表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

Chapter 1 ——シャット劇場、開幕——

ロンドン市警・第七課の会議室は、朝から煙がたちこめるような騒ぎだった。


「まさか、建物ごと…消えた…!?」


大理石の机にカードを叩きつけるのは、若き警部補リアム・クラウズ。書類にはこう記されていた。


“ブリリアン・シャット名義のカードが、現場に残されていた。”


「聞いたことがある」

向かいに座る老警視が、葉巻に火をつけながら言う。

「数年に一度、世界中で“説明不能な現象”が起きる。エッフェル塔の一時的な透明化、アマゾン上空で消えた飛行船、タイムズスクエアの巨大画面が全てブリーフケースに収まった事件。全部同じカードが残されているんだ」


リアムは鼻で笑う。


「ただの奇術師が、どうやって時計塔なんて建造物を消せるんです?」


老警視は静かに言った。


「だから彼女は“奇術師”じゃない。“シャット劇場”のオーナーだ」



“シャット劇場”


ロンドンのどこにも地図に記されていないはずの劇場。なのに、今夜そこではショーが開かれるという情報が、特定の人々のもとにだけ届いていた。


住所は書かれていない。ただこう記されていた。


「真夜中、時計塔の跡地へ。マントを忘れずに。」


リアムの元にも、なぜか招待状が届いていた。



その夜。霧がまた広場を包む。


招待された者たちは皆、顔を隠すようにマントや仮面をつけて現れる。広場の真ん中、何もなかったはずの地面に、音もなく巨大なサーカス風テントが立ち上がっていた。


そして――舞台の幕が上がる。


「Ladies and Gentlemen…お待たせしました」


ライトが灯る。空中に浮かぶように、彼女はそこに立っていた。


ブリリアン・シャット。


「本日の演目は、“建築消失マジック”の裏側と、あなたの記憶を少し…いただきます」


観客がざわつく中、リアムは立ち上がる。


「警察だ! ここで何を――」


だが彼の言葉は、白い鳩の羽ばたきにかき消される。


ブリリアンは笑って言った。


「ようこそ、“ありえない”が起こる場所へ」


そして、舞台全体が光に包まれた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ