第十話
「そう言えば卯月ちゃん、もう昔みたいに”お姉ちゃん”って呼んでくれないの?」
と唐突に瑞穂が言い出し、瑞穂ちゃんは顔を真っ赤にしてあたふたし始めた。
それをみて瑞穂がにやにやしながらなにか言おうとしているので、助け舟を出そう
と思い、急いで口を開く。
「そう言えば悟くん、そこに広げてた問題集ってもしかして宿題?」
すると今度は悟くんが顔を真っ青にしてあたふたし始めた。
話題の選択を少々?間違えてしまったようである。
ついでに言うとこの兄妹、似た者同士でかわいい。
そんなことを考えていると瑞穂がこっちに目で”ナイスアシスト!”
とアイコンタクトしたあとで、獲物を見つけたかのような目で悟くんに迫っている。
「もしかして悟くん?まだ夏休みの宿題、終わってないのぉ~?」
「瑞姉はどうなのさ!瑞姉だって毎年してないじゃん!!」
「私はもうすぐ終わるもんね~。ね?楓?」
「ホントですか!?楓さん」
悟くんにこう聞かれ、地味に卯月ちゃんもとても驚いた顔をして目で問いかけて
来るので首を縦に振って肯定しておく。
「「!!!!????」」
二人共絶句していることから、おそらく私が無理やりやらせなければ瑞穂は今頃
宿題に追われてたんだろうな~、とか、無理やりやらせたのは間違いじゃなかった
んだな~とか思っていると中里兄妹は瑞穂の顔をペタペタ触りながら
「コレ偽物じゃないよね・・・?お兄ちゃん」
「でも瑞姉が勉強できるわけないし・・・」
と失礼ながらも事実を述べている。
しかしそんな失礼なことを言われても瑞穂はドヤ顔で
「もう昔の私ではないのだよ。ふっふっふ」
などとうそぶいている。