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卓球ノート  作者: 誠也
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転校生

「ふあ~あ。」


 不意に大きなあくびが出てしまった。


「純、眠そうだな。」

「だってよ明、二年生になったのに代わり映えしねえしよ。」


 俺、山本純は中学二年生だ。住んでいる所が所謂田舎で同じ学年に男子が俺の他に二人、女子が一人。まあ、昔から長い付き合いで皆仲は良いけど、さすがに人が少ない。それにやることもやり尽くして新しいことが無い。何か面白いことねえかな。

 朝のホームルームの時間となり担任の真壁先生が教室に入ってくる。


「皆おはよう、ホームルームを始める前に転校生来たから紹介するね。じゃあ、入ってきて。」


 転校生!先生の手招きで教室に入ってきたのは身長百五十五センチくらいと少し低めの男だった。


「じゃあ自己紹介して。」

「はい。僕の名前は川口徹です。よろしくお願いします。」

「よろしく」


 皆声を合わせてそう言う。


「じゃあ川口くんを皆で持ってこよう!皆隣の教室から机と椅子運ぶの手伝って貰える?」

「はーい!」


 机を運び入れ、転校生川口くんの席は俺の一つ後ろになった。ホームルームが終わり、早速俺達は川口くんの席に集まった。


「私、田中花。よろしくね徹くん。」


 花は唯一の女の子。小柄で活発な奴だ。


「俺は佐々木明、こいつは永田源、こいつは山本純。」

「なんか雑じゃね?」

「気にすんなって。」


 明は頭が良く、運動も得意の何でも屋。源は大人しくて優しい、皆の癒やし的存在だ。


「皆よろしくね。」

「ねえ徹くんはどこから来たの?」

「広島だよ。」

「えっ市内の方?」

「うん。」

「うわ、都会っ子だ。」

「そんなに都会でもないよ、普通、普通。」

「いやでもここに比べたらな、ここホント何も無いんだぜ。」


 四方山に囲まれ、大きなショッピングモールや娯楽施設もない。あると言えばちょっと大きめのデパートくらいなもんかな?


「そうかな、まだここのこと全然知らないけどいいとこだと思うけど。そうだ皆部活とか何やってるの?」

「部活?部活かぁ~人数いれば野球とかサッカーとか面白そうなんだけど、俺達四人しか居なかったからな。何にもできないんだよ。」

「それならさ・・・。」


 話の途中、授業の始まりということで先生がやって来た。


「また後でね。」


 徹何を言おうとしたんだろう?昼休憩まで待とうか。

 時間は進みお昼となる。皆の机を合わせ、配膳を済ませた。今日の給食は黒糖パンにナポリタン、それとほうれん草のソテーだ。


「そうだ徹、朝のなんだったんだ?」

「ああ、皆で部活したいなと思って。」

「部活って、朝も言ったけど人数がいないよ。」

「大丈夫。僕がやりたいのは卓球だから。」

「卓球?あの温泉とかでやるヤツ?」

「そうそう。僕今までずっと卓球をやって来たんだ。だからまたここで皆とできないかなと思って。」


 卓球。あまりぴんとこない。俺でもできるかな?


「うん、面白そう!やろうよ皆!」

「いいね、丁度退屈してたんだ。」

「じゃあ決まりだね。」

「でもさ、卓球の道具って学校にあったっけ?」

「えっ!無いの!?」

「取り敢えず先生に聞いてみようぜ。」


 俺達は給食を食べ終わると、職員室に向かった。


「失礼します。」


 職員室の中に入ると、真壁先生は驚いた顔をした。


「どうしたの皆して?」

「真壁先生、教えて欲しいんだけど、卓球台とかって学校にある?」

「卓球台?確か体育館の倉庫の奥にあったと思うよ。」

「ホント?」

「ホント、ホント。皆卓球したいの?」

「うん、部活をしたいんだ。」

「部活!いいよ、申請してあげる。面白そうだし私顧問してもいいかな?」

「ホント、真壁先生!ありがとー!」

「じゃあ放課後体育館行ってみようぜ。」


 何だか面白くなってきた。早く放課後にならないかな。ワクワクし過ぎて午後からの授業は全く頭に入らなかった。


「よっしゃ放課後だ。皆行こうぜー!」


 授業が終わり、放課後皆職員室へと急いだ。そして職員室で鍵を受けとると真壁先生を誘って体育館に行った。体育館倉庫、暗い中を良く覗いてみると奥の方にそれらしいものが二つ見える。ボールかごや得点板等遮るものをどけて引っ張り出す。埃を被ったそれを広げてみるとあんまり使われてなかったのかなかなかキレイな感じだった。ネットとかラケットもあるかな?倉庫をごそごそと皆で探し回る。何だか宝探しみたいだ。何とか道具を一式探しだし、準備をする。やり方は全部徹が知ってたから、指示してもらう。


「うん、使えそうだ。皆早速やろうよ!」


 ラケットを手に取り、台につく。球を打ち合うと、カコンカコンという音が心地いい。初めてであまり上手くは無いけど楽しいな。


「徹、俺とやろうぜ!」

「うん、やろう、やろう。」


 台を挟んで徹と向き合う。俺が出したサーブを徹が打ち返すのだが、その動きが綺麗に思えた。そして気付いたらピン球がスゴい速さで俺の横をすり抜けていく。えっ!?


「す、スゲー!徹、今のどうやったんだよ!」

「私にも教えて徹くん!」

「そんなに凄いことしてないよ。今のは普通のフォアハンド。皆も練習したらこのくらい何でもなくなるよ。」


 そう笑って返す徹。卓球か、こんなに近くに面白いもんがあったとは。これから楽しくなりそうだ。

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