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プロローグ

魔王城、王の間


勇者は危機に瀕していた


所々に重傷を負い、すでに立つことさえままならない状態だ。だが勇者は倒れるわけにはいかない。彼の腕には故郷の、いや国、人類の存続がかかっている。既に仲間は倒れ孤立無援、そんな中でも彼は諦めていなかった。どんな状況になったとしても握りしめて離さなかった愛剣を杖に立ち上がる。そして構えた。


「俺は負けない!魔王……貴様を倒すまでは倒れない!この、聖剣エクスカリバーにかけて!!。」


勇者は自らを奮い立たる様に叫んだ。いや、吠えたといっていい。今の彼にはそれほどの迫力があった。彼の身体から力が溢れ、体表からは魔力が噴き出す。


だが、それを笑うものがあった……魔王だ。流れる様なつややかな黒髪を床に滑らし、魔眼と恐れられる切れ長の鋭い目で勇者を見下ろす。


「ふはははは!人間ごときが何を言うと思ったら…。そんなボロ雑巾の様な様で妾と闘おうというのか……。笑止……その心、捻り潰してやろう!…いけ!」

「シャーーー!」

「グオオオオ!」

「くっ!」


勇者は身体の隅々から力を掻き集め、地面を蹴った。そして魔王の傍に控えていた魔物に斬りかかる。国最強と呼ばれた彼の剣技は、いまだ疲れと痛みを物ともせず、冴え渡っていた。一瞬にして魔物を切り裂いてゆく。残る障害は魔王のみ。

憎き魔族の王であるあいつを倒すことができれば、魔王軍は空中分解。すなわち人類の勝利なのだ。彼はありったけの魔力を聖剣に乗せ、振りかぶる。対する魔王は魔法障壁を展開、勇者の攻撃を受け止めようと魔術を練り上げる。

空中で勇者の聖剣エクスカリバーと魔王の魔力がぶつかり合い、鬩ぎあった。その衝撃は石造りで頑強な魔王城を揺するほどのものとなる。まさに最終決戦、勇者最後の闘いが始まった。


「うぉぉぉおおおお!!!!」

「ぐ…。な、なんだと…!何故これほどの力が出せる?!貴様は既に虫の息のはずだ…!」

「言っただろう!俺は負けるわけにはいかないんだ…!仲間の無念…散って逝った奴らの悲願…みんなの願いをこの剣に込めた!この思いが貴様に止められるかァァああああ!!!!」


勇者が鬼の形相で聖剣を押し込む。次第に魔法障壁が歪みが生じ、亀裂が現れた。


「ぐぁぁぁぉぉぉ…」


パリンッ!


遂に魔法障壁が弾け飛ぶ。聖剣の剣圧に耐え切ることができなかったのだ。勇者の前に立ちはだかる壁は消え去ったのであった。

返しの剣で魔王を斬りつける。破魔の効果を剣身に付加された聖剣で傷つけられた魔王の身体からは、魔力が噴き出した。大気中へと噴き出した魔力は強制的に分解され、魔王の魔力は減り続ける。もう先は永くない。ものの数分で死ぬだろう。勇者は使命を果たしたのだ。


「貴様ぁぁああ!くそぉぉぉ、妾わ死にとうない!!ああああああああああああああああああ!!!!」

「これまで人間に不幸を振りまいてきた報いを受けよ!お前は此処で終わりだ!!」




十分後。この場に立っていたのは勇者、ただ一人であった。


しばらくのち、使命を果たした彼は魔王城を発った。国では彼を親が、恋人が……国民全員が待っている。魔王討伐の命を果たしたことを早く知らせねばならない。彼は足早に歩き出す、目の前に広がる輝く未来へと向かって…。

空は彼の心中を映した様に、蒼く、どこまでも広がっていた…







カァーーーーット!


その掛け声と共に、魔王と魔物の身体が揺れながら立ち上がる。死体であるはずの肉体が蘇るなど、あってはならない事だ。禁術、呪術、魔族ですら忌み嫌う魔術が思い浮かぶ。


まぁ……死んでないけどね?


魔物「いゃぁ、お疲れ様!魔王様の白熱の演技……俺、痺れちゃいました!」

魔王「いえいえ……それほどでもないですよ。頑張りましたけどね!この撮影はリテイクできませんからね……勇者さんは本気ですし。」


ん?突然話の雰囲気変わって驚いた?


説明しましょう。私の名前はミリエリア・ランクストン。魔国在住の人間です。職業は魔王。職務内容は特撮『勇者・クライストの冒険』の魔王役&魔国の国政を任させていただいております。あ!『勇者・クライストの冒険』は日曜日の朝9時から放送しています。小さなお子さんがいらっしゃる御家庭の皆さんはお見知り置き下さい。いや〜、この番組の視聴率悪いと給料引かれちゃうんですよ…。魔国民の皆さん……よろしくお願いしますね?

あと、何故人間の私が魔王になってしまっているかというと、簡単に言えば魔族の皆さんに押し付けられてしまったからです。魔族の皆さんは基本的に頭が馬鹿なんですよ。でも見ていられないと思って手伝った私も馬鹿だったのです。周りを見れば仕事をしているのは私1人…。気づいた時には全てを丸投げされてしまいました。お蔭で毎日仕事に追われ押しつぶされて居る状況…。絶讃文官募集中、安月給ですが楽しいですよ、書類と戯れる日々は…。まぁ、五年も待っても誰も来てくれませんでしたがね、諦めてますよもうはい。

そんな私が今までやっていたのは皆さんの予想の通り、特撮物の撮影です。題名通り、勇者・クライストの魔王を倒すための旅先で起きる闘いを、撮ったものです。今日は記念すべき最終回&給料日。あー給料日、いままで長かったなー。早く行きつけの居酒屋で飲みまくりましょう。酔い潰れたって後の事は考えません。おっと、話がそれましたね。兎に角、最終回では勇者が魔王を討ち果たし、国へと帰るという話でしたね。魔王城編……長かったですよ〜。戦闘は数回回しか無いというのに、20話も使うとは…。睨み合いと回想ながすぎます、これだからドラゴンポール展開は……。

はい。とりあえず仕事が一つ終わったのです。これで安らかな日々が遅れます。今日までの重労働ならぬ殺人労働で私の心と身体は抜け殻状態、ボロ雑巾です。魔族の皆さんは異常なのです。睡眠を必要としない身体、チートですね、魔族全員。私は人間……睡眠はベットで8時間です。、睡眠中の労働、睡眠学習反対。脳みそオーバーヒートしますよ?いつか


「どうです今夜、一杯やりませんか?みんなで完成パーティーやりましょう!」

「うぉぉぉおおおお!!」


はぁ……若いっていいですね(精神的に)。私には騒ぐ元気なんて、もう残っていませんよ…。裏路地の寂れた居酒屋で十分です。あーあ…15歳の私が言う様な事じゃないですね。

魔国に来てから私は成長しました。まず、道を走り回る子達(大人)を見て母性本能が覚醒しました。他に、精神的に大人になりました。あとは……あと、は………。あ、あれ??これだけ???

大変な苦労して魔国にきて得た事がこんな事…?え???

ちょっと待った。これはいけないよ。母性本能…え?なにそれ。私はもっと青春を送るべきだ。いかついオヤジ達を働かせるために鞭を持ち歩く少女時代を送った私は普通じゃない。いや異常だよ。


私は固く決心した。


私のポリシーは思ったら即行動。上に辞表をださなければ。


転移魔法で魔王城へ移動。早速目的の人物?スライムへと突きつけた。


「すいません。私ことミリエリア・ランクストンは本日付で魔王を辞職させていただきます。いままでありがとうごさいました。」

「おいちょっとまて」


くっ!やはり側近は見逃してくれなかった。こうなれば武力行使するしかあるまい。これまでの恨み、此処で晴らす!!


「くらえぇぇぇぇええ!!流星の制裁スターランス世界反転レステア・グラビトン

次元散破リアルブレイク!…よし!行ける!!!異界回廊…展開!」


隕石の雨、ここら一帯の力場はメチャメチャ、次元は捻れ切れてクルクルパー。やり過ぎたでしょうか…?


「此処までやるか…!ふっ、逃げ切れるなんて思わないことだな。何年掛かったとしても俺はお前を探し出す。どんな手段を使ってでもな。」


う…やっぱりいつかは見つかるよね。スライム君の事だから数百年でも寝ずに探し回ってくれちゃうだろう。嬉しい様な……悲しい様な…。


いえ、憂いは残しません。今日で魔王・ミリエリアは終わりです。明日からはルテリア王国高等魔法学校一年生・ミリエリアちゃんよ!実は前から緻密な計画を練っていた私、準備は万端。さぁ、待っていてください!私の薔薇色に輝く青春!



瞬く間にミリエリアの身体は飛散していく。彼女は異世界を経由した長距離転移を使い、魔国を離れた。




ある日の魔国。天気は曇り。魔王城から、1人の少女が消えた。彼女の青春はこれから始まる。のか?


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