ケース4
今日は12月25日……そう、クリスマスだね。僕たちサンタクロースが活躍するのもこの一日、それも日が昇るまでのわずか数時間だけ。
そのほんの僅かな時間で世界中の子供達にプレゼントを、ひいては夢と希望を届けなくてはならないというんだから厄介なものだよ。
まあ、その対価として子供達のあどけない寝顔と満面の笑顔が見られるというのなら文句などこれっぽっちもないけどね。
おや、トナカイ。どうしたんだい? ……犯罪の匂い? そうだね、まあ確かにやっていることは不法侵入だから。けど、そこに言及するのは一種の禁忌だよ? いけないな。
そこじゃないって? なら一体何が問題だと言うんだい。訳の分からないことを言って、進む方角を間違えないでよ?
ん? もう着いたのかい。これはまた随分と豪邸だね。どんな子が暮らしているんだろう。
それじゃ、行ってくるね。隠形法? 必要ないよ。正面から堂々と入る。僕は思うんだよ、サンタの力は清らかな子供にのみ使用するべきだと。
鳥肌? シカのくせに何を言ってるんだ。とにかく、しばらく待っていなさい。すぐに片をつけてくるから。
生憎だけど、僕は13歳以上の男には一切容赦しないよ……!
まったく、現世の人間が20人そこら集まった所で夢の魔力を持つサンタに太刀打ち出来るはずもないのに。馬鹿な人達だ。
しかし、広い屋敷だなあ。子供部屋は一体何処にあるんだろう。……むやみに歩き回っていても埒が開かないかな。
仕方ない。アレを使うとしようか。
はああぁぁぁ…………! 秘術・サンタ眼!
『説明しよう! サンタ眼とは視界を一時的に全包囲に広げ更に透視と遠視の力を得ることが出来る、一部のサンタにしか使えないそれなりに高度な技なのである!』
トナカイ、説明ご苦労。さて、どうやら子供はここから二つ先の部屋にいるようだね。では早速行くとしようか……ん?
これは……隔壁が降りているね。厄介な防衛機構を備えているものだ。
まあ僕の手にかかれば一撃粉砕も可能だけど……残しておけば残党への時間稼ぎにもなるだろうし、そのままにしておこう。
じゃあ、続けていくよ……。秘術・サンタ次元跳躍!
『説明しよう! サンタ次元跳躍とは己の存在確率を1(その時間その場所に確実に存在する)から0.00……1(そのくらいの時間にその辺にもしかしたらいるんじゃね?)に変更・拡散し、更に別の地点にて集約することで一瞬にして長距離を何の制約もなく移動する高等サンタ術だ! ってか、それがあれば俺いらなくね?』
トナカイ、説明ご苦労。自身の存在意義については自身で答えを出すんだよ。
というわけで室内に入ったわけだけど……この年頃の子供の部屋にしては随分と殺風景だね。ゲームやプラモデルの一つもない。
……? この子、泣いてる。何があったんだろう。……少し夢に潜ってみよう。
…………。ふむ。両親が喧嘩して別居中。母とはもう一週間以上も会っていないらしい。
それで、母が誤って壊してしまった、父の大切にしていたグラスが欲しい、と。
……まったく、馬鹿な親ですね。物の価値だの何だのいう前に我が子のことを考えて行動しなさい。こんなに悲しんでいるというのに、気付きもしないなんて……
しかし、あまりにその想いが強すぎてこの子自身の欲求が見えないな……残念だけど、そのグラスを送るしかなさそうだ。
……だけど、せめてこの子の悲しみが少しでも癒えるように、サンタの力で今だけでも楽しい夢を見せてあげよう。
秘術……
サンタ生着替!
『説明しよう! サンタ生着替とはその膨大な魔力を編み上げてずきゅーんばきゅーんなとても口では言い表せないようなコアでアングラなコスチュームを精製し魔法少女アニメの変身シーン風のエフェクトと共に子供を着替えさせ、更にその体を自在に操るという超高難度のくせに何の役にも立たない術である、っていうか何してやがるテメェ!』
トナカイ、説明ご苦労。それはともかく、ああ、美しい! 美しいよ少年! その月光の下で白く輝く肢体に艶やかな黒髪! それにはやはり《削除されました》で《検閲》なその服装がよく似合う!
しかし、まだ足りない! そう、足りないもの、それは……秘術・サンタ創聖旋律!
『説明しよう! サンタ創聖旋律とは、あらかじめ設定されたいくつかの台詞を術を掛けられたものの声帯を通して再生するという詐欺とかにしか使い道のなさそうな発明者の意図が分からない術である! ってかお前もうその辺にしとけよ! これの何処が楽しい夢だ!』
トナカイ、説明ご苦労! 大丈夫、ついでに夢見の良くなるサンタ術も掛けて置いた! 見ろ、その表情を!
『そっちがついでかよ! ってうわ、確かになんか凄く幸せそう!! でもなんか麻薬系を彷彿とさせる不健康な幸せっぽいぞ!?』
さあ、僕の美を完成させてくれ! 動作・音声設定完了! そしていざ、再生ッッ!!
そう、そうだ! 自然な笑顔! くるりと軽やかなターン! 手を後ろで組んで、軽く前のめりになりながらっ!
――おはよ、お姉ちゃんっ♪
うああああああおおおぉぉぉぉはよおおぉぉぉぉ!!
いい! いいぞッ! こいつは思った以上にッ! ベリッシモ(非常に)良いッ!
さあ次、次だ! 眉を潜めて片頬を膨らませ! 上目遣いに軽く睨み付けながらッ!
――もう! そんなこと言うと怒るよ? まったく!
かあああああああわぁいいいいいいいいいいいぃぃぃぃ!!
パーフェクト! パーフェクトだ! こいつはいい! 一年間構想を練り続けた甲斐があったというものだよ!
これを保存するためにビデオなんて不粋な物は使わないよ! そう、この究極の美は僕の記憶の中で永遠に輝きを放つのさ!
そのためにも、さあ! もっと! もっと君の持つ美を僕に見せつけt
「侵入者め、そこを離れろ! 坊ちゃんに近寄るんじゃない!」
御呼びじゃねえんだよオオォォォこの薄汚いデカ人間がァァ!!
「ぐあああああ!」『隊長ー!』【くそっ! 撃て、撃て!】〔閃光弾持ってこい! 急げ!〕
銃器に頼るか雑魚共が! 手榴弾なぞ使ってんじゃあ、ねぇぇぇ!!
灼熱のバーンス○ライクゥ! 殺戮のイービルス○ィアァ!
『なっ、う、嘘だろ!?』【弾丸を避け……ぐわぁあっ!】〔馬鹿なっ!〕
死ぬか? 消えるか!? 土下座してでも生き延びるのかぁ!?
お前らに、僕と戦う資格は、ぬぇぇぇぇぇぇい!!
ぶるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
『……駄目だこいつ、早くなんとかしないと……!』
〈ケース4 男装僕っ子+オタク
+若本〉
違う部分に萌えが入りました。
でもヒロインがアナゴボイスって新しいよね?
……この馬鹿ッッ!
次の話でこの狂った流れを一気に切り替えます! 切り替えて見せます! さあどうぞっ!




