第29話:懐かしい狩猟
「いつもとは違う2人組でなにかやってみるっていうのはどう…?」
ゼノは居間に皆を集めてこんな提案を挙げた。
「どういうこった?なんか変わったことでもあったか?」
フレードは意外といった感じでゼノを見つめる。
「うん。ユミラさんと話してみてすごい新鮮だったから、この仲間の間でもあまり密接な関わりがない2人で組んでみたら仲良くなれるかなって…」
「いいじゃん!あたし、そういうの好きだよ!!」
「私も賛成です!仲良くなるに越したことはないですからね!」
ロミとルナクの元気っ娘2人はすぐに賛成した。そのほかのメンバーもゼノの意見に賛成し、話はまとまった。
「みんなありがと、じゃあ、私の方で決めたから発表する」
ゼノが決めたコンビは、ジャストロとフレード、ルナクとエレ、ロミとシルとなった。
「ゼノ、お前はどうするんだ?」
「私はユミラさんとお話ししたからそれでいい。それに、家の家事とかやりたいし。私がまだ打ち解けてなかった時にみんなに嫌な思いさせた分の恩返しに」
「それでいいのか…?」
「すぐ兄さんは心配する…大丈夫」
兄の心配性な部分に内心笑いながら、ゼノは周りの意見を求めた。女の子コンビ2つは良かったが、フレードから意見が来た。
「おいおい!俺とジャストロは昔はずっとコンビだったぜ!なんでまた…」
「昔、なんでしょ。だったら久しぶりに組んだらどうかと思って。お互い強くなってるから腕の見せ合いができるんじゃない?」
それにフレードはルナクと全裸で鉢合わせたりしてて女の子と組ませられない…と、心の中で付け加える。
「ふーん…まあいいけどよ。それも悪くねぇな!」
それぞれの役割が決まったところで、ジャストロとフレードはすぐに狩猟するドラゴンを決める作業に入った。
「なぁ、俺さ、ソルレックス狩ってみてぇんだ!」
「ソルレックスってあの塩平原にいるドラゴンか。なんでそいつなんだ?」
「今まで狩ったことねぇし、塩平原に一度いってみてぇんだ!いつも迷いの森とかその辺ばっかだろ?」
「言われてみればそうだな。折角ゼノが時間くれたからそうするか」
すぐに獲物は決まり、2人は支度をしてあっという間に村を飛び出した。確かにこうやって2人で組むのは久しぶりだったため、ゼノには感謝だった。
男同士ということもあってふざけた話ばかりしていたところ、あっという間に塩平原へ着いてしまった。
「うおぉすげぇ!!本当に一面塩だな!俺がこの前STCで行った凍土みてぇだ」
「これはすごいな…来て良かった」
そこは、木や草も全くない、ただ白い地面がずっと続いていた。その光景は土足で踏み入るのが躊躇されるほど精錬されているようにも感じ、2人はしばらく呆然と塩平原を眺めていた…が、我に返り、とりあえず近くの草陰からソルレックスが来るのを待った。
「もし来たらあの上走らなきゃいけねぇのか…」
「フレードがソルレックスだって決めたから仕方ないだろ。それに、微かだけど動物の足跡があったから、待ってれば来るかもしれないな」
とにかく今は辛抱するべきだ…そう自分に言い聞かせて待った。
程なく、なんとワイラカイが塩を求めてやってきた。この動物は獣に該当し、食べるものによって体色を変える不思議な獣である。ちなみに、食べ物が消化し終わると普通の体色である茶色に戻ってしまう。フサフサの体毛と鼻先に生えるツノが特徴。今の体色は茶色で、塩を一心不乱に舐めている…
「おい、まさかワイラカイもくるとはなぁ!初めて見たぜ。あいつが塩舐めるってことは塩の色に変わるのかよ」
「俺も初めて見た。しばらく待ってみるしかないな」
塩を舐めるワイラカイを観察していたところ、お腹周りが徐々に白っぽく変わってきた。2人はそんな様子に驚嘆しつつ、さらに観察を続けた。みるみるうちにワイラカイの体色は変わっていき、ついに全体が真っ白に包まれた。
「すげぇよ!マジだったんだ!!」
「なんで体色が変わるのか気になるな」
ワイラカイは疲れたのか、塩平原の真ん中まで進むと、その場で座って昼寝を始めた。これは、塩平原と自分を擬態することで他の動物に気付かれずにするためである。
2人はワイラカイに気を取られていたが、本望の相手が既に見えるところまで近づいていたことに気がついていなかった。
「フレード、ヤツが来たぞ」
「うおぉマジじゃんかよ!」
そう、ついに岩塩龍ソルレックスが姿を現した。のっしのっしと歩きながら塩平原の上まで来ると、塩をガリガリと砕いて食べ始めた。
「おっし、一丁片付けるか!」
そういってフレードがいきなり飛び出して一撃打ち込んだが、全く歯が立たない…ついでにソルレックスを怒らせてしまい大失敗に終わった。
「なにやってるんだよ…」
逃げ惑うフレードに呆れながら、ジャストロも加勢した。そのおかげで戦況は傾き、更に硬い敵のため、以前シルが教えてくれた一部に集中砲火攻撃をしたため、ソルレックスは少しずつ不利になっていった。
「おし、いいぜこりゃ!」
「一気に押し切るか」
そこから2人は昔のコンビ感覚を思い出し、あっという間に狩ってしまった。
「っしゃあ!やったぜ」
「やったな」
辺りを見回すと、眠ってたはずのワイラカイはこの騒ぎで起きて逃げてしまったらしく消えていた。
「こいつ運ぶっつっても、確か食えねぇんだろ?」
「でも、このままにしておくのはソルレックスに失礼だ。切り分けて持って帰ろう」
とりあえず持ち帰り、肉以外を売り払って家路についた。既に日が暮れかけていたため、早速料理作りに取り掛かった。
「なにを作ろうか…」
「兄さんなにそれ?」
今日の料理当番はジャストロとゼノ、ゼノは兄が持ってきた謎の物体に興味津々である。
「これはソルレックスっていうドラゴンの肉だ。かなりしょっぱいらしいから使い道に困ってる」
蔵書館の書物には、ソルレックスの肉は食べるのには難しいと記述があった。
「ふーん、じゃあ、塩みたいに細かくして調味料っぽくすれば?」
せっかくの妹の案、ジャストロはその通り、サラダやいろいろなものにソルレックスの肉を細かく刻んで入れることにした。火を通さないといけないため、とりあえず茹でることにした。これは、焼くと余計に塩分が強くなるためである。
「よし、切って料理にまぶすか」
「ん、わかった」
2人で手分けしながら全ての料理を完成させた。
夕食では、みんな驚いていた。
「マジかよ!ソルレックスの肉ってこんな使い方で食えるんだな。ゼノ流石だぜ」
「よしてよ、恥ずかしい…」
「確かにすごい…私も今度ソルレックス狩りたい…」
「シルが行くなら私もでーす!」
「ソルレックス…噂には聞いてたけど、味も面白いね!」
「これは興味深いな…ジャストロ、明日私とロミが料理当番だ。肉を分けてくれないか?」
「わかった。まだ塊が冷蔵庫にあるから使ってくれ」
まだ誰も食べたことのないものだったため、食卓は大いに盛り上がり、会話が途切れなかった。
久しぶりにこんなに賑やかに食事ができ、皆幸せな気持ちになった。
こんにちは。閃光 眩です。今回は久しぶりのジャストロとフレードのコンビでの狩猟です!これを待ってた人もいるのではないでしょうか…2人の掛け合い等、楽しく書かせていただきました!