第8話:エンジョイライフ・エンジョイハント
「「海だあぁぁぁぁぁっ!!!」」
白い砂浜、青い海、透き通る空…そう、ジャストロ達はなぜか海に来ていた。当然、はしゃいでいるのはフレードとルナク。
なぜ海に来ようかと思ったか、それは昨日のことである…
「海に行かないかい?」
村役場にて、ジーク幻将軍にそんなことをいきなり言われた。
「海…ですか…?」
ジャストロは、ジーク幻将軍の意図が読めずに聞き返した。
「うん。狩りの気休めにどうかなって思ってね。ジャストロ君達に僕たちの仕事も手伝ってもらったし、少しは労ってあげないと。フレード君、ルナクちゃん、シルちゃんも一緒に誘ってみて」
どうやら、そういうことらしい。
「分かりました。3人に伝えておきます!」
ジャストロは海に行ったことがなかったので、内心喜びながら村役場を出て家へ帰った。
家に帰って、3人にその話をすると、3人とも異口同音に答えた。
「いいじゃねぇか!最高だぜっ!」
「うみうみ〜っ!楽しみですっ!」
「いいと思う…!」
ということで、海行きはあっさり決まった。
そんなわけで、今日は狩りはおやすみして、海で遊ぶことにした。はしゃぐフレードとルナクを、ジャストロは遠くから腕を組み見つめ、シルはその隣で砂浜に体育座りをして見ていた。
しばらくすると、シルがジャストロの水着を引っ張った。
「…?どうした…?」
シルは、自分の隣をぽんぽんと叩いた。どうやら、座って欲しいらしい。
それを理解し、ジャストロはシルの隣に座った。砂浜の温かさを感じ、海の良いところを一つ見つけた。
しばらくすると、後ろから足音が聞こえてきた。ジーク幻将軍が来たらしい。そう思って後ろを振り向くと、なんと、キュリア麗剣士も来ていた。もちろん水着である。思わず目がくらむような水着姿に、ジャストロはしばらく見入ってしまった。
キュリア麗剣士の水着ばかりを見ている、そんなジャストロの姿にシルは不満を抱いたのか、シルはジャストロのおでこにデコピンを食らわせた。
「いっっ…!」
いきなりの不意打ちに驚き、シルの方をみたが、シルはふくれっ面のままそっぽを向いてしまった。
そんな沈黙を、ジーク幻将軍が破った。
「ほら二人とも、せっかくの海なんだから、海の中に入ってみたらどうだい?」
ジャストロもシルもそっぽを向いたままだったが、やがて2人でなんとなく海へと向かった。
恐る恐る足をつけてみたが、海の水はとても気持ちよく、とても清々しい気分になった。しばらく全員海水と戯れていたところ、ジーク幻将軍がなにやら砂浜に置いているのが見えた。どうやら、大玉のスイカらしい。なにをするのか気になり遠くから見ていたが、やがてジーク幻将軍が呼ぶため、全員でスイカの前へと集まった。
「よし、これからスイカ割りをしよう!」
「「「スイカ割り…?」」」
初めて聞いた言葉だった。キュリア麗剣士は知っているらしく、いつも通り微笑んでいた。
「スイカ割りってなんですか?」
と、ルナク。
「スイカっていやぁ、割るもんじゃなくて切るもんだと思ってたけどなぁ」
と、フレード。
ジャストロは顎に手をやり、なにをするのか考え、シルは小首を傾げていた。
「スイカ割りっていうのは、この布で目を隠して、その場で体を何回転もさせて、その状態でこの棒を持ってスイカを割るんだよ」
ジーク幻将軍はいつも通り丁寧で簡潔な説明をしてくれた。
「はーい!!!やってみたいです!」
真っ先に手を挙げたのはルナクだった。
「よし、じゃあやってみようか」
そう言ってジーク幻将軍は、ルナクに目隠しをして、棒をもたせた。
「それじゃあ、その場で回ってくれるかな」
「よぉ〜し!!」
ルナクは自信満々に回転し始めた。しかし、何回か回転したところでフラフラになってしまった。
「じゃあ、スイカを割ってみようか!おっと、言い忘れてたけど、周りの人は指示を出してもオーケーだよ。右とか前とかね」
そしてついに、初のスイカ割り大会が始まった。
「右だ右だぁ!」
「もう少し左だ」
「そのまま進んで…」
3人が口々にルナクを誘導する。しかし、当の本人は回りすぎてフラフラなため、思うように動けない。が、確実にスイカの前まで進んでいた。
「うぅ〜っ…これちゃんと進めてますか〜っ?」
ルナクは半信半疑だった。
「おぅ!進めてるぜ!」
「あと少しだ。頑張れ」
「ルナク…ふぁいとっ」
その半信半疑を確信に変えるため、3人は口々に励ましの言葉をかける。その甲斐もあってか、ルナクはその後は3人の言うことにしっかり従い、ついにスイカの目の前までたどり着いた。
「「「いけー!!!」」」
3人が声をそろえて叫ぶ…ルナクが棒を力一杯振り下ろす!そして棒は見事にスイカの…端をかすった。どうやら、まっすぐ振り下ろしたつもりが、目隠しのせいでずれたらしい。
「くぅ〜っ、残念!」
「惜しかったな」
「ルナク…どんまい」
そんやなルナクを、もちろん責めることもなく、3人は労いの言葉をかけた。
「あ〜惜しかったです!もっと集中しないとダメでしたね」
ルナクはやりきったという笑顔で、3人のもとに駆け寄ってきた。
そんなみんなの様子を、ジーク幻将軍とキュリア麗剣士は笑顔で見ていた。
「よっしゃ!次は俺だぜ!!」
次に名乗りを上げたのはフレードだった。
先ほどと同じようにスタンバイしたが、ルナクのイタズラにより、見事に海に誘導され、そのままこけて海にダイブした。
「騙しやがったなぁ〜!」
「ひえぇ〜っ!」
そのまま2人の追いかけっこが始まってしまった。
「さて、次はどっちがやろうか?」
ジーク幻将軍が聞いてきた。シルはジャストロを見つめていたが、ジャストロはシルに譲った。
いつもは冷静なシルだが、さすがに目が回るとなると足元がおぼつかないらしく、フラフラしながら移動していた。
「右だ右。そのまま前だ」
ルナクとフレードは追いかけっこをしてるため、誘導員はジャストロ一人だった。
シルはフラフラしながらも、ジャストロの言葉に素直に反応し、あっという間にスイカの前までたどり着いた。
「そこだ!」
その声とともに、シルは勢いよく棒を振り下ろした。「ガッ」と良い音がし、スイカに切れ目が入った。
さすがのこれには、追いかけっこをしていた2人も気づき、近づいてきて歓声を上げた。
そして最後…ジャストロに全てはかかった。
しっかりと支度をし、棒を構えた。やはり、フラフラしている。
「頑張りましょ〜っ!」
「お前にかかってんだ!いくぜ!」
「ジャストロ…あとは頼んだよ…」
3人が口々に想いを託し、運命の最終決戦が始まった。
3人ともスイカ割りになれたのか、正確なチームワークでジャストロをスイカの前まで導いた。位置も完璧だった。
「「「いけぇ〜っ!!!」」」
3人の声とともに、ジャストロは綺麗なフォームで棒を振り下ろした。ガスッ」っと割れる音がし、真っ赤な果肉が二つ、顔を見せた。
「いぇ〜いっ!やりましたね〜!!」
「っしゃあ!流石だぜジャストロ!!」
「やった…!すごい…!」
今日一番の盛り上がりだった。
「4人のチームワーク、とても見事だったよ」
「そうね。この前アンガロスを狩っただけあるわね。おめでとう」
ジーク幻将軍とキュリア麗剣士も笑顔でそういい、拍手で喜んだ。
その後、6人で美味しくスイカを味わった。動物だろうが植物だろうが命の重さは同じ…しっかりと平らげた。
一息ついてさあ着替えて帰ろうと思った矢先、地響きとともに海が盛り上がった。
「おいおいなんだなんだ!?」
「ひゃ〜!天変地異の前触れですか!?」
やっぱり騒ぐのはフレードとルナクだった。
やがて海から顔を出したのは、大きなイカだった。しかも、見上げるほどの。
この緊急事態に、ジーク幻将軍とキュリア麗剣士には手間をかけさせないために4人はすぐに武器を取りに行き、イカに向かって行った。
「それはハオウイカだ!焦らずに相手の動きを見ればかわせるから気をつけるんだよ!!」
と、4人の背中にジーク幻将軍が叫ぶ。
その忠告をしっかり聞き、4人はそれぞれ、ハオウイカへと向かっていった。確かに、ちゃんと動きを見れば交わせる相手だった。ジャストロは触手を剣で弾きながら、は確実にハオウイカの胴へと向かっていた…が。
「うわぁ〜っ!マジかよ!!」
声のする方を見ると、フレードが…触手に絡まれていた。こういうのは女の子が絡まれて…というのがお約束だが、とんだサービスシーンになってしまった。ジャストロはそんなフレードのもとに向かい、一太刀で触手を断ち切った。
「うー…サンキューなぁ」
気持ち悪い触手から解放され、フレードは安堵していた。一方のルナクとシルも苦戦を強いられていて、4人とも一時、ジーク幻将軍とキュリア麗剣士の元へと退却した。
「みんな、大事なことを言い忘れたよ。あのハオウイカは今怒っているんだ。最初は気がつかなかったけど、みんなが戦ってるのをみてわかったんだ。ハオウイカは空腹時に起こる習性があるんだけど、外見だけ見て判断は難しくてね」
どうやらそういうことらしい。さらに続けてジーク幻将軍は言った。
「ここは僕とキュリアに任せてくれないかな?怒り時のハオウイカはかなり危険なんだ。さすがの君たちでも危なかったね。危ない想いをさせてすまなかったよ」
ジーク幻将軍は謝ると、キュリア麗剣士と共に、怒るハオウイカへと向かっていった。4人はジーク幻将軍とキュリア麗剣士の連携狩猟を見るのは初めてだったため、瞬き厳禁というほどに見ていた。
やはり、2人の強さはケタ違いであった。ジーク幻将軍の大剣による豪快かつ正確な剣さばき、キュリア麗剣士のレイピアによる正確かつ流れるような剣さばき。まるで踊りでも見ているかのように、2人の動きには無駄が全くなかった。さらに、触手を切り落とす際に、ジーク幻将軍の大剣3連撃、キュリア麗剣士のレイピア5連撃を見ることができた。
触手を斬られてハオウイカが怯んだところを見逃さず、2人はハオウイカの頭の左ビレを連携斬撃で斬り落とした。
さすがに威厳でもあるヒレを斬り落とされたからか、ハオウイカは慌てて沖へと逃げていった。
一仕事終えて帰ってきた2人に、見ていた4人は思わず拍手をした。
そんな緊急事態をなんとか無事回避し、四人は着替えてまた浜辺に集まった。
ジャストロが海を見ていると、ふいに沖の方が盛り上がった。そして、見えたのは二本の牙だった。他のみんなも沖の方へと目を向けていた。やがて顔を表したのは、なんとも大きな生物だった。牙は下顎から生えていた。その口の中には、先ほどのハオウイカが吸い込まれて行くのが確認できた。
あまりの大きさに、4人は呆然としていた。しかし、ジーク幻将軍とキュリア麗剣士は知っているらしかったが、驚き顔だった。
「おっ、あれは鯨牙龍ザロノアガスだね。僕が目撃した中で一番大きなドラゴンだよ」
「私もそうね。あんなに大きなドラゴンはザロノアガスしか見たことないわ」
そして、ご丁寧に解説も加えてくれた。
「ザロノアガスが顔を出したってことは、周りにたくさんの生物がいるってことだね。多分、驚いて何匹か水面に顔を出すと思うよ」
そういった矢先、新たに二匹の生物が顔を出した。一匹は真っ赤な体色をしており細い一本角が特徴的な生物だった。もう一匹は、太い腕が特徴の生物だった。
「あれは、シュエロプスとシャルモンテね」
今度はキュリア麗剣士が答えた。
まさか、陸だけではなく海にこんなにも多くの生物がいるとは、4人は考えもしなかった。
「君たちにとって、海は馴染みがないと思うけど、こんなにもたくさんの生物がいるんだよ」
「海で狩りをする狩人もいるのよ。ジークの知り合いにもそういう村長がいるわ。今度はその人たちに会いに行きたいわね」
2人の言葉にしんみりしたところで、とりあえず村に帰ることにした。
夕食は、斬り落としたハオウイカのヒレと触手を使った豪華な料理になるだろう。
海を深く知ったことで、ジャストロたちの狩りに対する視野は、さらに広がった。これからもさらに広がっていくだろう。
お久しぶりです、眩です。二ヶ月も更新できずにすみません。楽しみにしてくださってる方々に申し訳ないことをしてしまいました。
今回は、狩りではなく遊びをメインに話を進めてみました。また、強そうな生物が最後に登場しますので、お楽しみにです!
話変わって私事ですが、ブックマークが二件もいただけました!自分の成長を感じられて、とても嬉しかったです。これからもまだまだ続きますので、どうかご贔屓のほど、よろしくお願いします!
では、次回のお話でまた会いましょう。