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5-5

「便利なもんだな~。どうやったの? 教えてよ」

「だめよ、ルシファ様に教えたら、女の子のお部屋に忍びこんでおっぱいを触ろうとするでしょう?」

「しないよ、だからいいだろ?」

「だ~め、夢魔の秘伝なんだから」

「なんだよ、ケチ……」

 ルシファ様は石でも蹴るようなポーズをした。

「可愛くすねてもだめよ?」

 ルシファ様は顔を上げて舌を見せた。

「お見通しか。それにしても、サタンがいなくてよかったよ」

 がらんと広い石がむき出しの部屋は、我が家の地下室を思い起こさせた。薄暗くしめった空気の向こうには、いま抜けたばかりの扉と同じものがあった。近付いてみると、炎は帯びていなかった。

「よっぽど恥ずかしいものを隠してるんだな。ねえ、ちょっと賭けない?」

「賭けなんてよくないわ」

「お金じゃないよ。そうだな、エッチなものが隠されていたらチューしてよ?」

「いいわ。じゃあ、ドレスを着たサタン様がいたら……どうしましょう」

「なんでもいいよ? 俺も男だ」

「男……。そうだわ! サタン様がドレスを着ていたら、ルシファ様もドレスを着て三人でワルツを踊りましょう」

「それは……厳しいな。でもいいよ、負けるわけないからね」

「どうかしら? わたしはドレスを着たサタン様とお友達になりたいわ」

「そういう友達なら安心だな。じゃあ、この扉も頼むよ」

 扉を通り抜けて数歩歩くと、わたしが踏んだ床石の一つが沈んでつまずいた。ルシファ様がとっさに身体を支えてくれたので、転ばなくてすんだ。

「大丈夫?」

「ええ、ありがとう。でも、なにかいやな予感がするわ」

「罠かな?」

 そこへ天井から重い石のこすれる音が聞こえてきた。石の天井の一部がずれて開き、中から巨大なテレビがゆっくりと下りてきた。

「テレビ?」

「なにが映るのかしら?」

 床にたどり着いたテレビが映像を映しはじめた。その内容にルシファ様は目を塞いだ。

「俺の勝ちだな、やっぱりエッチなものがあっただろ?」

 画面には愛の映画が映っていた。大きな声が石の部屋に反響して、さすがに少し恥ずかしくなった。

「負けたわ。手をよけて? 約束は守るわ」

 ルシファ様は画面が見えないように移動して、目隠しをやめた。

 暗がりに響く大きな声のせいか、わたしは思わず夢中になってしまった。

「や、やめてよ……舌をからめるなんて変態みたいなことしないでくれよ!」

 ルシファ様はわたしを押し戻して少し後ずさりした。

「気持ち悪い?」

「……いや、やっぱり……その」

 恥ずかしそうに目を伏せるルシファ様に意地悪をしたくなった。

「陛下ほどの人が女の子に恥をかかせるの?」

「……じゃあ、これで許してよ」

 今度はルシファ様のほうから口付けてきて、夢中でお互いを探検し合った。

 わたしが離れてしばらく経っても、ルシファ様は気の抜けた顔をしていた。

「大人は怖いでしょう? こんな汚いことをする女は嫌い?」

「……すごいよ。もうサッちゃんのキスなしでは生きられない」

 ルシファ様は切なげな目をしてわたしを見上げた。

「ごめんなさい、調子に乗りすぎてしまったわ。これではママ達に怒られちゃうわね。サタン様にも」

「内緒にするよ。だから、二人でいる時は……ずっとキスしていようよ」

「だめよ、ルシファ様にはまだ早いわ」

「意地悪をしないでくれよ」

 ルシファ様がわたしの手をひっぱり、もう一度口付けようとする。

 これ以上はよくないと思い視線をずらすと、テレビの陰の暗がりに扉の端が見えた。

「ねえ、奥にまだ扉があるわ!」

「……ごまかすなよ」

「本当なのよ、見て。きっとあのテレビは、ルシファ様がくるのを予想しての罠なんだわ」

 ルシファ様はひっぱっていた手に何度か口付けると、諦めたように振り返った。

「サタンめ、俺をからかうつもりだな? ところで、あの男女はなにをやってるんだ? あれも気持ちのいいことなのか?」

「まだ早いわ。見ちゃだめよ」

 わたしはルシファ様を後ろから目隠しして扉へと向かう。

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