第166章 引き際
第166章 引き際
晩秋。
新形県南部に広がる越後盆地。南大沼の山々に抱かれた、六日町。
時価総額130兆円を突破し、国連での三重新法規制定、専属オーケストラ『六日町・フィルハーモニック』の創設、水没寸前のジャカルタ救済、メキシコ治安の再生、認知症根本治療薬『ラビット・リバイビン』の開発、植物ギガファクトリー『アグリ・ドーム』、超高温旅客機『スカイライナー・サーモ』、軌道宇宙都市『グランド・オービタル・ステーション』の運用、そして信州・長野電鉄の完全子会社化と信州大回廊の実現に至るまで、全地球と星海の命を足元から支え続ける「南越急行ホールディングス」。
その六日町本社タワー最上階、地上数百メートルの最高経営責任者(CEO)室。
茜色に染まる八海山と巻機山の山並みを窓越しに見つめながら、篠原賢人CEOは、デスクの上の温かいジャスミン茶(南越ビバレッジ特選一級品)を静かに手に取った。
ふと、篠原の脳裏に、これまでの長きにわたる怒濤の歳月が走馬灯のように駆け巡っていた。
——あれは、自分がまだ若く、金融機関の一社員として悶々とした日々を過ごしていた頃のことだ。
北陸新幹線の開業によって看板特急『なんたか』が廃止され、乗客を奪われ、巨額の内部留保をただ食いつぶして緩やかな死を待つしかなかった、雪国の小さな赤字ローカル私鉄「南越急行」。
誰もが匙を投げていたその小さな会社へ、篠原は自らの人生のすべてを懸けて飛び込んだ。
渡辺前社長から託された会社の命運を背負い、篠原は全財産と会社の未来を賭けて大胆な大勝負に出た。
半導体メモリの世界的需要を見抜き、どん底にあった「キオクシェア」の株式を果敢に購入。やがてその株価が爆発的に跳ね上がり、南越急行は一挙に「二兆円以上」という途方もない軍資金を手にすることに成功したのだ。
そこからの快進撃は、まさに奇蹟の連続であった。
地元の新形第一銀行を実質買収して強固な金融基盤を築き、経営危機に瀕していた周辺のローカル鉄道会社を次々と救済。疲弊していた地元のものづくり企業や農家を助け、自らも古賀とともに『南越重工業』『南越車輌』『南越建設』などを次々と立ち上げた。
サロナエアコン、武沢製薬、本産自動車、新行電気工業、南越アグリ、南越ガーディアン・セキュリティ……あらゆる産業の魂をひとつに束ね、いつしか南越急行は世界一の総合インフラ企業グループへと登りつめ、ついには宇宙空間に巨大ステーションを浮かべるまでに至った。
しかし——。
篠原は、自らの両の手のひらをじっと見つめた。
(……最近、自分の中で何かが変わり始めている)
寄る年波には勝てないのか。以前のように直感が電光石火で閃き、即座に決断を下すことが難しくなり、ひとつの考えに囚われて思考が堂々巡りしてしまうことが増えていた。かつてのような圧倒的にパワフルで恐れを知らない判断力が、少しずつ鈍ってきていることを、誰よりも篠原自身が自覚していた。
何より、地球の裏側や軌道ステーションへと年中無休で世界中を飛び回り続ける過酷な激務に、肉体が悲鳴を上げ始めていた。
(……このまま自分がトップの座にしがみついていては、会社の未来を狭めてしまうのではないか。新しい時代には、新しいリーダーが必要だ。……そろそろ、後任にバトンを渡すべき時が来たのだ)
篠原は静かに息を吐き、デスクのインターホンを押した。
「秘書室。古賀副社長と大石専務に、至急この部屋に来てもらいたい」
数分後、CEO室の重厚な扉が開き、南越重工業社長兼グループ副社長の古賀と、最高財務責任者(CFO)の大石専務が入ってきた。
「よう、篠原! 信州の永野線も軌道に乗って、大石のデパートも大繁盛だ! 次は一体どんな面白い手を打つんだ?」
作業着姿の古賀副社長が豪快に笑いながらソファーに腰掛けた。
ポーカーフェイスの大石専務も、静かにメガネのブリッジを押し上げ、タブレットを手に篠原の前に座った。
この三人は、単なる巨大企業の経営陣という枠を遥かに超えていた。
赤字ローカル線の再建から始まり、世界のハゲタカファンドとの血みどろの金融戦、灼熱の砂漠や宇宙での命懸けの現場、そして夜な夜な『佐渡武蔵』のカウンターで涙を流しながら美味い寿司を食い合ってきた。
血を分けた身内よりも深く、強く結ばれた、人生無二の大親友であった。
篠原は、二人に温かいジャスミン茶を注ぎ、穏やかな眼差しで二人を見つめた。
「古賀、大石。……改まって二人に相談があるんだ」
いつになく真面目で静謐な篠原の雰囲気に、古賀と大石は言葉を止め、姿勢を正した。
篠原はゆっくりと言葉を紡ぎ出した。
「……私は、南越急行ホールディングスの代表取締役社長兼CEOを退任し、第一線を退こうと思っている」
「…………………………え?」
古賀の口から、間抜けな声が漏れた。
大石も目を見開き、タブレットを持つ指先がピクリと止まった。
CEO室の中が、水を打ったような完全な沈黙に包まれた。
数秒の静寂の後、古賀が椅子から飛び上がり、真っ赤な顔で叫んだ。
「な……何を言い出すんだよ、篠原さんッ!! 篠原さんが辞めるなんて……そんなこと、考えられるわけねえだろ!!」
古賀の太い声が室内に響き渡る。
「俺たちがここまで来られたのは、全部篠原さんが先頭に立って、無茶苦茶な夢を現実に変えて見せてくれたからだ! 篠原さんのいねえ南越急行なんて、機関車のない貨車みたいなもんだぞ! 冗談ならやめてくれ!」
ポーカーフェイスの大石専務も、メガネの奥の瞳を大きく揺らし、珍しく感情を露わにして篠原に詰め寄った。
「……古賀副社長の仰る通りです、篠原CEO。我が南越急行グループが時価総額百三十兆円の世界一の企業になれたのは、すべて篠原さんの神懸かり的な大局観と、人間への誠実な采配があったからです。世界中のどの経営学者も、どのファンドマネージャーも、あなたほどのリーダーシップを持つ人間を見たことがありません。あなた以外に、この巨大なグループの活路を見出し、率いていける人間など……この地球上に一人も存在いたしません!」
二人の熱い言葉に、篠原の胸は締め付けられるように熱くなった。
しかし、篠原は首を静かに、そして横に振った。
「二人とも、ありがとう。本当に嬉しいよ。……だがね、古賀、大石。最近の私は、歳のせいか、ひとつの考えに囚われてしまって、昔のようなパワフルな決断ができなくなってきているんだ。世界中を飛び回る体力も、限界を感じている。何より……」
篠原は立ち上がり、窓の外の六日町の街並みを指差した。
「……創業のカリスマがいつまでもトップのポジションに居座り続ければ、組織は硬直化し、次の世代の新しい才能が育つ芽を摘んでしまう。会社は、人間ひとりの寿命よりも長く生き続けなければならない。これは渡辺前社長の遺言であり、我々の不滅の理念のはずだ。……だからこそ、会社が最も強く、最も輝いている今、私自身の手で『定年退職』のルールを決め、身を引くべきだと決意したんだ」
篠原の瞳には、一切の迷いも淀みもない、澄み渡る決意が宿っていた。
古賀と大石は、篠原のその揺るぎない眼差しを見て、これ以上どんな言葉を重ねても篠原の意思を覆すことができないことを悟った。
古賀は唇を噛み締め、大石はうつむいて拳を震わせた。
長い沈黙の末、古賀が絞り出すような声で言った。
「……篠原さんがそこまで覚悟を決めてるなら……俺たちに、止める資格はねえな……」
大石も、静かにメガネを外して目頭を押さえ、深く息を吐いた。
「……承知……いたしました。篠原CEOのご決断を、受け入れます」
篠原はほっとしたように微笑み、二人の肩に手を置いた。
「ありがとう。……そして、後任人事だが、取締役会にこう諮るつもりだ」
篠原は二人の目をまっすぐに見つめて告げた。
「新CEO・代表取締役社長には、現場の魂を知り尽くした古賀。そして、グループ副社長・最高財務責任者には、世界一の頭脳を持つ大石。……この二人体制で、南越急行の新しい時代を率いていってほしい」
「お、俺が……CEO……!?」古賀が息を呑んだ。
「私が……副社長……」大石も言葉を失った。
「二人なら、絶対に大丈夫だ。これまでの何倍も素晴らしい南越急行を創り出してくれると、私は確信しているよ」
篠原の温かい言葉に、二人はただ深く、深く頭を下げるしかなかった。
そして、晩秋のある日。
篠原賢人CEOの「南越急行ホールディングス最終出社日」が訪れた。
退任のニュースが全世界へ公式発表されると、日本国内のみならず、ワシントン、ロンドン、パリ、ジャカルタ、メキシコ・シティ、ナイロビ、さらには軌道宇宙ステーションに至るまで、全地球の政財界に巨大な激震が走った。
夕刻。六日町本社タワーのCEO室で最後の書類整理を終えた篠原が、部屋の明かりを消し、静かにドアを閉めた。
エレベーターが1階ロビーに到着すると、そこには信じられない光景が広がっていた。
本社ビルの巨大な吹き抜けエントランスホールが、グループ各社(南越重工業、南越車輌、南越建設、サロナエアコン、武沢製薬、新行電気工業、本産自動車、南越アグリ、南越ビバレッジ、南越ガーディアン・セキュリティ、南越フィナンシャル・グループ、佐渡武蔵、伊勢デパート、北宝映画、北塚音楽学校など)から駆けつけた、何千人もの社員たちで埋め尽くされていたのである!
「篠原社長ッ……!!」
「社長、本当にお辞めになってしまうのですか!?」
「寂しすぎます! いつでも戻ってきてください!!」
「社長のおかげで、私たちの会社も、家族の暮らしも救われました!」
割れんばかりの歓声と、涙ながらの感謝の叫びがホール中に響き渡った。
社員たちから次々と色とりどりの巨大な花束が手渡され、篠原の両腕は瞬く間に百合や薔薇、そして魚沼の黄金の稲穂で編まれた特製花束で溢れかえった。
篠原は涙を堪えながら、集まった社員たち一人ひとりに深く頭を下げ、握手を交わしていった。
「みんな、本当にありがとう……。みんながいてくれたから、南越急行は世界一の会社になれたんだ。胸を張って、これからも誇り高く前へ進んでほしい」
本社ビルの正面玄関を出ると、外にはさらに壮大な光景が広がっていた。
本社前を取り囲む広大な『六日町駅前大ロータリー』には、十万人を超える群衆が幾重にも押し寄せていたのである。
グループ社員やその家族はもちろんのこと、かつて篠原に救われた全国のローカル鉄道の職員、大沼の農家や商店街の人々、新形テレビ20をはじめとする世界各国の報道陣、さらには海外から駆けつけた要人や市民たちで、駅前広場は足の踏み場もないほどに埋め尽くされていた。
新形テレビ20のベテラン記者・高橋とカメラマン・井上も、生中継カメラを回しながら涙を拭っていた。
井上の担ぐ最新鋭8Kカメラの側面には、あのガムテープの切れ端が、夕暮れの街の灯りに照らされて誇らしく輝いている。
会社の入口前には、社員たちが手作りで用意した小さな木製の演台とマイクが設置されていた。
古賀新CEOと大石新副社長に促され、篠原はゆっくりとその演台へと上がった。
マイクの前に立つ篠原の姿が大型ビジョンに映し出されると、十万人の大観衆から地鳴りのような拍手と歓声が沸き起こり、やがて静まり返った。
篠原はマイクを両手で握り、集まったすべての人々を見渡して、静かに、しかし心に染み渡る温かい声でお別れの挨拶を始めた。
「……皆様、本日はこのように温かく見送っていただき、胸がいっぱいです。……振り返れば、私がこの南越急行に飛び込んだ日、会社には走らせる特急もなく、赤字のレールと、ただ未来を諦めかけていた暗闇しかありませんでした。しかし、渡辺前社長の熱い魂を受け継ぎ、古賀や大石という最高の仲間と出会い、そしてここにいる社員の皆様、市民の皆様の温かい支えがあったからこそ、我々はどんな困難も乗り越え、世界中へ、そして宇宙へ向かってレールを敷き続けることができました」
篠原の瞳から、大粒の涙が頬を伝ってこぼれ落ちた。
「会社を大きくしたのは、私個人の力ではありません。現場で汗を流し、線路を守り、人を愛し、未来を信じて走り続けてくれた、皆様一人ひとりの誠実な魂の結晶です。……南越急行は、これからも決して止まりません。新しく就任する古賀CEO、大石副社長のもとで、より強く、より温かく、全人類の希望を乗せてどこまでも走り続けていきます。……今日まで私を支えてくださったすべての皆様に、心からの感謝を申し上げます。本当に、本当にありがとうございました!」
篠原が深く、長く頭を下げると、六日町の駅前ロータリー全体から、割れんばかりの拍手喝采と「ありがとう!」「篠原社長、万歳!!」という大歓声が夜空へ向けて轟き渡った。
挨拶を終えた篠原は、花束を抱えて待機していた本産自動車製の黒塗りの専用リムジンへと静かに乗り込んだ。
車の窓を全開にし、集まった人々に最後まで笑顔で手を振り続ける篠原。
静かに滑り出した車は、万雷の拍手に見送られながら、長年愛し続けた南越急行株式会社の本社前をゆっくりと去っていったのであった。
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篠原の退任から、ちょうど一週間が経ったある夜。
六日町駅の南越急行本社近くにひっそりと佇む、南越急行グループ発祥の味——立ち食いそば処『そばろく・六日町総本店』。
いつもなら仕事帰りのサラリーマンや学生たちで賑わうカウンターの奥に、創業当時から残されている小さな隠れ個室があった。
暖簾をくぐり、その個室に集まっていたのは、私服姿の篠原賢人、古賀新CEO、そして大石新副社長の三人であった。
テーブルの上には、南越ビバレッジ特選一級品の温かいジャスミン茶の急須と、湯気を立てる名物の月見そば、そして『佐渡武蔵』から特別に届けられた極上握りの折箱が並んでいる。
社長と社員という肩書きを完全に脱ぎ捨てた三人は、人生無二の大親友として、肩を寄せ合って座っていた。
「ぷはぁ〜〜っ! やっぱり『そばろく』の出汁は五臓六腑に染み渡るぜ!」
古賀が丼を置いて豪快に息を吐いた。しかし、その顔にはどこか慣れない緊張と困惑の色が浮かんでいた。
古賀はポリポリと頭を掻きながら、篠原に向かって苦笑いを浮かべた。
「なあ、篠原さん……。一週間経ったけどよ、俺、毎朝起きて『代表取締役社長兼CEO 古賀』って名刺を見るたびに、心臓が止まりそうになるんだよ。いまだに自分がトップに立ったなんて信じられねえし、全く慣れねえんだ」
古賀の率直な弱音に、篠原は声を立てて笑った。
「ガハハ! 古賀らしくていいじゃないか。最初から偉そうにふんぞり返るCEOより、現場の感覚を忘れずに緊張している古賀の方が、社員もずっと安心するよ」
すると、隣で静かにそばを啜っていた大石新副社長も、メガネを外して小さくため息をついた。
「……実は、私もです。篠原さん」
ポーカーフェイスで知られる大石の口から、珍しく不安の言葉がこぼれ出た。
「私はこれまで、篠原CEOという絶対的な太陽の陰で、冷徹に数字を弾き、刀を振るう参謀役に徹してまいりました。しかし、いざ副社長というグループの表舞台の重責に立つと……『自分のような堅物で冷たい人間が、本当に何十万人もの社員から信頼されているのだろうか』と、夜中にふと不安になって目が冴えてしまうのです」
大石の告白に、篠原は温かい眼差しを向け、大石の手の上に自らの手を重ねた。
「大石。君が社員のためにどれほど心を砕き、どれほど温かい涙を流してきたか、グループの社員は全員知っているよ。君の緻密な財務と揺るぎない誠実さがあるからこそ、みんなが安心して思いっきり挑戦できるんだ。自信を持ちなさい」
篠原の優しい言葉に、大石は胸を熱くし、静かに深く頷いた。
「……ありがとうございます、篠原さん」
その後、三人は夜が更けるのも忘れて、これまで駆け抜けてきた懐かしい思い出話を語り合った。
「覚えてるか、古賀? 最初にお前と会った時、
ボロボロのディーゼルカーの前で『こんなオンボロ鉄道だが、地域の人が1人でも頼る人が入れば全力で取り組む!そんな俺を誘いに来たのか!?』って怒鳴り散らされたっけな」
「ガハハ! あったなそんなこと! あん時は篠原さんのこと、お金にしか興味のない鉄道マンだと思っていたからな。」
「大石との出会いも強烈だったよ。キオクシェアの株を買うって言った時、当時新人だった大石は『狂気の沙汰です。確率論的に破綻いたします』って、氷のような顔で何十枚もの警告リポートを新人ながら突きつけてきたんだから」
「……ふふ、あの時は大変失礼いたしました。しかし、あの篠原さんの狂気的な決断こそが、今日の百三十兆円の奇蹟の始まりでした」
アラル海の大復活、ベネズエラでの現物通貨改革、国連総会での大演説、カーネギーホールでの三人だけの貸切演奏会、メキシコでの麻薬カルテル制圧、そして宇宙ステーションでの星海大森林公園の散歩……。
語り合っても語り合っても、尽きることのない冒険と栄光の日々。
三人は笑い、時に目を潤ませながら、心ゆくまで語り明かした。
やがて、窓の外の時計が深夜零時を回った頃。
古賀副社長改め古賀新CEOが、パッと顔を上げて提案した。
「そうだ、篠原さん、大石! もうすぐ今年も終わりだろ? ちょうど一ヶ月後の大晦日……あの場所へ、また三人で行かねえか?」
大石がメガネの奥の目を柔らかく細めた。
「……越後一宮、『弥彦神社』ですね」
篠原賢人も、少年のような輝く笑顔で力強く頷いた。
「いいね、古賀、大石。弥彦神社前のあの老舗温泉宿に、また三人で泊まりに行こう。新しい時代の幕開けを、越後の神様の前で三人で迎えようじゃないか」
「決まりだ!!」
三人は温かいジャスミン茶の湯呑みを掲げ、カチンと音を立てて乾杯を交わした。
会社での立場は変わろうとも、この三人の魂の絆は、何ものにも引き裂くことのできない永遠のレールで結ばれていた。
窓の外を見上げると、初冬の澄み切った大沼の夜空に、満天の星々と銀河がどこまでも美しく、神々しいまでに瞬いていた。
遠くの南越急行本線からは、新しい時代の希望と夢を乗せた深夜の貨物列車が、誇り高き澄んだ長笛を夜空へ響かせながら、滑らかに星海の下を走り抜けていくのが聞こえた。
不滅の友情と温かい笑顔に包まれながら、雪国の晩秋の夜は、どこまでも静かに、そして優しく更けていくのだった。




