5
「あれ、斎藤先生、じゃないですかー?」
「……西原先生。お久しぶりです」
土曜日。 たまりにたまった家事をやっつけ、足りなくなった日用品や食品などを買いに出掛けたらすっかり昼も過ぎてしまった。 職が決まってはじめての休みだと思うと雑用ばかりの一日もやはりほっとする。
そんな瑛太に横から声がかかった。 瑛太が振り向くとそこには前の園の同僚、西原菜奈美が立っていた。
瑛太より少し年上だっただろうか。
あの頃、園に子供を預けているお母さんたちは皆、ビジネス仕様にきちんとした人ばかりだった。 保育士にしては菜奈美は少し派手に見えたがそういう環境でさほど違和感は感じなかった。
今日も休みなのだろう。 きれいに整えたメイクや洋服は華やかな顔立ちをさらに引き立てていた。
「え?この辺にお住まいなんですか?」
「いえ、ちょっと買い物に。ここからは少し離れたところに住んでいます」
「えー、そうなんですねー?お元気ですかー?」
「あ、はい。まあまあです」
それでは、また、と瑛太はそそくさとその場から離れる。
動悸がする。 吐き気がする。 目が回って立っていられなくなる。
会いたくなかった。 あの時の知り合いすべてに。 もう二度と顔も見たくなかった。 どうしてこんなに離れた土地を選んだのに見つかってしまうんだろう。
冷や汗が額を流れる。喉の奥がじわりと熱くなる。
「先生」
「……」
返事はできなかった。首がそちらを向くこともできない。 でもわかる。
一度聞いたら忘れられない、深い、甘い声。
「ひどい顔色だ。具合が悪いんですね」
廉の父親、稲葉裕之だった。 彼が軽く視線を動かしただけで、黒いワゴンが静かに近くの道路に寄せられる。
「うちはこの近くです。少し休んでいってください」
そばにいたのだろう、大中小の大がそっと瑛太の前にしゃがみ背中を向ける。
瑛太はフルフルと首を振ったが、苦笑いと共に担がれてしまった。
いつも大きな声で派手なアクションだったからがさつなばかりの男だと思っていた。 しかし背中に乗せるまでも歩き出してからもほとんど揺れを感じず目が回っている瑛太にはありがたかった。
しかし吐き気の方はいかんともしがたい。 背負われているので圧迫された腹部は切実に解放を訴えている。
「ご、めんなさ……気持ち、悪くて……吐きそ、だから下ろし……て」
それなのに困ったような声色で大男は言う。
「構いませんよ、汚していただいても。もう少し我慢していただいたら車にビニールもありますから」
いくら古着屋のスカジャンとはいえ汚せるわけがない。 瑛太は青い顔をさらに真っ青にしながらビニール袋まで持ちこたえた。
「……かっ、はあっ」
車の脇で用意してもらったビニール袋にしたたか吐いた。 その間に大男がペットボトルの水を用意してくれて、うがいをさせてくれた。
もう吐くものがないところまで吐くと、大男はそのビニールをその辺のコンビニで始末させてもらってくると車から離れていった。
横で見守っていた裕之がゆっくりと立たせて瑛太を車に乗せると、大男を待たずに発進させた。
「さっきの……大……おんぶしてくれた方は……?」
「柴崎、ですか。大丈夫、タクシーででも帰れます」
「悪いことをしました……」
「お気遣いなく。それより楽な体勢でいてください。なるべく揺れないように行かせますから」
本当に揺れの少ない車だ。 ワインがグラスに並々と注がれていてもこぼれたりしないのではないだろうか。
運転席に何気なく目をやると、運転手はあの大塚という秘書だった。 バックミラー越しに瑛太の視線に気づくと小さく微笑んだ。 いつかとは違う穏やかで柔らかい笑みだった。
窓に写る緩やか流れも不快を誘い目を伏せる。 目が回る。 気持ちが悪い。 どうしてこんなことになったんだっけ。
脂汗をかきながら瑛太はなにも考えまいとさらに固く目を閉じた。
吐くだけ吐いたからか、稲葉邸につく頃には気持ちの悪さも治まりつつあった。 そっと目を開けて窓から見えた光景に、瑛太は言葉を失う。
「城……」
「ああ、少しは眠れましたか先生。もう着きますよ」
「……」
飛び込んできたのはちょっとしたホームセンターの駐車場か、と言いたくなるような駐車スペース。 そしてその後ろに趣のある純和風の豪邸。 きっと中庭にはカッコンと鹿威しのある池があり、何十畳もある続きの和室があるだろう。
「ふわあ……」
「どうかしましたか?」
「いえ、立派なお宅、ですね」
「それはどうもありがとうございます。ここは会長と奥さん、それと住み込みの若いのが何人か住んでいます」
玄関近くまで車は寄せられ音もなく止まった。運転席から大塚が降りてきて、自動で開いたドアの前に立つ。
若頭の荷物でも持つのかと思いきや、瑛太に手を差し出した。
「さあ、掴まってください」
「あ、はい……」
おそるおそるつかんだ手は思いの外暖かく、瑛太はすがるようにしてよろよろと車を降りた。 大きな音ではないが後ろでスライドドアが閉まる音がして、振り返ると裕之が瑛太の買い物袋を下げている。
黄色のナイロンでできたエコバックから飛び出すネギと突っ張り棒。 それを持つ若頭(スリーピース着用)。
シュールすぎる。
とっさに瑛太は大塚の手から離れ「自分で持ちます」と、エコバックに手を伸ばした。 ところがふらつく足元に狙いは外れ、裕之の僅か左の方へ倒れ込みそうになった。
「おっ……と」
転ぶ、それでも自分の足で体を支えられない。 地面に手をついて難を逃れることもできそうにない。 瑛太は来る衝撃を覚悟して目を閉じた。
「……」
痛みは来ない。
強い力で胸から脇の下にグイと回された腕。 自分からはするはずのないぴりりとした香り。 ざらりとした布の感触に目を開ければ、瑛太は裕之の腕の中にいた。
「ゆっくり起こしますから」
「……」
裕之は瑛太を抱き抱えたままそっと体勢を立て直し、真っ直ぐ立てるように支えた。
「おい」
いつの間にか大中小の小……タジマといったか。 彼が近くにいて裕之の肩から瑛太のエコバッグを受けとる。
「ちょっとおとなしくしててくださいね……っと」
言ったが早いか裕之は瑛太の膝裏に手を差し込み横抱きに抱えあげた。
「え、ちょ」
「すぐそこの部屋に布団を用意させましたので、少し我慢していてくださいね」
「いえっ、歩けますっ」
「すぐですから」
焦りまくる瑛太に構うことなくずんずんと玄関に入っていく。 回りには『住み込みの若いの』かと思われる数人が頭を下げていた。
どうするの、これ。どういう状況?
若頭がどこの馬の骨ともわからない男を姫抱きして若い衆の前を闊歩するって。
ガチガチに固まった全身から少しだけ力を抜いてそろりと裕之をうかがう。 重たい男を抱えさせられてさぞやお腹立ちかと思ったが、裕之の顔は柔らかく微笑んでいるように見える。 廉を見つめていた時と一緒だ。
あまりじっと見ていたからそのぶしつけな視線に気づいたのか『ん?』とでも言いたげに首をかしげた。
瑛太はふるふると首を横に振りうつむいたが、恥ずかしさに死んでしまいそうだった。
(すごい、やさしい顔してた)
隙のないスーツ姿はただ者じゃない雰囲気が満ちているが、こうして至近距離で表情だけをうかがっていると、誰もが見とれるようないい男だ。 ちょっとお見かけしないような。
結構なお荷物のはずなのにその足取りはふらつくこともなく、支える腕はどこまでもたくましく、安心しきって体をあずけてしまう。
永遠かと思える数分で、瑛太はひとつの和室に運ばれた。 すでにそこには布団が敷かれていて、後ろからついてきていたタジマが上掛けをめくると裕之はそこへ瑛太を横たえた。
「落ち着くまでここで休んでいってください。予定がないのでしたら泊まってくださってもかまいません」
そしてその手で瑛太の額に触れると「熱はないようだ」と少し安心したような顔をした。
「隣に柴崎を置いておきますので欲しいものがあったら何でも言いつけてください」
「そんな、お忙しいのに……」
いつのまにか戻っていた柴崎が満面の笑みで瑛太の脇に座った。
「いいんす先生! 俺、ここにいる代わりに今日の食事当番免れたんで。むしろラッキーっす!」
すると裕之は苦い顔で柴崎を軽くはたいた。
「……おめえは一言多いんだよ」
「すんませんっ!」
それでも柴崎はなんだか嬉しそうだ……あれか、有名なお笑い芸人のツッコミに頭はたかれて『やったー!』とか言っちゃうあれな?
くす、と瑛太は笑ってしまった。 相手が誰でも柴崎の会話は漫談のようだ。 笑った瑛太を見て、裕之も表情を緩めた。
「笑えるなら、大丈夫だ。顔色も戻ってきましたよ」
そう言ってするりと瑛太の頬を撫でた。
「ゆっくり休んでください」
「……あ、りがとうございます」
裕之の出ていった部屋でしばらく瑛太は固まってしまった。頭が混乱して、なにが何やらわからない。
具合の悪くなった瑛太のところにさっと現れた裕之。 そしてあれよと言うまにここに連れてこられた。 菜奈美は見ていただろうか。
住んでいるところを知られたくなくて、とっさに近くじゃないと嘘をついてしまった。 しかし買い物袋からはネギがはみ出していた。 つたない嘘はきっとばれてしまっただろう。
「先生、なにか飲みますか?」
「あ、ええと。柴崎さん。さっきはどうもありがとうございました。変なもの始末させてしまって、ごめんなさい」
「いいんすよお。気にしないでください。先生が来てから廉さん、すごく楽しそうに幼稚園に行っているんで、みんな感謝してるんですよー」
「僕のせいじゃ……」
「いいえ。先生のおかげです。廉さん口数が少なくて、若……社長も心配してらしたんですけど、最近は『瑛太先生が、瑛太先生が』っていろんな話をしてくれて。それに、この間も友達との間を取り持ってくれたんでしょっ?廉さんずっとお弁当を食べた話やおりがみの話してくれて……せんせい?」
「……」
瑛太は両腕を目の上にクロスさせた。 みっともなく涙が溢れる。 嬉しい。 すごく嬉しい。
だけど本当の自分はそんなに慕われるような先生じゃない。
さっき会った菜奈美を思い出すと忘れていた、このまま忘れていたかった出来事が頭の片隅から湧き出してくる。
蓋をして重石をのせても、こぽりと音をたてて流れ出してくる、打ち捨てたはずの過去。 それがいつまでも瑛太を追いかけてくる。
いつか黒い塊になって飲み込まれてしまうのかもしれない。
「……隣の部屋にいますから。遠慮しないで何でも言ってくださいね」
「……あ、りがと」
情けなく泣いているうち、だんだんこわばった気持ちがほぐれてくるのを感じた。
ここはなんて、静かなところなんだろう。 さっき玄関で会った人がみんないるはずなのに。
障子の向こうは外なのか、風の音も車の音もしない。
そのうちからだの力も抜けてきた。 瑛太はすうっと眠りの淵に引きずられていった。
「……よく寝てますねぇ」
「しっかし、本当にきれいな顔してるな……」
「これは、廉さんも社長も気に入るわけですよ……」
枕元で人が話している。
意識が浮上する心地よさと、まだ眠っていたい甘えに蕩けるような一瞬のち、瑛太は急に今自分がどこにいるのかを思い出した。
「うわあっっ!」
上掛けを蹴り飛ばす勢いで上半身を起こす。 上から瑛太をのぞきこんでいた面々が驚き、揃って後ろに体をそらした。 頭がグラッとしたけれど構っていられない。
「ごめんなさい!僕、なに園児の家でのんきに寝こけてるんだっ!!」
「わ、先生?落ち着いて。そんなに急に起き上がったらまたぶっ倒れちゃいますよ」
「そうそう。慌てなくても大丈夫ですよ」
瑛太の両脇から柴崎と大中小の中が背中を支えてくれる。 頭側からもう一人、小……タジマが「お水飲みますか?」とコップを差し出してくれた。
瑛太は受け取ったコップから水を一口のみ、放心する。 いったいどのくらい自分はここで眠ってしまったんだろう。 障子から指す光は少し傾いたように見える。
「……今、何時ですか?」
おそるおそる聞くと柴田が答えた。
「五時です。あれから二時間ぐらいしかたっていませんよ」
二時間。 具合の悪さはすっかり抜け、どんより纏っていた倦怠感も消えている。 それしか眠っていないと思えないような爽快感だ。
……布団か。布団のせいなのか。
「調子良さそうなら晩ごはんいかがでしょうかって声かけてって言われたので、のぞきにきました。いかがですか?」
「いえ、いくらなんでも図々しい。おいとましますのでお気遣いなく」
「え?!だってもう廉さんに先生が来てるって言っちゃったんすよ。一緒にご飯食べましょうよー」
「……あー、えっと。じゃあ、ご挨拶だけ……」
まるではじめてのお使いに成功した三歳児のように満面の笑みを浮かべた柴崎がこちらです、と立ち上がった。
布団をたたもうと手をかけると、ここは私が、と中くらいの男が片付けてくれた。
ふすまを開けて踏み出した廊下は左右に長く延びていた。 中から見ても豪邸だ。 左にはさっき抱えられてくぐった玄関が見える。 右はしばらく続いて右に曲がっている。
「こちらです、どうぞ」
一番小さい男と柴崎が瑛太を先導する。 何人かの若い男とすれ違ったが皆、会釈をしていく。 小さい男は偉い人なのかもしれない。
通された居間には廉と六十台位の女性が一緒にいた。 ここは洋室になっており、コーナーには堂々としたソファセットがおいてある。 使い込んだ皮の艶がとても美しい。
「姐さん、お連れしました」
ね、姐さん。 これが噂の極道の妻かっ。
瑛太は内心動揺しまくっていたが、顔には出ない。 心の揺れを敏感に感じ取ってしまう子供相手の仕事はポーカーフェイスも身に付くのだ。 腸が煮えくり返ろうと、恋愛に府抜けていようと、表情だけはいつも平穏に見えるように心がけている。
「いきなりお邪魔した上にお布団までお借りして申し訳ありませんでした。ひまわり幼稚園年中組副担任の斎藤瑛太と申します。いつもお世話になっております」
「いいえ、ようこそいらっしゃいました。私は稲葉の家内で澄子です。おかげんはもういいの?」
「おかげさまで。ゆっくり休ませていただきましたのですっかり」
具合が悪いような話を、廉も聞いていたのだろうか。 すっかり、という言葉を聞くとパタパタと瑛太のそばまで走ってきた。
「せんせい、もうだいじょうぶですか?きもちわるくないですか?」
「廉くんにも心配かけちゃったね。もう大丈夫だよ」
眉をきゅっと寄せて痛そうな顔をする廉の視線に合わせて腰を下ろし、瑛太はその頭をくるりと撫でた。 途端に花が咲くように廉の笑顔が弾けて、祖母にのもと駆け戻っていった。
「一緒に晩ごはんをいかがかと思ってお声かけしたの。他にお約束がなかったら召し上がっていって?」
「それではあんまり図々しいです」
「いえね、こんなむさ苦しい男ばっかりの食卓でしょう?たまには若くて素敵な男性がいてくれないと食欲もわかなくて……」
「姐さん、あんまりです……」
「ああ、柴崎はまだ若かったわね?いくつだっけ?」
「二十三っす」
二十三? なんと瑛太よりも五つも年下だったとは。ひょろりと大きなスカジャンを見上げる。 そしてそのスカジャンを小さい男も見る。
「まあでも、斎藤先生の方がイケメンだし」
「田嶋さんまで……しかもイケメンとか……」
「……」
それにしてもこのリビングに続くダイニングはかなり広い。 何畳、といわれても見当がつかない。 ダイニングスペースには貴族か、と突っ込みたいほど大きなダイニングテーブルが鎮座している。
立っていないで座ってちょうだいと促され、瑛太は廉の近くに腰を下ろした。
「ここで、何人くらい生活されているんですか?」
広いダイニングテーブルを眺めて瑛太が問う。 柴崎が紅茶を運んできてくれた。芳醇な香りがふわりと漂う。
「私と主人。それと住み込みしてる子が六人。そこの柴田もここで寝起きしてるわ」
うんうん、と頷いて柴崎は笑う。 本当に忠犬のようだ。
「廉くんはここには?」
「裕之と廉は近くにマンションを買ってそっちに住んでるんだけど、寝に帰っているようなもんね。廉もここで晩ごはん食べてお風呂入ってから帰るんだもんね?」
こくこく、と廉が頷いている。
「そうでしたか」
澄子はしばらく瑛太の顔をみて話を聞いていたが急に肩を震わせて笑いだした。
「え?」
「姐さん?」
「……くくく……だっておかしいじゃないの。この先生、すっごく落ち着いてるんだもの。こんなところに急につれてこられてビックリしなかったの?」
「あ、ああー……」
「確かに。俺も最初はビビりました」
小さい男が言う。
驚かなかったと言えば嘘になる。 ここは、いわゆる暴力団組長の自宅なわけだ。 その辺を少し漁れば法に触れてしまうような銃器があるかもしれないし、今だって澄子に無礼をはたらかないかと子分たちが聞き耳をたてているかもしれない。
自分でも割合平常心でいられるのはなぜだろう、と考えるに。
「さっき、廉くんのお父さんに人生初のお姫様だっこをされてしまいました。今のところこれより衝撃的なことはないから、でしょうか?」
こてんと首をかしげて答える。
その答えを聞くと澄子はますます笑った。 小さい男と柴崎も、こちらから目をそらして堪えているようだ。 おかしいなら笑ってくれ。 隣では廉がなぜ笑っているのかわからないといった様子で三人を見上げている。
それに徐々に薄れつつあるが、菜奈美との再会も心を麻痺させる一因ではある。 それはここでは言わなくてもいいことだろう。
「賑やかですね?」
夜の匂いをまとった男の声がした。 裕之が廊下から入ってきた。
ネクタイは絞めていない。 ワイシャツのボタンも二つはずされ、色気に色がついてたらこちらまで流れてくるのが見えるかもしれない。
「稲葉さん。先ほどはありがとうございました」
「具合はどうですか? 先生」
「もうすっかり」
「それはよかった」
およそ、ヤクザらしくない穏やかな眼差しで瑛太を見つめる。 そんな視線を向けられれば落ち着いていられない。
「あ、あの、大塚さんは? ご一緒じゃないんですか」
「ああ。仕事を頼んでいるんです。彼はとても優秀ですから」
「そうでしたか」
少し、羨ましく感じてしまう。 彼らのような仕事をしたいともしようとも思わないが、これほどの男に優秀だと手放しで誉められるなんて。
「ああ、裕之。今、先生を晩ごはんにお誘いしていたところなの」
「是非、そうしていってください。廉も喜びます」
やって来た父親の腰にしがみつきながら視線は期待ではち切れそうに瑛太に向けられている。 そんな顔をされては断れない。
「……では、お言葉に甘えて……」
お読みいただきどうもありがとうございます。
明日も23時頃お邪魔します!
うえの