第六話
今回は卯月視点です。
-- side 卯月 --
その日、兄の誕生日プレゼントを買いにショッピングモールへ行こうとすると、当の本人がついてきた。いつもは一緒にお買い物、と心が弾むのだが、今日ばかりは遠慮して欲しかった…。そう思いつつ現地へ向かい、なんだかんだと理由をつけて別行動をしたまでは良かったのだが。
「お兄ちゃん、心配してるかな…?」
少し時間をかけ過ぎてしまったのだ。自分の知っている兄なら怒るよりも心配するだろう。怒られるよりも心配した、と心からホッとしたような顔を見せられる方が気持ち的にキツいということを兄は意識してやっているのだろうか?と考えていると、待ち合わせ場所のフードコートに着いた。兄にどう謝ろうか、と頭の中でシミュレーションしながら探すのだが。”いない…?”どこを探しても兄はいない。前に一度似たような事があったので、すれ違いを警戒して兄は待ち合わせ場所を動かないはずだ。ならばトイレにでも行っているのだろう。兄が戻ってくるまで手持ち無沙汰なため、周りをキョロキョロしていると。仲睦まじげなカップルや親子連れに混じって。「……っっ」その人はいた。