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第5話:王都の特等施設で『雑草の煮汁』を振る舞う俺と、魔力回路がボロボロな元仲間たち

ギルド長が泡を吹いて倒れた翌日。

 俺に用意されたのは、王都の一等地に立つ豪奢な邸宅だった。

 庭には魔力の豊かな薬草が咲き乱れ、専属のメイドまで付けられている。


「ゼクス様、朝食の準備が整いました。食後には、昨日ご所望された『伝説の魔銀ミスリル製・調合鍋』も届いております」


「あ、ありがとう。……なんだか、急に生活が変わりすぎて落ち着かないな」


つい数日前まで、ダンジョンの地面で硬いパンを齧っていたのが嘘のようだ。

 俺は庭に生えていた、これまた誰も見向きもしない『光るコケ』を摘み取り、お茶に混ぜてアルテミス様に差し出した。


「これ、ただの観賞用のコケに見えますけど、実は精神を安定させる効果があるんですよ。どうぞ」


「……ふふ、ゼクス。貴公が『ただの』と言うたびに、王都の薬剤師たちが悲鳴を上げそうだな。……ん、これは……! 脳の奥まで澄み渡るような心地よさだ。やはり貴公は神の申し子か」


王女様と優雅なティータイム。

 俺の作る「残り物のスープ」や「淹れたてのお茶」ですら、この国最高の聖騎士にとっては至高の逸品らしい。


一方その頃――。

 王都の薄汚い宿屋の一室では、勇者カイルたちが絶叫していた。


「ぎああぁぁぁ!! 腹が、腹が焼けるようだ! あの聖水、本当に本物なのか!?」


「カイル様、落ち着いてください! 私も……私も魔力が上手く練れなくて……。聖教会の司祭様は、これは『好転反応』だって言ってたじゃないですか!」


彼らの肌はどす黒く変色し、自慢の武器は手入れが届かずボロボロに刃こぼれしている。

 ゼクスが密かに施していた『劣化防止の香油』の効果が切れ、ついに限界が来たのだ。


「クソッ、あの無能……ゼクスさえいれば、今頃こんな傷……! おい、誰かあいつを連れてこい! 謝ってやるから、今すぐポーションを作らせろ!」


「……それが、カイル様。ゼクスは今、王女殿下の直属として、王立研究所の最高顧問に迎えられたそうで……我々のような『平民の冒険者』が近づける場所にはいないんです……」


「な、なんだと……!? あんなゴミが、王立顧問だと!?」


勇者たちの怒りと後悔の声は、豪華な石造りの壁に遮られ、俺の耳に届くことはなかった。


俺は新しい調合鍋を前に、ワクワクしながら新しいレシピを考えていた。


「よし、次は『飲めば寿命が10年延びる栄養ドリンク』でも作ってみようかな。……あ、でもこれ、ただの野菜ジュースだし、あんまり驚かれないよね?」


俺の「普通」が、また一歩、世界の常識を置き去りにしていく。

お読みいただきありがとうございます!

「ざまぁ」の落差がハッキリしてきましたね。

勇者たちは自分たちが何を失ったのか、まだ本当の意味では理解していません。

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