責めていたみたいだけど、今ではそのことに感謝しているようね。自分で皆の仇を取れるからって。イディオさんは復讐には反対だったんだけどね――」

 家族、村人を殺された復讐か……ペスと全く一緒だな。

 それにしてもオーガか。風鬼委員のリーダーのような人との調和を図ろうとするオーガもいるが、あれは例外中の例外だよな。普通のオーガは人を取って食う食人鬼であり、オーガの群れに村ひとつ滅ぼされるという話は珍しいものではない。

「質問はそれだけですか? それでは私はトール君が怪しむ前に、村に帰ります」

「最後にひとつだけ。どうして俺の質問に答えてくれたんだ?」

「ヒヨコたちが可愛いというのがひとつ。それと……そうですね、もしもあなたがトール君に捕まらず、ここのダンジョンボスとしていられたのなら、その時はもう一度ここでお会いしましょう。私はクーラさんを連れてきますから」

 と言って、ラズベリーはにっこりとほほ笑むとひとり、ダンジョンの出口を目指して歩を進めた。そして歩を止め、

「恐らく、最初はトールくんではなく、カレイナさんがダンジョン攻略に動くはずです」

「どうしてそう思う?」

「……勘です。気を付けてくださいね、彼女からはイヤな空気が出ていますから」

 と言ってラズベリーは再び歩き始めた。


 ……カレイナ相手ならばまだなんとかなるかもしれない。

 だが、ラズベリーの言ったイヤな空気――それが俺はどうしても気になった。


   ※※※


 翌朝。

 スクリーンを使い、昨日の夜からムラサメと交代で村の様子、特にラズベリーの家を見張っていたが、ラズベリーが家に帰ってからは誰も出入りをしている様子はない。このまま何も起きないのが一番なのだが、そうはいかないだろうな、と思っていたら緊急を知らせる通信がゴブリンから入った。

 しかもスポーンのゴブリンではなく、俺のことを嫌っている村のゴブリンたちだ。

 奴らからの知らせということは本当に急なことだろう。

 そう思ってスクリーンを展開すると、そこにはダンジョンから出るなと命じたはずのペスがいて……いや、しまった。俺が昨日命令したのは、今日はダンジョンから出るなって言ったんだった。つまり昨日が終わった時点でペスへの命令は無効になる。昨日はトールとカレイナのことで頭がいっぱいで、それに気づかなかった。

 あのバカ、勝手に夜中にダンジョンを抜け出しやがったな。まさか、トールのところへ?

 いや、トールのいるラズベリーの家付近は俺とムラサメがずっと見張っていた。ペスが近づけば絶対に気付いたはずだ。

『ペス、お前何をしてやがるっ!』

 俺が大声で叫ぶと、ペスは――

『タード様、これを……この手紙をシエル様から預かってきましたっ!』

 とペスはそう言って俺にその封書を俺に掲げたのだった。

現在の課題 (クエスト)

・ラズベリーと接触しよう(complete)

・カレイナを迎え討とう(new)

・シエルを探そう

・勇者について調べよう

・10000ポイントを使ってタードを強化しよう

・エロいサキュバスを配下にしよう

・アドミラの胸を吸おう

・一年後の新人戦に備えよう

・冒険者を迎撃できるようになろう

・妖刀ムラサメの解呪をしよう

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