初めての大会
新しい道具が届いた。今まで使っていたものよりよく跳ねて、回転もかかる。道具だけで結構違うもんだな。大会も庄原市中学卓球大会、全日本ジュニア卓球選手権庄原市予選に申し込みをした。その内庄原市中学卓球大会は来週の土曜日だ。皆個人戦のシングルスに出場する。
「皆ー!試合の組み合わせが届いたよ!」
真壁先生が組み合わせの紙を体育館に届けてくれた。どれどれ、あった!俺の名前だ!
「う~ん、皆シード選手の側だね。初めてだし仕方ないか。」
「徹どういうこと?」
「えっとね、前に出た大会でいい成績を出した選手は次の大会でシード権がもらえるんだ。つまりシードの選手は強いってこと。」
「マジかー。」
「でも相手を見てみないと分からないよ。」
「そうだよな。よし、あと一週間頑張るぞ!」
一週間後・・・
俺達は真壁先生の車に乗って庄原市体育館にやって来た。体育館の入口には50人くらいの中学生が開場時間まで待機している。
「皆、ストレッチしとこうよ!」
「う、うん。」
「どうしたの皆?」
「ちょっと緊張してきて。」
「私も。」
「大丈夫だよ。今の皆は僕から見ても県大会クラスの強さはあるよ。だから緊張もほどほどにしてしっかり力を出しきらなきゃ!」
「そうだよな、後悔はしたくないし・・・。でもやっぱり緊張しちゃうな。」
「まあ、初めての大会だもんね、これから慣れていこうよ。」
「うん。」
体育館が開場し、待機していた全員が一斉に移動する。俺達も徹に付いて体育館に入り、用意されていた12台の卓球台の内一つを確保して練習を始める。いつもと違ってピン球を打つ音や掛け声が周囲から聞こえてきてなんだか独特な雰囲気だ。
『練習を止めて、本部前に集合してください。』
練習を止めて本部前に一列に並ぶ。開会式始まって、偉い人の挨拶と競技上の注意事項の説明を受けると、一回戦のコールがかかる。いきなり呼ばれたのは明と花だ。う~ん、どっちの応援に行こうかな。話をして、俺と徹が明を源が花の試合を観に行くことになった。明は台について対戦相手と練習を始める。練習のが終わり、ラケット交換、じゃんけんをしてサーブ、レシーブ、コートを決める。明はサーブを取ったようだ。試合が始まる。
パチパチパチパチ。
徹が拍手する。
「先一本~!」
徹が声をあげる。明は下回転サーブを出し、相手がツッツキしてきたのをドライブで三球目攻撃する。相手は動けずフォアを抜いた。
「よーーよーよー。」
パチパチパチ。
「徹なんかスゲーな。俺にも掛け声教えてくれよ。」
「そうだね、前の学校のだけど。点が決まったら、よーーよーよーって言うんだ。でもネットインとかエッジボールのときは言っちゃダメだよ。後は、ここが重要ってときは、ここ一本とか、先に一本欲しいときは、先一本とか言うといいかな。」
「なるほどね。やってみよー。」
また明が点を取った。
「「よーーよーよー。」」
なんか面白い。明はその後も難なく得点を重ね、一回戦を3-0で勝利した。試合を終えた明とハイタッチする。花の試合を見に行こうとしたが、丁度終わったらしい。結果は3-0で花の勝ち。あー俺も早く試合がしたくなってきた。
『・・・庄原北中学、山本くん、第5コートに入ってください。』
きっきたー!
「次は純だな頑張れよ!」
「うん、行ってくる。」
5コートに入るとすでに対戦相手が待っていた。荷物を置き、ラケットを取り出して台へと向かう。相手は口和西中学の田中くんと言うらしい。練習を始めると、田中くんの打ってくる球はそれほど威力がない。手を抜いているのかな?練習が終わりラケット交換をする。シェークの裏裏か。じゃんけん、ほい。俺はじゃんけんに負けてレシーブになった。試合が始まる。
「先一本~!」
明が応援してくれるようだ。田中くんのサーブから始まる。下回転のサーブだ。台から出る長さだったのでドライブをかける。田中くんはブロックをするけどオーバーした。よし、まず一本。
「よーーよーよー。」
なんか盛り上がるな。続いての田中くんのサーブは同じく長い下回転サーブだ。同じようにドライブすると今度はノータッチで抜けた。
「よーーよーよー。」
自分でも盛り上げてみる。なんかいい感じだ。サーブが俺になった。下回転を出してきたから下回転に強いのかな?よし、横上回転を出してみよう。横上回転サーブを出すと田中くんはツッツキをした。ピン球は台の横に飛んでいく。よし、サーブがわかってないようだ。その後も俺のサーブは効いて有利な試合展開で進む。結果3-0で初勝利をあげることができた。
「やったな純。」
「うん、めっちゃ嬉しい!」
「あ、呼ばれたみたいだ。行ってくるよ。」
「頑張れ、明。」
次はシード選手だ。どんなヤツかな?




