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ロールプレイングハント  作者: 閃光 眩
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第13話:1人の「人間」

あの村人死亡事件から、既に50日ほど経とうとしていた。結局あの殺人者は誰なのか特定できず、村の中は少し緊迫感の漂う雰囲気となってしまった。しかし、時間が経つにつれてその緊迫感も薄れ始めていた。

ジャストロ達はそんな中、もう1つの疑問が紐解けずに悩んでいた。それはもちろん、ロミとエレ…特にロミについてである。この村を知っていて、かつ短剣を使う狩人といえば、今の所ロミしか思いつかなかった。もちろん、フレード、ルナク、シルも同様である。しかし、それを考えずに済むようになる日が明日に迫っていた。

そう、ロミとエレが自分たちの家へと引っ越してくると言ったのが、あの日から50日後と言った。そして、その50日後が明日なのである。

誰も皆落ち着かない様子であった。

「とりあえず…狩り…行こ…?」

シルはこの重苦しい雰囲気に耐えきれなくなったのか、皆にそう問いかけた。

「そうだな」

「ん、そうすっか」

「りょーかいですっ」

3人も同じ気持ちであったのか、すぐに決まった。

4人が向かった場所は、迷いの森であった。しかし、今回はシルが珍しく狩場を決めたので、いつもはあまり行かない場所になった。

さあ、狩りを始めよう…と思っていたが、ふと、なにかの群れの足音がしたために4人は草むらに身を潜めた。足音はだんだん大きくなり、そして相手のシルエットがどんどん濃くなる…そして、それは動物ではないことがわかった。それは、大勢の狩人であった。どうやら、自分たちのように集団で狩りをしているようだが、明らかに人数が違いすぎる。そんな狩人の集団が去るのを4人は待っていたが、4人の草むらの手前でその集団は止まった。

「まさか…気づかれたとかですか…!?」

ルナクが小声でそう呟いた。

「しっ…バレちゃう…」

シルはすぐにルナクの口を塞いだ。ルナクもさすがに騒ぎはせず、その状態で無言になり、草むらから様子を伺っていた。

そして、次の瞬間…その場にいた大勢の狩人が、一瞬にして消え去った

「!?」

4人はまるでSTCにいるかの感覚に囚われた。人が消えてしまうといえば、STCで現実世界に戻るために回線を切断した時などである。しかし、ここは現実なのはわかっている。しかも、STCならポリゴン型になって分解されるが、いまの狩人は、そんなものはなく、一瞬でいなくなった。

そして、今いるのはなんと1人だけである。その狩人は、フードを被っていた。それを見たとき、4人は息を飲んだ。

フードといえば、あの村を騒がせた狩人の印象しかなかったからだ。それにびっくりしたのか、ルナクがよろめき、枝を踏んでしまった。


パキッ


静寂に場違いな甲高い音が鳴り響き、そのフードの狩人は、この異常な音に気付き、向かってきた。

さぁどうする…逃げるか、それとも殺されるか……逆に相手を殺してしまうという考えもあったが、それをしてしまえば、あの殺人狩人と一緒になってしまう。そんな風に4人が慌てふためく中、フードの狩人が静かに口を開いた。

「そこにいる4人、出てきても大丈夫だよ。僕は怪しい者じゃないよ。今の出来事を見て、それを信じろっていうほうが無理だと思うけど」

なぜ4人だとわかった!?そう、その狩人は、まだ自分たちを見ることすらできない位置にいる。

多分、この狩人に逆らったら確実に死ぬ…4人は本能的にそう思った。そのため、潔くフード狩人の前へと姿を現した。それと同時に、フード狩人はフードをとった。普通の黒髪の青年であった。そして、目から耳にかけて謎の機械のような物をしていた。多分、あれが我々の人数を特定できた秘密なのであろう…と、4人は思った。

「まあまあ、そんな怖い顔をしないで。君たちが怪しむのもわかるよ。あの、大勢の人が消えるところを見ていたんじゃないかな?」

謎の狩人は少し困った顔をしながらそう言った。4人は口を開くことなく首を縦に振った。

「あれはホログラムっていうものさ。光の力を色々利用して作られた偽物の人達だよ。だから、光を消すのと同じで一瞬であれだけの人を消せたのさ」

言ってることがよくわからず、4人は頭にハテナマークを浮かべていた。そんな4人の反応はわかっていたのか、謎の狩人は続けて口を開いた。

「とりあえず、僕についてきてくれるかな?君たちにとって重要なことをいくつか話すから」

4人はすでに警戒心もなく、謎の狩人の不思議さに惹かれていたため、ついていくことにした。

着いたのは、小さめの家であった。普通の狩人が住むような家であったため、4人は少しだけ安心した。

とりあえず、4人分の席があったため、謎の狩人はそこに4人を座らせてくれた。自身はもう一個あった予備の椅子に座った。

「そうだ。自己紹介を忘れていたね。僕はイトマ。よろしく」

イトマと名乗った狩人は、軽く頭を下げた。

4人もそれぞれ名前だけ名乗り、頭を下げた。

「じゃあ、聞きたいことを聞いてくれて構わないよ」

イトマは一息つくと、本題へ入っていった。

「その目と耳に繋がってるやつなんですか!!」

まずはルナクが、身を乗り出してそう言った。

「あぁ、これか。これは眼鏡っていうものだよ」

イトマは答えた。

「メガネ…?なんですかそれ?」

ルナクは全くわからないといった感じで即聞き返した。

「これは、視力を矯正するものだね。君たちは視力なんて落ちないけど、僕はこれがないと周りがぼやけて見えちゃうんだよ。特に遠くが見えないね。それと、僕のものは色々機能がついててね。さっき君たちが4人だってわかったのは、サーモグラフィー機能によるものだよ。」

イトマは眼鏡を外してみせた。簡単に外れるらしい。見たところによると、耳と鼻で抑えているようだ。

「サーモグラフィー…?」

ジャストロが初めての言葉に、思わず聞き返した。

「そうだよ。温度によって色が変わる機能があるんだ。高いほど赤色に、低いほど青色になるのさ。君たちがいたところは、赤い人型が4つあったってわけさ」

イトマはまるで手品のような事を当たり前のように話してくれる…が、聞いたジャストロにとっては半信半疑である。もちろん、他の4人もである。

「私、かけてみたいです!」ルナクはそう言い、イトマから勝手に眼鏡を奪い、かけてみた。

「ひゃぁっ!?なっ、なんですかこれ!?」

ルナクはかけた途端に慌てふためいた。

「だっ、だめだよかけちゃ!早く外して!」

イトマはあせってそう声をかけた。

ルナクは慌てて眼鏡を外した。イトマはそれを貰うと、またかけなおした。

「ふわあ〜なんかクラクラします…こんなものかけてるんですか…!?」

ルナクはかなり驚いた様子であった。他の3人は、ルナクに何か仕掛けたのではとイトマを睨んだ。

「まぁまぁ、落ち着いて。これは視力がいい人がかけると、視界が歪むんだよ。だから、君たちみたいな視力のかなりいい人はかけるものじゃないのさ」

イトマは汗をかきながらそう答えた。

「イトマさんはなんでそんなに視力が悪いんですか?」

ジャストロがすかさずそういった。狩人で視力の悪い人は見たことがないというのと、メガネなんてかけている人を見たことないというのが疑問であった。

「実はなんだけど、僕は狩人じゃないんだ。あの空に浮かぶ青い星から来たんだ」

「えっ…!?」

4人はいきなりのイトマのカミングアウトに慌てた。あの青い星から来たにしては、我々狩人と全く同じ格好をしている。しかし、先ほどのように大勢の人を消したり、眼鏡という未知のものをしているところを考えれば、別の星の生物だと考えてもおかしくない。

「それって…」

「地球だよなぁ…?」

ジャストロとフレードは呟いた。

「えっ!2人とも知ってるんですか!?」

「なんで…?私たち…青い星としか知らない…

ルナクとシルがそれに驚き、即座に反応した。それを聞いたイトマは、勘がいいというかジャストロとフレードに質問をした。

「もしかして、禁書を読んだのかい?」

その問いに対し、2人は首を縦に振った。

「まあ、しょうがないよ。読むなって言われちゃうと読みたくなるもんさ。にしても、君たち2人は度胸があるね」

イトマはそういい微笑んだ。やはり、禁書を読む狩人などほとんどいないのだろう。

「もちろん、ルナクさんとシルさんも勇敢な狩人だよ」

イトマは付け加えた。

「そうそう、話を続けよう。そういうわけで、僕は地球人ってわけさ。地球では、僕たちは人間と呼ばれているよ。君たちが狩人って呼ばれるのと一緒だね」

「ニンゲン…」

4人は同時につぶやいてみた。なんとも不思議な響きであった。

「あ、でも、僕は人間と狩人のハーフかな」

イトマはいった。

「どういうこと…?」

シルが問いかける。それに応じ、イトマはさらに話を続けた。

「僕たち人間は、生きて100年ほどなんだ。これでも長いんだよ。昔はもう少し短かった。だから、もっと長く生きられる君たち狩人について調べて、そのとき仲間だった狩人の細胞を移植させてもらったのさ」

「100年…短い…!」

シルはその短さに驚いた。シルたちだと、100年といえばまだ人生の半分も済んでいない。

「ところでよぉ、なんで地球じゃなくてこのライアスに来たんだ?寿命が延びるからか?」

フレードは気がついたかのようにそう言った。たしかに、普通だったらこの星に来るのは何か理由があるはずだと考えた。まず、その理由について聞くのを忘れていた。

「ん、そうだね。地球にいるのが嫌になったからだよ。この話をすると長いけど、聞くかい?」

イトマは4人に問いかけた。4人は興味とともに少し怖かったが、頷いた。イトマは4人を見渡すと、静かに口を開いた。

「まず、僕は地球で一番頭が良かったんだ。だから、いろいろと仕事もこなしてお金もたくさん入ってきた。もちろん、僕も人から頼りにされるのは楽しかったし、やりがいも感じてたよ」

「でも、それに比例して僕の成功とか知名度を妬む人たちも出てきたんだよ。僕の失敗じゃないのにそれをうまく僕の失敗とかにしたり、わざとクレームをつけてきたりとね」

その話を聞き、4人はクロサのことを思い出した。クロサを陥れた3人も、クロサがクレリスボーンの武器を手に入れたことを嫉ましく思ってクロサを罠にはめたのである。

「それで、僕は精神的に持たないと思って、密かに移住しようと思って、この土地を調べていたってわけさ。もちろん、誰にもばれないようにロックをかけてね」

ここまでするとは、よほど追い詰められていたのであろう。しかし、イトマは普通の顔をして話を続けた。

「それで、僕は地球を旅立つまでに膨大な自分の個人情報を削除して、地球にある僕のデータを全て消したのさ。あれは人生で一番大変だったよ」

イトマは笑いながらそう言った。それがどれほど大変なことかジャストロたちはわからなかったが、地球という星で一番頭のいいイトマが大変だったというのだから、かなりすごいことなのだろうと思った。

「それで、僕は1人ひっそりとこの星まで来たわけさ。そこで、はじめて狩人に会ったよ。まさか、僕たちと全く同じ形の生き物がいるなんてびっくりさ!」

イトマは言った。

「相手の狩人は驚きませんでしたかー?」

ルナクが不思議そうに問う。

しかし、イトマは笑って答えた。

「いやいや、相手は僕が狩人だと思ってるからね。普通に話しかけてくれたよ。ちょうどその時は眼鏡をしていなかったし。そのおかげで、その狩人とは仲良くなったよ。名前をガルといったね。男の狩人で、かなりがっしりしていたよ」

「それで、僕は狩人について色々な村を回って調べ始めてね。もちろん、怪しまれることはなかったよ。それで、僕は狩人が長生きすることを知ったんだ。それでさっきの細胞移植の話に繋がるんだよ。仲間っていうのは、そのガルを含めた狩人たちだね」

「そのガルさんは反対しなかったの…?」

シルもルナク同様疑問をもち、イトマに問いかけた。イトマはその問いを待っていたかのように、そのまま話を続けた。

「うん。僕のことを信じてくれたからね。全く否定しなかったよ。それに、ガルは仲間たちにはうまく別の事情っぽく説明してくれたし、本当に彼はいい人だったよ…」

イトマはガルを思い出しているのか、少し伏せ目がちになった。

「僕からはこんなところかな。何かまだまだ質問があれば受け付けるよ」

そんな中、今度はジャストロが口を開いた。

「ライアスと地球の違いは何がありますか?」

その問いに、イトマは珍しくうーんと唸った。

「いい質問だけど、僕から説明するとなると、またまた長い話になっちゃうんだ…」

「そうですか…」

ジャストロは少し残念といった様子で引き下がった。

しかし、その後イトマはものすごいことを口にした。

「そうだ、話すより体験してみようよ。地球に行ってみないかい?」

「「「「えっ!?」」」」

唐突な意見に、4人は固まってしまった。そんな事をしていいのか。それに、イトマにとって地球はもう戻りたくない星のはず…

「僕はサポートとして着いていくから大丈夫だよ。それに、僕の個人情報はみんな消えてるからね。詳しいことは宇宙船の中で話すよ」

イトマは笑いながら席を立ち、地球に行く支度を始めた。4人はしばらくボーッとして、何もできずにいた。そんなところに自分たちが行っていいものなのか。そして、地球でうまく振る舞えるのか。イトマのサポートがあるとはいえ、中々の冒険である。

「よし、準備できたよ!行こう。君たちは何も持たなくて大丈夫だよ」

4人でボーッとしてる間に、イトマは支度を済ませてしまった。4人は玄関に向かうイトマについていき、これから起こることに期待と不安を抱いていた。

一体地球とはライアスとどの程度違うのか。そして、人間はどのように暮らしているのか。

それは、その地に降り立ってみないと分からない。


これから起こる出来事は、ジャストロたちにとって刺激のあるものとなるであろう…


閃光 眩です!今回は比較的早い投稿となりました!そして、またまた2話構成となりました。すこし内容量が多くなるため、しばらくはこの2話構成となると思うので、楽しみにしていてください!次はいよいよ、ジャストロたちにとっては未知の冒険となります。お楽しみに!

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