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【連載版】星になれ、戦姫  作者: じうかえで
第一章 駄目姫と生意気従僕
7/9

7 姫、嫌われるドレスを考える


   ***



 リィゼア達が城に帰ってくると、客が待っていた。


「……どうしてわたくしの執務室に仕立て屋がいるのよ」


 扉を開けるなり一度閉めたリィゼアは、再びドアを開いてため息。


「おそらく陛下の差金ですね。姫が逃げないうちにとっとと捕まえてドレスを作らせようとなさったのでしょう。事実、こうして捕まりましたし。残念でしたね」

「一言多いわよシィル」

「ま、つべこべ言わずにドレスくらい作ったらどうです。出るのでしょう、夜会?」

「うぅ……面倒だけど、嫌われるにはそれがいちばんなのよね……」


 これから山のように降りかかる夜会準備のことを考えると頭が痛い。


「ていうかシィル、なに他人事みたいに言ってるのよ。あんたも一緒に考えるのよ、嫌われる方法」

「なんで俺も」

「あんたがわたくしの従僕だからよ。従僕なら従僕らしく主人を助けなさい」

「だから従僕ではありませんと」


 何度言えばわかるのですか、を省略して、シィルはやれやれと首を振った。

 そして、リィゼアの肩を押して、仕立て屋の女の正面のソファに腰掛けさせながら、


「わがままなお姫様ですね。それで? どんなドレスをお望みですか」

「それはもちろん、ひと目で()()()くれるデザインよ!」


 リィゼアはドヤ顔で胸を張り。

 シィルが諦めたように額を押さえ。

 事情を知らない仕立て屋の女が、目をしばたたかせた。





「改めまして、私、仕立て屋のジョアと申します」


 女は、リィゼアの興奮がおさまるのを待って、恭しく一礼した。

 ジョアの働く仕立て屋は、王家御用達の超一流店である。なので、もちろん机の上に所狭しと並べられたサンプルの布たちも、上品で華やかな色や模様ばかり。

 しかしリィゼアは「あれでもない、これでもない」と言っては、次のサンプルを要求している。


 ジョアはシィルから事情をざっくり説明されると、すぐさま「ご協力いたします!」と叫んだ。理由は「面白そうだから」だそうだ。


「姫、希望の色はないのですか?」


 ジョアのチョイスで現在の机上は原色で埋め尽くされているのだが、やはりリィゼアは「あれでもない、これでもない」と繰り返していた。

 見かねたシィルが尋ねる。


「どの色も、生地や模様がお上品なせいでお上品に見えるのよ。というか王室御用達のお店なんだから、どんな色でもお上品に優雅に仕立てちゃうでしょう。それではだめなの」

「ほほう。では王女殿下、『どう頑張ってもお上品とは思えない色と仕立て』を目指せば良いのですね?」

「まあ、簡単に言えばそうなるのかしら?」


 二人は楽しくなってきたのか、わいわいきゃっきゃとサンプルを囲んで話し合っている。


「なら毒々しい色にすればいいわね! 生理的に嫌われる色ならきっとわたくし自身も嫌われるわよ」

「姫、自分が嫌われることについてうっとりと語らないでください」

「ねえシィル、毒々しい色ってなにがあるかしら? 黄色と黒? 紫? 赤と緑?」

「嫌なものを連想させるという意味では、深緑や褐色がかった茶色もありますね」

「うーん、どれもしっくりこないわ……」


 リィゼアは考えているのか、「毒、毒……」と呟いている。


「毒々しい色がピンとこないなら、一般的な男性の好みから大きくはずれたデザインにしてみるのはどうですか」

「つまり?」


 提案に興味を持ったリィゼアの相槌に、シィルは真顔で答える。


「ふりふりキャピキャピのきゃわきゃわってことです」

「ちょっとなに言ってるかわからないわ、シィル」


 リィゼアが顔をしかめた。


「ぼけるにはまだ何十年か早いわよ」

「ぼけてもふざけてもいませんが。まあ、姫が着たら面白そうだなーくらいは思っていますね」


 「ちょっと失礼しますね」と、シィルはサンプルの数枚に手を伸ばす。


「シィル、万が一実現してもあんたは絶対笑っちゃだめよ」


 シィルの言い方が癪にさわったのか、リィゼアは頬を膨らませた。

 シィルははいはい、と薄い笑いを浮かべて、手に取った布サンプルを、それぞれの色が見えるように少しずつずらして重ねる。


 白、パステルピンク、ライトブルー、レモンイエロー、パステルパープル。毒々しい色や原色ばかり見て疲れた目に優しい、淡くて優しい色合いだ。


「こんなのどうです。リボンやレースをたくさん使って甘々のふりふりふわふわ夢見る乙女系メルヘンドレスです。どちらかといえばキリッとした美しい系の姫のイメージとは真逆なものになるので、さらにゆめかわと乙女を突き詰めれば毒に匹敵する気持ち悪さになると思いましたが」

「気持ち悪いとはなによ気持ち悪いとは。わたくしだって立派な乙女よ?」

「乙女……姫が、乙女……ふ」

「こらそこ笑わない!」


 いつもの言い合いが始まるのをよそに。


「メルヘン! それならうちの工房の腕の見せ所ですね。全力でふりふりのふわふわのきゃぴきゃぴにお仕立ていたします! それにしても、流石は王女殿下の従僕様。殿下のことをよくわかっていらっしゃいますね!」


 いちばんノリノリなのはジョアであった。




 こうして、リィゼアのドレスはふりふりでゆめかわなメルヘンお姫様ドレスになることが決定したのである。


お読みいただきありがとうございます!

次話は明日9:00に投稿します!

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