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「便利なもんだな~。どうやったの? 教えてよ」
「だめよ、ルシファ様に教えたら、女の子のお部屋に忍びこんでおっぱいを触ろうとするでしょう?」
「しないよ、だからいいだろ?」
「だ~め、夢魔の秘伝なんだから」
「なんだよ、ケチ……」
ルシファ様は石でも蹴るようなポーズをした。
「可愛くすねてもだめよ?」
ルシファ様は顔を上げて舌を見せた。
「お見通しか。それにしても、サタンがいなくてよかったよ」
がらんと広い石がむき出しの部屋は、我が家の地下室を思い起こさせた。薄暗くしめった空気の向こうには、いま抜けたばかりの扉と同じものがあった。近付いてみると、炎は帯びていなかった。
「よっぽど恥ずかしいものを隠してるんだな。ねえ、ちょっと賭けない?」
「賭けなんてよくないわ」
「お金じゃないよ。そうだな、エッチなものが隠されていたらチューしてよ?」
「いいわ。じゃあ、ドレスを着たサタン様がいたら……どうしましょう」
「なんでもいいよ? 俺も男だ」
「男……。そうだわ! サタン様がドレスを着ていたら、ルシファ様もドレスを着て三人でワルツを踊りましょう」
「それは……厳しいな。でもいいよ、負けるわけないからね」
「どうかしら? わたしはドレスを着たサタン様とお友達になりたいわ」
「そういう友達なら安心だな。じゃあ、この扉も頼むよ」
扉を通り抜けて数歩歩くと、わたしが踏んだ床石の一つが沈んでつまずいた。ルシファ様がとっさに身体を支えてくれたので、転ばなくてすんだ。
「大丈夫?」
「ええ、ありがとう。でも、なにかいやな予感がするわ」
「罠かな?」
そこへ天井から重い石のこすれる音が聞こえてきた。石の天井の一部がずれて開き、中から巨大なテレビがゆっくりと下りてきた。
「テレビ?」
「なにが映るのかしら?」
床にたどり着いたテレビが映像を映しはじめた。その内容にルシファ様は目を塞いだ。
「俺の勝ちだな、やっぱりエッチなものがあっただろ?」
画面には愛の映画が映っていた。大きな声が石の部屋に反響して、さすがに少し恥ずかしくなった。
「負けたわ。手をよけて? 約束は守るわ」
ルシファ様は画面が見えないように移動して、目隠しをやめた。
暗がりに響く大きな声のせいか、わたしは思わず夢中になってしまった。
「や、やめてよ……舌をからめるなんて変態みたいなことしないでくれよ!」
ルシファ様はわたしを押し戻して少し後ずさりした。
「気持ち悪い?」
「……いや、やっぱり……その」
恥ずかしそうに目を伏せるルシファ様に意地悪をしたくなった。
「陛下ほどの人が女の子に恥をかかせるの?」
「……じゃあ、これで許してよ」
今度はルシファ様のほうから口付けてきて、夢中でお互いを探検し合った。
わたしが離れてしばらく経っても、ルシファ様は気の抜けた顔をしていた。
「大人は怖いでしょう? こんな汚いことをする女は嫌い?」
「……すごいよ。もうサッちゃんのキスなしでは生きられない」
ルシファ様は切なげな目をしてわたしを見上げた。
「ごめんなさい、調子に乗りすぎてしまったわ。これではママ達に怒られちゃうわね。サタン様にも」
「内緒にするよ。だから、二人でいる時は……ずっとキスしていようよ」
「だめよ、ルシファ様にはまだ早いわ」
「意地悪をしないでくれよ」
ルシファ様がわたしの手をひっぱり、もう一度口付けようとする。
これ以上はよくないと思い視線をずらすと、テレビの陰の暗がりに扉の端が見えた。
「ねえ、奥にまだ扉があるわ!」
「……ごまかすなよ」
「本当なのよ、見て。きっとあのテレビは、ルシファ様がくるのを予想しての罠なんだわ」
ルシファ様はひっぱっていた手に何度か口付けると、諦めたように振り返った。
「サタンめ、俺をからかうつもりだな? ところで、あの男女はなにをやってるんだ? あれも気持ちのいいことなのか?」
「まだ早いわ。見ちゃだめよ」
わたしはルシファ様を後ろから目隠しして扉へと向かう。




