そのミッション、危険な軍務につき・1
とりあえずヒヨコたちに事情を説明。
前にラズベリーについて話したことがあった。あの時は人間の区別はつかないと言われたが、ピンク色の髪の女と言えばわかってもらえた。あの時は今後ラズベリー以外のピンク色の髪の冒険者が来る可能性もあったため、そういう言い方はしなかったが、現在村にいる人間の中でピンク色の髪の人間はラズベリーだけだから大丈夫だろう。
そして、ラズベリーをトールという名前の金髪の男に気付かれずに休憩ポイントまで連れてきてもらいたいと話したら、ヒヨコたちは何か地図のようなものを持ってきた。
それは――
「村の地図かっ!?」
書いている文字こそ読めないが、その図はおそらく村の建物の配置を描いている。かなり正確であり見やすい。
「ピヨっ!(はっ! 父上の仰る通り村の見取り図でありますっ!)」
と目に傷のあるヒヨコが頷いた。
いつの間にこんなものを用意していたのか?
「紙やペンはどうやって調達したんだ?」
「ピヨっ!(シエル様に用意していただきましたっ!)」
どうやら、ヒヨコに対してオープン・クエッション(自由に答えられる質問)は意味がないようだ。クローズド・クエッション(はい、いいえのみで答える質問)でないと。
「この紙とペンを用意したのはシエルか? そうなら右翼、違うなら左翼を上げろ」
と俺が尋ねたら、ヒヨコは俺から見て左――右翼を掲げた。
つまり、シエルが用意したようだ。まぁ、そうだろうな。この地図の裏、よく見ると混沌の町の店のチラシだし、シエルはペンの類は学校で貰って余裕があるって言っていたから。
「さっき言った、ラズベリーの家はここだ。説明する手間が省けた、助かるよ」
と俺は地図でラズベリーの家を触手で叩く。
すると、目にキズのあるヒヨコが前に出て、
「ピヨ、ピヨピヨピヨ。ピヨピヨ、ピヨピヨピヨ。ピヨン。(秘密裏に要人を連れ出すとなれば方法は二つあります! 相手に気付かれずに村に忍び込むか、陽動を使うかです。今回は陽動作戦でいきます。チームをαとβに分け、チームαが村の入り口である地点Aで奇声を上げて村人を集め、その隙に村の裏側からチームβが潜入します)」
言っていることは全然わからないけど、様子を見ると、二手に分かれて表と裏から挟み撃ちにするって感じか?
ヒヨコたちはさらに説明を続けます。
「ピヨピヨピヨピヨ(対象の桃色の髪の人間の識別ネームをピンク、金色の髪の人間の識別ネームをゴールドと名付けます。ここで最悪な事態はピンクとゴールドが常に行動を一緒にする場合です。その場合ですが、我々のもう一つの部隊であるチームγを投入し、村を混乱に陥れます。ご安心ください、我々は軍ではありますが殺人者ではありません、村人は誰ひとり殺すことは致しません)」
なんかシリアスな雰囲気が出ているが、
「三つ目の戦力の投入をするってことか?」
と聞いたらヒヨコは右翼を上げた。肯定ってことか。
んー、どうも不安だが、でもヒヨコたちならばトールも簡単には殺せないだろう。なんたってこのダンジョンに来る冒険者たちにとってはアイドル的な存在だし、村人の目もあるからな。
問題は今回の会話に出てきていなかったカレイナか。
あいつの出方次第ってところだな。
それにしても、ヒヨコたちにダンジョンの命運を託すことになるとは……俺も堕ちるところまで堕ちたって感じだ。それもこれも、全部シエルが勝手にダンジョンを出て行くからだ。
本当に帰ったらどうしてやろうか――。
そして、数時間後。既に太陽は大きく傾き始め、ヒヨコたちが動けるタイムリミットが迫る。彼らは夜の視力はあまりよくないのだ。思ったより時間がかかった。
ここに来るまでに野犬や野鳥に襲われた。まだ森の中なので急遽ゴブリンたちを向かわせ、誰一羽死ぬことはなかったが、それでも七羽ものヒヨコが医務室へと運ばれた。
やはりダンジョンの外を生き抜くにはヒヨコたちだけでは厳しかったのかもしれないと思う。
ヒヨコたちが配置についたのを俺はスクリーンで確認し、連絡を待った。
『ピヨピヨ(チームα、配置につきました)』
『ピヨピヨ(チームβ、配置につきました)』
αとβから配置についたと知らせが届き、それから遅れて数秒後、γからも配置についたと知らせが届く。
村は現在、完全にヒヨコの部隊に包囲されていた。
突破はとても容易そうだが。
俺はスクリーンの右下に表示されている時計を見て、そして告げた。
『作戦、識別ネームピンクの誘導任務、開始っ!』
直後、チームαが動き出した。
村の入り口へと向かって。
現在の課題 (クエスト)
・ラズベリーと接触しよう
・シエルを探そう
・勇者について調べよう
・10000ポイントを使ってタードを強化しよう
・エロいサキュバスを配下にしよう
・アドミラの胸を吸おう
・一年後の新人戦に備えよう
・冒険者を迎撃できるようになろう
・妖刀ムラサメの解呪をしよう




