第1話:「無能な調香師はいらん」と深層で捨てられた俺、世界樹の葉を拾って覚醒する
「追放された男が、実はとんでもない才能を持っていた」というお話です。
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「――おい、ゼクス。お前、今日限りでクビだ。このパーティから出て行け」
迷宮の第45階層。
命を懸けた探索の最中、勇者カイルは吐き捨てるようにそう言った。
彼の背後では、他の仲間たちも冷ややかな視線を俺に向けている。
「……えっ? 今、なんて……?」
「耳まで腐ったか? 無能な『調香師』はいらないと言ったんだ。お前の作るポーションは、泥水みたいに苦くて飲めたもんじゃない。おまけに傷の治りも遅いときた」
「そ、そんなはずはない。俺の薬は、素材の魔力を極限まで引き出して――」
「黙れよ。お前がチマチマと雑草を煮込んでいる間に、俺たちは聖教会の『特製聖水』を手に入れたんだ。あれこそが本物の薬だ。お前の代わりなんて、いくらでもいるんだよ」
カイルが足元に投げ捨てたのは、俺が昨夜寝る間を惜しんで調合した特製の回復薬だった。
ガラス瓶が割れ、琥珀色の液体がダンジョンの冷たい床に広がる。
「……それは、ただの薬じゃないんだ。カイル、君たちの装備の劣化を防ぎ、呪いへの耐性も付与して――」
「うるせえ! 言い訳は見苦しいぞ! さっさと失せろ。あぁ、その荷物は置いていけ。それはパーティの共有財産だ」
身一つで、魔物がひしめく深層に放り出される。
それは実質的な死刑宣告だった。
勇者たちが去ったあとの冷たい静寂。
背負い袋さえ奪われ、手元にあるのは腰のベルトに差した小さな調合ナイフ一本だけ。
「……はは、ひどいな」
俺が彼らのために、どれだけ心血を注いできたか。
魔力の枯渇を防ぐために、自らの生命力を削ってまで薬草を抽出し、彼らの剣が折れないように密かに強化液で磨き上げていた。
それらすべてを「無能」の一言で切り捨てられたのだ。
その時、背後の闇から重苦しい足音が響いた。
――ランクA魔獣、ブラッド・ウルフ。
それも、十数体もの群れだ。
「……死ぬ、のか。こんなところで」
震える手で、足元にこぼれた自作のポーションの残り香を嗅ぐ。
俺の鼻は、普通の人間には感知できない「魔力の粒子」を嗅ぎ分ける。
「待てよ……。カイルたちが捨てた、あの『特製聖水』。あれの正体は……ただの砂糖水に魔力を無理やり詰めただけの劇薬じゃないか。あれを飲み続ければ、一週間もしないうちに魔力回路が焼き切れる……」
あいつらは、本物の毒を宝物だと思い、俺の作った最高の良薬を泥水だと捨てたのだ。
そう気づいた瞬間、俺の中で何かが弾けた。
「……死んでたまるか。あいつらに、俺がいなくなった後の惨状を拝ませるまでは」
俺は咄嗟に、壁際に生えていた名もなき雑草――冒険者なら誰もが見向きもしない『枯れススキ』を毟り取った。
普通ならただのゴミだ。だが、俺の「調香師」の極致は、素材の隠れた真価を引き出すこと。
「鑑定……いや、――【神眼鑑定】」
突如、脳内に無機質な声が響く。
『対象:世界樹の末裔(変異種)を鑑定。
保有スキル【神の薬師】が発動しました。
錬成可能なレシピ:神速の霊薬、万死の猛毒、全回復の雫……』
「世界樹の……末裔? これが?」
ただの雑草だと思っていたものが、黄金の輝きを放ち始める。
俺は夢中でそれを手の中で練り合わせ、魔力を流し込んだ。
襲いかかってくるブラッド・ウルフの牙が、俺の喉元に迫る。
俺は完成したばかりの「無色の液体」を、地面に叩きつけた。
――パリンッ!
瞬間、爆風のような魔力が吹き荒れ、群がっていた魔獣たちが、悲鳴を上げる暇もなく霧のように霧散した。
いや、消滅したのではない。一瞬で「浄化」されたのだ。
「……嘘だろ。ただの虫除けのつもりで作ったのに」
静まり返ったダンジョンの中で、俺は自分の手を見る。
「俺のスキル……もしかして、『調香師』なんてレベルじゃないのか?」
俺がそう呟いた時、崩れた瓦礫の奥から、一人の女性が這い出してきた。
白銀の鎧を纏い、神々しいまでの美貌を持った騎士。だが、その腹部には致命的な傷がある。
「……だれ、か……助け、て……」
彼女は、この国の第一王女にして、最強の聖騎士と謳われるアルテミスだった。
「……よし。実験台にはちょうどいい。……いや、助けるついでだ。俺の『薬』、試させてもらいますよ」
俺は、カイルたちが捨てた雑草(神の素材)を手に、不敵に微笑んだ。
お読みいただきありがとうございます!
第2話では、瀕死の聖騎士アルテミス様に「神の薬」を試します。
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