5 この世界、あの世界
前回のあらすじ
おたからを てにいれた!
「...それであの店は24時間営業でな、名前は『コンビニ』、もうそれは素晴らしい店で、深夜に腹が減り、他の店が閉まっていて、そんな状況でも行くことができる、いわば人類の叡智!あれ程便利なものは無い!」
「へー、便利だね」
俺はあれから今話したコンビニから、学校、朝起きてから寝るまでのする事、金、交通、国の回り方まで、自分の知っている事を色々と話した。アーリエは聞き入っている様子で、話の合間に相槌を打ってくれる。
「ん...それじゃあ、今日はここまでにしようか」
「今何時だ?」
「...丁度1時だね」
そんな遅い時間まで話していたのか。話に熱中し過ぎて感覚が鈍っていた様だ。
「もうそんな時間か」
「ははは...ちょっと話しすぎちゃったね...」
アーリエは元気が無さそうに言った。眠たそうな様子だ。
「...あ」
「どうした?」
「ベッド...一つしかない...」
...まじですか。
「どうすんだよ、一緒に寝るか?いやそうしよう
「嫌だ、君には前科があるからね」
「今日は寒いだろう?体を暖めあって寝よ...」
「嫌だ」
即答...。
「じゃ、私は寝るから。君は...そこのソファーにでも寝てて」
そう言ってアーリエは足早に出て行った。
「別にいいし、バーカバーカ!」
実は俺と寝たかったけど恥ずかしくて言えなかったのだろう。そうに違いない。きっとそうだ。
「...」
アーリエが去って行った部屋に虚しさを感じ、俺はソファーに横になった。
「...はあ」
俺は目を閉じ、今までの事を考えていた。
アーリエの事、魔法、そしてこの世界の事。
(こんな世界があるなんて、元の世界で話したら信じてくれないだろうな...)
まあ、帰る気はさらさらないのだが。
ふと辺りを見渡してみた。
怪しげな壺、怪しげな液体、怪しげな鏡、まさに魔女の家、という感じだ。その中の一つ。存在感抜群な本があった。ラノベとかに出てくる魔導士が片手に持っているような、そんなものだ。
「なんだこれ?」
俺はソファーから立ち上がり、その本を手に取る。
「何々...『禁術目録』?」
禁術...良い響きだな...。何事も「禁」という言葉には、不思議な魅力がある。...「禁トイレ」とかは、魅力を感じないが。
「ふむふむ...」
「禁術」体に負担がかかり、死に至ったり、一生動けない体になったりする、恐ろしい魔法の事らしい。
「...え?」
禁術目録、第七項目異世界転移魔法『ゴー・トゥ・ネクスト』使用したら最悪場合死に至る、どんな聡明な魔導士でも、この使い手はいない。後遺症が残らないようにするには、膨大な魔力が必要になる。
しかし、異世界への干渉は、本来、神の加護を受けている人間に使用が不可能で、使用する場合、『人では無い者』にしか使えない。
「う、嘘だろ...?」
『人では無い者』?なんだよ...それ...。
「めっちゃかっこいいじゃん!」
アーリエの正体は謎に包まれています...