そのいつ
仙人。それは人里離れた山の奥に住み、霞を食べ、歳をとらずに永遠に生き続ける。そんな神秘的な存在である。
今ここの裏山に仙人の山田が霧の中、たたずんでいた。
山田は霞をすう。
「ふう。霞も食べ飽きたな」
風貌はと言うと、仙人といえば千人が思い浮かべる、白いローブを着ていて、白い髭を長めに伸ばした姿である。
「ファミレスいこ、ファミレス」
ただし、すんごい太っている。
仙人山田はその丸い体をゆさゆさと揺らし山を降りて行く。
「ああ、しんどっ。やっぱ霞だけじゃダメだな。味しないし」
仙人としてあるまじき事を言っている山田であった。ただし、仙人は自称である。
山を降りると山田はぜいぜい言いながらファミレスを目ざした。
山田は汗だくになりながらファミレスにつき、店内を見回した。客はまばらである。その中に知った顔があった。
「おう。山田さん。こっちこっち」
「あ、吉田さん」
仙人仲間の吉田であった。
山田は吉田の隣にどかりと座るとメニューをとり開いた。
「調子はどうだね」
山田より先輩の吉田は少々偉そうにいった。
「いやー。霞ばっかりで痩せちゃいましたよ」
でっぷりした腹をぽんぽん叩きながら言った。
「おっつー。よっしー。やーま」
いつの間にか二人のテーブルの近くにこれまた仙人仲間の鈴木がいた。鈴木は色黒でドレットヘヤーに仙人装束である。「いやー、昨日の上海Nightはサイコーだったze」
鈴木はところどころ黒人っぽさを出している。と思われる。少なくとも本人は。