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制服な君モニタリング

作者: 七海万里

モニタリングと憧れの電車通学を組み合わせたくなって書いたメモ書きです。

AM 07:33

水曜日。

電車に乗る。優しく冷えた車内が心地よく、額に滲んだ汗がポタリと床に落ちていく。息を整えて顔を上げると見知らぬ制服。一体どこの学校だろうか。


木曜日。

またあの制服を見つける。学ランだから珍しくてつい見てしまう。長すぎず短すぎない癖っ毛の黒髪。


金曜日。

学ラン君はどうやら黒縁眼鏡をかけていたようだ。プラスチックフレームが覗く先は文字が羅列した小難しそうな本。


休み明けの月曜日。

今日はあの学ランが見当たらない。代わりに二駅隣のS高の制服が一人分増えている。紺のブレザーに赤いネクタイ。場所は学ラン君の定位置、一両目の右の窓際。


火曜日。

もう珍しくもなくなったS高の制服を探す。小難しい本はどうやら今話題の映画化されたミステリー小説。


一週間後。

背中にはラケット。少し色褪せたバッグだから使い込んでいるのかも。部活だろうか?


雨の日。

傘はありきたりなビニール袋。水気はしっかり切ってある。髪の毛先は少し濡れているけれど涼しげな様子だ。


一ヶ月後。

ミステリー小説が英単語帳に代わっている。そうか、もうすぐ考査の時期だ。ちなみに字には右上がりのクセがある。


衣替えの日。

白いカッターシャツから覗く腕は案外引き締まっている。隣の女の子がよろめいたのをすかさず支えるしなやかな腕。


蝉の声がうるさい日。

少し日焼けしたみたい。いつの間にか背中のラケットはなくなっている。おばあさんの落し物を拾って顔を上げた一瞬、こっちを見たような気がして鼓動がうるさい。


山が赤く染まった日。

もう小説は読んでいない。ここのところは毎日お勉強ばかり。妙に様になるんだよな。


コートが手放せない日。

マフラーもマスクも完全装備で寒がりなのだろうか?風邪を引きませんように。


雪が降った日。

あの制服が見えない。やっぱり風邪を引いちゃったんだろうか。


雪解けの日。

あれからずっとあの制服を見つけられない。いつもの定位置からすっかり消えてしまった。


AM 07:46

スーツを着た日。

桜の花びらが電車に迷い込んできた。目で追いかけるとあの制服の定位置。

もちろん制服君はいないーー


いるのは癖っ毛の小説好きな優しいあの子だ。

見ているだけ。

それだけで恋をする。

一目惚れに近いのかもしれない。

それでも気になってしまうんだ。


制服のあの子じゃなく

スーツのあの人でもなくなっても

モニタリングし続けてくれますか?ーー


という展開に本当はしたかった……

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