だいにしょう みえないけれど、かんじるもの
つぎのひ。
あおいは、ようちえんにいくみちで、
なんとなくそわそわしていました。
(ひかりん、またあえるかな…)
ひかりんがいたのは、
ゆめだったのか、ほんとうだったのか――
あおいには、よくわかりません。
でも、
むねのなかが、
まだぽうっとあったかくて、
あおいは、
なんどもじぶんのおなかのあたりを
そっとおさえてしまいました。
おにいちゃんのひびきが
ちょっとふしぎそうにききます。
「あおい、どした?
おなかいたいのか?」
「ううん…だいじょうぶだよ。
あおくん、げんきだよ」
ひびきは、
「なら、よかった」
と、かるくあおいのあたまをポンとして
さきにはしっていきました。
あおいは、
ひびきのうしろすがたをぼんやりみながら、
そっとうわのそらでした。
ようちえんにつくと、
せんせいがいいました。
「きょうは、はるのうたをうたいますよ〜」
きょうしつが、
みんなのこえで、ぱぁっとあかるくなります。
あおいも、いっしょうけんめいくちをうごかします。
でも……
なにかが、すこしちがいました。
きのうまでよりも、
みんなのこえが、
きらきら
ときこえるのです。
たとえば、
すなおちゃんの声は、
すきとおるガラスみたい。
かずまくんの声は、
ちょっとくすぐったい、ふわっとしたかぜみたい。
みんなの声が、
色があるみたいに
ちがってきこえました。
(あれ……?
こんなふうに、きこえたことあったかな…?)
あおいがくびをかしげていると――
「ね〜え〜…あおい〜…」
ぷかぁ…
ひかりんが、
あおいのかたのあたりにあらわれました。
「ひ、ひかりん…!」
あおいがびくっとうごくと、
すなおちゃんがふりむきました。
「あれ? あおいくん、どうしたの?」
「な、なんでもないよっ」
あおいは、
あわててごまかします。
ひかりんは、
あおいのほっぺにちょんっとのって
ふにゃ〜っとわらいました。
「きこえるでしょ〜?
みんなの、きらきら〜」
「きらきら…?」
「うん〜。
めでみえなくてもね〜。
こえとか、あしおととか〜
みんな、きらきらしてるの〜」
(こえが…きらきら?)
あおいは、
しんじられないようなきもちでした。
でも、
よく耳をすますと――
ほんとうに、
みんなのこえには
ちいさなひかりがまざっているように
きこえたのです。
おそとあそびのじかん。
きょうは、おにごっこ。
あおいは、
あまりはしるのがじょうずじゃありません。
でも、なんとなく、
きょうはこわくありませんでした。
(あしおとが……きらきらしてきこえる)
トトトト……
タタタタ……
おともだちのあしおとが、
ちがうリズムのひかりにきこえる。
(こっちには、かずまくん。
そっちには、りんちゃん…)
めじゃなく、
こえとおとで、
まわりがすこしわかるのです。
ひかりんが、
あおいのまえで
ぴょんぴょんはねました。
「あおい〜。
おともだちのところ、いけるよ〜」
「……うん!」
あおいは、
むねをとん、とおして、
すこしだけはしるスピードをあげました。
でも――
タッ。
ドンッ。
「うわっ…!」
あおいは、
まわりみにくいまま、
とつぜんとまっただれかにぶつかって
そのままころんでしまいました。
クラスのみんなが
「あっ!」
とこえをあげます。
「またころんだ」
「いたそう…」
そんなこえが、
ひそひそしてきました。
あおいのむねが、
ぎゅっとなります。
(あおくん、また…またみんなのまえで…)
なみだが、
ぽろぽろ。
ひかりんが、
あおいのまえにふわっとあらわれました。
「ね〜え〜…あおい〜…」
ひかりんのこえは、
いつもよりすこし
ふにゃっとしています。
「だいじょうぶだよ〜。
あおいは…がんばってるの〜」
「あおくん……かっこよくない……
すぐこけちゃうの…
みんなに、わらわれるの…」
あおいがぽつりというと、
ひかりんは、
ちいさなてをぱぁっとひろげて、
あおいにくっつきました。
「かっこいいよ〜。
ころんでも、たつの〜。
あおいのこころ、きらきらしてるの〜」
そのこえは、
しずかで、でもあたたかくて、
あおいのむねに
すこしずつしみこんでいきます。
でも、
まわりでひそひそときこえる声は、
やっぱりちょっと、いたかった。
(あおくん……やっぱり……
みんなより、できないのかな…)
あおいは、
ちいさく、うつむきました。
ひかりんは、
えがおのまま
あおいのなみだを
ちょんちょんとふいて、
「だいじょうぶだよ〜。
あおいのきらきら、
まだまだこれからだよ〜」
と、そっとつぶやきました。
あおいは、
すこしだけだけど――
そのこえに、
また、むねのなかがぽうっとしました。
でも、まだ
すこしだけかなしいままでした。
――つづく。




