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あのぉ 妹がバックレたからって俺を男の娘にして聖女へ祀り上げないでくれませんか

作者: 幽霊配達員

「……と言うわけであなたには民衆の前で聖女として振る舞っていただきます」

 教会内部になる豪奢な一室で、目元がキツい金髪の美人神官にピシャリと言い放たれてしまった。

 対面には厳かな教皇や司祭といった並々ならぬ人物達。汚れなき白を基調にした法衣を身に纏っている。

 拒否権が、ない。

 落ち着け、冷静に考えよう。まず俺の名前はデイジー。花の名を親からもらった男だ。まだ少年と言える歳で13。うん、この時点で聖女なんてあり得ない。

 そもそも権威なんて望んじゃいないし、大きすぎる役目なんて重荷にしかならない。

 それはこの世界に転生してから心に決めていた事だ。

 昔は日本人。若くして会社で役職についた結果、まともに休日が取れずに忙殺された記憶がある。だから今世では昇進なんてまっぴらだ。

「いえいえムリですよ。男が聖女の真似事なんて前代未聞じゃないですか」

「確かに前代未聞ですよデイジーさん。けどあなたの双子の妹で聖女であるパンジーがあろう事か責任を投げ出して教会から脱走してしまったのです。身内が責任を取るべきではないでしょうか」

 この美人神官、横暴が過ぎるだろ。

 確かにパンジーは双子の妹だ。二卵性双生児だけれど髪型と身体のラインを除けば瓜二つの容姿をしている。やっぱり除いたふたつが致命的だわ。

「身内だからって限度があるでしょう。別の聖女候補を改めて聖女に建てた方が後々のことを考えると健全だと思いますよ」

「それができれば苦労はしません。そもそも聖女は30年に一度現れる唯一無二の存在なのです。無論聖女の資質を持った者は多々生まれてはいますが、内に秘めたる力が比ではないのです。故に民衆を安心させるためには、力だけではなく外見が必要なのです」

 もうパンジーは聖女としてお披露目を済ませてしまったから替えがきかない。だからこそ内で力はごまかしながら外面もごまかさなければならない。

 何っていったって、世界の時期聖女様なのだから。

「心苦しいかもしれませんが、誰かがやらねばなりません。聖女なき状況が、不安になった民主を暴徒へと変えてしまう危険を防がなければなりません。無責任なパンジー様の代わりは、デイジー様しかいないのです」

 無責任、か。別にパンジーはそんなじゃないんだけども。

 パンジーと過ごしてきた幼少期を思い浮かべる。

 安全第一でのんびり屋な俺を常に引っ張って、色んな場所へ冒険に出かけるアクティブな妹だった。

 制止して止まるような性格では断じてなく、常に行動していないと気が済まない。

 猪突猛進さは成長する程に勢いを増し、止まる事がわからなくなったと思うほど動き回っていた。

 そんな動いてないと死ぬんじゃないかと言われていたパンジーが、12歳の時に行われる聖女捜しで不運にも適性ありと下されてしまう。

 聖女にイメージできる姿を一文字で示すなら“静”。

 清く緩やかでゆっくりと微笑み、所作ひとつひとつに丁寧さが求められる存在。

 “動”であるパンジーの性格とは真逆過ぎる。

 適正こそあれど絶望的に不向きな役職だ。大人しくしていられるはずがない。

 パンジーも聖女の力を秘めていると発覚したとき心底嫌がっていた。

 泣けど喚けど覆らない発覚。教会側も聖女を見逃すはずもなく俺たちは呆気なく引き裂かれた。

……大丈夫かな?

 見送った際に呟いた一言だったけれども、案の定ダメで今に至る。

「仮に俺が聖女の皮を被ったとして、肝心要の祈りはどうするつもりなのですか?」

 この世界はかなりの王道ファンタジーな世界観で、簡単に言えば魔王が人類を侵略している状況だ。理由は知らん。

 けども王都は魔の手にかかっていない。それどころか護られている。聖女の強大なご加護によって。

 パンジーに課せられた使命。今は先代聖女がご存命だからどうにかなるけれど、世代交代はいずれ行わなければならないし、30年台のお役目で聖女の力が尽きつつもある。

 俺が聖女のフリをしたところで、立ちゆかなくなるのは時間の問題だ。

「神官達による人海戦術で聖なる結界を維持します。苦肉の策ですけども。不安要素は尽きませんが、聖女が逃げ出した今、この手でなんとかしてみせます」

 あれ、てっきり聖なる結界は聖女じゃなければ形成できないと思ってた。けど力さえ結集できれば、神官達でどうにかできるのか。

 なら嫌がるパンジーをムリヤリ連れていく必要もなかったんじゃないか。

「説明しておきますが、神官が束になったところで聖女一人の祈りには全く及ばないのです。聖なる結界には綻びが生じ、範囲も縮小されてしまいます。だからこそ、聖女の存命は絶対なのです」

 さいでっか。聖女は祈りの質も量も桁違いって事なんか。

「パンジー様には何度も何度も、脳の随に刻み込む勢いで教育したというのに」

 遂に正面から青筋立てながらの文句が飛び出てきた。

 パンジー、お勉強嫌いだったからな。きっとお勉強の時間は動物園になっちゃってたんだろう。飼育の方がまだ楽そうだ。

 教育係の苦労を考えると気の毒に思えてきた。

 そもそも放っといたら平和に支障がでそうだし、やるか。おかしな話、俺もパンジーの力を使うことができるから。バレない程度にフォローしよう。

 俺は深く深く溜め息を吐いてから、諦めて言葉に出した。

「わかりました。俺、聖女の皮を被ります」

「理解していただけたようで安心しました。では今日からわたくしジュシュが、デイジー様を立派な聖女として振る舞えるよう徹底的に叩き上げて差し上げます」

 美人神官、ジュシュの目が鋭く光った気がする。コレは、早まったかもしれない。

「お、お手柔らかにお願いします」

 身体を硬直させながら、乾いた声で笑った。


 女の子って、大変なんだな。特にお淑やかで清楚な雰囲気な女の子は。

 ジュシュの聖女教育は何から始まったっけか。言葉遣い、いや正しい姿勢の取り方だったか。それとも声色だっただろうか。

 最初の段階で一気にみっつの事を指摘されたせいで、もう開幕なんて覚えちゃいない。

 一時間でパンジーが逃げ出した事に納得したよ。寧ろ一年もよくもった方だ。

 声変わりなんてとっくにしてるのに低い声を出すなとか、歩く際に軸をブレないようにさせろとか、終いには男である事を忘れろとか。

 コレ全部パンジーが言われてたと思うと不憫でならないね。

 ん? 元々女のパンジーが言われるわけないだろって。俺もジュシュがお小言を漏らすまで考えもしなかったさ。

 とにかく一ヶ月の強制突貫しごきを経て、付け焼き刃なりにどうにかお披露目を果たす。

 ボディラインを緩やかな衣装でごまかし、化粧でかわいく清楚に仕上げ、厳かで果てしなく長い祝詞を一字一句間違いないよう暗記し唱える。

 優しく自然な聖女の微笑みを作っては人々の歓喜を一身に受ける。

 堅苦しく、一分の隙も晒す事が許されない窮屈な日々。労いの言葉こそもらえど、はっちゃける事は許されない。

 おかしい。社畜な前世より自由がない。オマケに赤子からおじいちゃんに至るまでの男共からモテモテになる始末。

 以前よりも魅力的に見えたなんて言伝を承った日には泣きそうになった。

パンジー、おまえ……

ソレと気になっていた聖なる結界だけれど、案の定不安定になっていた。教会の神官達や先代聖女もがんばっているんだけれど、どうしても綻びが生じてしまう。

だからパンジー力をこっそり使って補強するのも日課となる。

ありがたい事に、結界に力を注ぐ演技も強いられていたからね。存分に利用させてもらったよ。

そんなこんなで忙しなく毎日を送り、どうにか日常として身体に染みついていたある日、勇者一行が教会へ向かっていると風の便りに聞いたのだった。


「おっ……お初にお目にかかり、えいこうです」

「光栄よ」

「こっ、光栄です」

 大聖堂でたくさんの人々に囲まれながら、勇者一行が跪いて辿々しい口上の挨拶を口にした。

 勇者は俺よりも年下に見え、かわいそうなほど場慣れしていないと窺える。仲間からフォローもされているし、どうにも頼りない。名を騙った偽物なんじゃと疑ってしまうほどだ。

 けども神からのご加護を得たお墨付きなようで、まず間違いはないとの事。

 だからこそ公の場で大々的に聖女(偽)との邂逅を果たし、人々に安心と希望を分け与えようとしている。

 故に俺も気を抜けない。女神の如き柔らかな微笑みで、甘く安心できるような声色と言の葉で、赤子を安心して包み込むような所作で、けれども神々しさを含ませながら邂逅の儀式を進める。

 勇者一行は全員で四人。幼さを残していて頼りなさげな少年の勇者。屈強な肉体が人一倍存在感を濃くしている男性の戦士。分厚い丸眼鏡でボサボサな髪をしている魔法使いの女性。

 三人だけでも既にメンツがデコボコしている。本当に大丈夫なんだろうか。

 が、ここまではいいんだ。問題は最後の一人。俺と瓜二つの少女。

 どう見ても、俺が聖女になる原因を作ったパンジーなんだよな。しかも時折剣呑な目付きで俺の事睨んできてるし。

 こりゃ非公式の場を設けてお話しをする必要があるな。

 儀式の一環で勇者に接近する瞬間がある。狙うならそこだろう。勇者が戸惑いなく臨機応変な対応できるのかに一抹の不安を感じてしまうけれど、やるしかない。

「私、ゆっくりとお話しを聞きたく存じます。後に手紙をしたためますので、お時間をいただけると嬉しいです」

「えっ?」

 思いっきり動揺して目を丸くされてしまったけれど、微笑みを向けると頷きを返してくれた。及第点ってところかな。

 さて、誰が来てくれる事やら。パンジーの思惑が知れればいいんだけど。

 邂逅の儀式はやや勇者の微笑ましい不手際はあったものの、概ね無事に終わりを告げた。


「ちょっとアンタ、私の名を騙って聖女をするなんていい度胸じゃないの!」

 誰にも邪魔されないよう教会を抜け、密会の場を設けたらパンジーが開口一番に突っかかってきた。

「ちょっとパンジーさん、ケンカ腰に話すのはよくないと思うよ」

「そうですよぉ。パンジーちゃん怖いんだからぁ、相手が萎縮して何も話せなくなっちゃいますぅ」

「パンジー、押しが強すぎ」

 勇者と魔法使いがオドオドしながらパンジーを窘め、戦士が羽交い締めにしながら引き剥がしてくれた。

 勇者パーティ勢揃いで話し合いに応じてくれていた。最悪代表一人でもよかったんだけどね。

「うるさい。こんな面の皮が厚い偽物なんて強請るぐらいで丁度いいのよ。図々しくのさばらせておいたら鬱陶しい事この上ないわ」

 手足をバタバタさせて戦士の拘束を必死に振り払おうとしながらパーティに当たり散らしている様子から、相当鬱憤が溜まっているとみえる。

 にしても出会って早々詰め寄ってくるとか、状況を把握している俺じゃなかったら会話が成立しなかっただろうな。

「えっと、そんなに聖女に未練がおありなのでしょうか?」

 軽く首を傾げながら尋ねると、パンジーを除いた勇者一行から不思議な表情を向けられた。

 パンジーを知っていて、パンジーの姿であり得ない仕草をされたから脳がバグったんだろう。俺が演じてるのはあくまで万人に受けのいい聖女様だからな。

「はぁ? 別に聖女なんかに興味はないし、高すぎる地位なんて寧ろ邪魔なだけよ。聖女をやりたいんだったら堂々とやればいいじゃない」

 パンジーは心底呆れた溜め息を吐いてから、キっと目尻を吊り上げた。

「私が気に食わないのは、わざわざ私を真似て名を騙っているところよ!」

 変わってねぇなぁ。それどころか押しの強さに磨きがかかってんじゃねぇか。どの道、元気そうで安心したわ。

「確かにパンジーさんの言う事もわかる。どうしてわざわざ取って代わるような事をしたんですか?」

「こんな事を言ってはなんですがぁ、あまり褒められたような事じゃないとお思いますぅ。気持ち悪い」

「……」

 この魔法使い、最後に下向きながらボソっと毒吐きやがった。

 あと戦士は何か喋れ。

「勇者の方々に尋ねますが、私が偽物だとはいつから知っていたのですか?」

 俺が誰なのかをネタバレさせる前に、どの段階でパンジーが打ち明けたのか知っておきたいんだよな。もしかしたら出会った段階で軽く自己紹介してるかもだし。

「パンジーという名の聖女がいるって、ボクたちの耳に入った時だよ」

 代表して勇者が答えてくれた。まっ、妥当なタイミングだな。きっとパンジーの耳に入った瞬間怒りだしたんだろう。

「そうでしたか。教えていただきありがとうございます」

 丁寧に頭を下げて礼を言う。さて、説明しますか。

「まず念頭に置いてほしいのですが、今期の聖女はパンジーでなければなりません。他の誰かが押し退ける事はできないのです。だから、聖女が教会に在る為には、パンジーを騙らねばなりませんでした」

「つまり、アンタが聖女になるためにはどうしても私の名を騙る必要があったってわけね」

 うーん、30点。軸の据えるところが間違ってんだよなぁ。勇者の面々もまだ渋い顔してるあたり、納得はしていないようだ。

「違います。パンジー様が戻ってきていただければ、私は聖女の皮を脱ぎ捨てて一般人に戻る事ができるって話です」

「あっ」

 驚きと理解の声が重なる。

 極上の笑みを貼り付けながらパンジーを強請ると、目を逸らされた。お前が逃げ出さなきゃ影武者をする必要なかったんだぞってちゃんと伝わったようだ。

 もう演技は要らねぇだろ。声色も元に戻しちまえ。いくぜ。

「でだ、パンジーのそっくりさんを探し出すために誰に白羽の矢が立ったと思う」

 聖女の仮面を脱ぎ捨ててニヤリと笑うと、パンジーは目を丸くして顔を見上げた。面食らっている勇者達はとりあえず置いておく。

「ちょっと待って。アンタまさか、デイジーなの」

「正解。教会はそっくりな女性を探すよりも、瓜二つの双子を選んだってわけだ。ちったぁかわいく見えたか?」

 したり顔で聞いてやると、勇者達からヒソヒソ話が聞こえてきた。

「デイジーって誰?」

「聞いた感じぃ、パンジーちゃんと双子の兄弟みたいですけどぉ、けどぉ、性別不明ですぅ」

 いや気付け男だって。戦士は俺の顔をマジマジと見ながら顔を赤く染めるな。俺にそっちの気はねぇから。

「かわいいなんてもんじゃないわよ。私よりも庇護欲に駆られるじゃないの。どーいうこと!」

 いや、普段逞しすぎるパンジーに庇護欲で比べられてもなぁ。ほら、お仲間はみんな視線を逸らしてるぞ。

「ジュジュに鍛えられたからなぁ。見てくれだけならパンジーを超える聖女になったってお墨付きをもらったぐらいだぜ。要らねぇけどな」

「あぁ……あの鬼BBAに鍛えられちゃったなら納得だわぁ」

 どうやらよくご存知なようで。文字通りパンジーの教育係だったからなぁ。変な言い回しになるけど、パンジーの目が息してねぇわ。

「デイジーには気苦労をかけたわね。じゃ、そのまま聖女をがんばってよ」

 じゃっと手のひらを振ってそそくさと退散しようとするが、そうは問屋が卸さないぞ。

「待てパンジー。タダで帰れるなんて思ってねぇだろぉなぁ」

 音も立てぬ優雅な競歩でパンジーとの距離を詰め、背中から肩へポンと手をやり決して逃がさないぞと笑みで圧をかける。

「怖っ。普段はお淑やかだけど決して怒らせてはいけない類いの怒りを感じる」

 ちょっとその発言は酷くないか勇者さん。

「何よ。私は今更まどろっこしい聖女なんてやるつもりないんだからね」

「別に俺だってパンジーに聖女を押し付ける気はねぇよ。どう考えても聖女なんて椅子に座っていられるタイプじゃないしな。で、パンジーの言うまどろっこしくない聖女ってのはどんなだよ?」

 パンジーは破天荒だけど、無責任ってわけじゃない。寧ろ積極性の塊だから、何かは突拍子もない事は考えてんだろ。

「そうそうソレなのよ。大体魔王に怯えて縮こまってるなんて癪じゃない」

 うん? パンジーさんは魔王がどんな存在なのかご存知で?

「魔王のせいで教会に押し込められるなんて堪えられないわ。せっかく元凶がわかってるんだもの、いつまでも守りに徹してるより殴り飛ばしに行った方が手っ取り早い!」

 握りこぶしを作ってイキイキと宣言する。あっ、コレ本気だ。

「見てなさいデイジー。私が攻めの聖女になって魔王をぶっ飛ばしてきてあげるから」

 どうしよう。パンジーがイキイキするほど、俺はゲンナリした気分にさせられちまう。けどまぁらしいっちゃらしいし、こうなったら止まらないのがパンジーか。

「はぁ。わあったよ。じゃあ俺は、魔王をぶっ飛ばすまで守りの聖女になって帰る場所を守ってやる。だから、無事に帰って来いよ」

 溜め息交じりに答えてやると、パンジーはニィっと笑顔を作る。

「わかってるじゃないデイジー。任せといてよね」

 どちらともなくハイタッチ。パンと小気味いい音が部屋に響いた。

 もう、任せるっきゃねぇか。

「とは言え守りもホントにギリギリだからな。間違っても死ぬんじゃねぇぞ。パンジーが死んだら、きっと聖なる結界は崩壊しちまうからな」

「なんで? 今だって私がいなくてもしっかり維持できてるじゃない」

 心底不思議そうに首を傾げる。聖女だからこそ、聖なる結界の状態が感覚でわかるのかもしれない。

「言ってなかったけど俺な、パンジーの力を使う事ができるんだ」

「は? デイジー男だよね。なのに聖女の力を使えるって事。おかしくない。それともホントに性転換した?」

 俺の股間をジッと見つめるでないわ。ちゃんとついとるわ。

「ンな訳ねぇだろ。正確に言うと、聖女の力じゃなくてパンジーの力を借りれるんだ。双子が故のシンパシーってやつかな。仮にパンジーが聖女じゃなくて火炎の使い手だったら、俺も聖女じゃなくて火炎の力を借りれていたって事」

 要は相手を限定したコピーみたいなもの。だから、パンジーが死んだら俺の力も失われる可能性が濃厚なんだよな。

「さすがはパンジーちゃんの双子ですねぇ。規格外の力を持っていますぅ」

 ちょっとそこの魔法使い。パンジーと同類にしないでほしいんだけど。

「そっか。だったら私達の武器に聖女の祈りを込める事もできるんじゃない」

 武器に祈りを込めるって、聖女ってそんな事もできるのか?

 俺が首を傾げている間に、パンジーはハンマーを取り出した。

「おまっ、武器って!」

 また重量級だなオイ。

「ほら、みんなも武器を出して」

 驚いている間にパンジーはパーティ全員に武器を取り出させた。

「みんなの分は私が祈りを込めたんだけど、こう言うのって自分には効果が出ないんだよね。だからもしかしたら、デイジーなら私の武器にも祈りを込められるかもしれないし、みんなの武器には二人分の聖女の祈りを込められるかもしれない」

 マジか。さすが自分の力じゃないだけあって、聖女の力を熟知し切れていなかったわ。

「けどやり方なんてわからないぜ」

「大丈夫。私が教えてあげるから、ねっ」

 ははっ、やっぱ俺、パンジーに振り回されてばかりだわ。

 こうして俺が全員分の武器に聖女の祈りを込めると、パンジー達は意気揚々と魔王を討伐するために旅立っていったのだった。


 いやぁ、魔王軍の攻撃が激化している中で聖なる結界に干渉できなくなったときには焦ったね。

 パンジーの身に何が起こったのか気が気じゃなかったし、聖なる結界も破られちゃったから生きた心地もしなかったな。

 けどもか細い祈りが通じたのか、ここぞというタイミングで魔王軍は動きを止めたんだよね。何事かと思ったら塵となって消えていったし。

 これが勇者一行によって魔王が討伐された瞬間だったって、後から知るんだけどね。

 訪れた平和に人々は歓喜していたけれど、俺はパンジーの安否が気になって仕方がなかっな。

 まぁ勇者と一緒に無事帰ってきてくれたんだけれども。

 そんなこんなで聖女としての役目が終わったはずなんだけれど……


「どうして俺は教会で缶詰にされてるんですかねぇ」

「そりゃ聖女として看板が立っちゃったからでしょ」

 俺の嘆きにパンジーが答えた。

 魔王討伐後だ。俺は人類を守り希望を与えた慈愛の聖女として、そして魔王を倒したのが本物の聖女パンジーと発覚し双生の聖女として性をもらい、パンジー・エイプリルとデイジー・エイプリルの双子姉妹で崇め奉られる事となってしまった。

 本物が現れたなら俺なんてお役御免のはずなんだけれど、どういうわけか俺も本物として定着してしまっている。かんべんしちくれ。

「というか久しぶりだなパンジー。息抜きの脱走はもういいのか?」

「久しぶり。デイジーが元気か気になっただけで、すぐに旅立つんだけどね。世界が平和になったなら旅してなんぼでしょ」

「俺も田舎に帰りぇてぇんだけど」

 相変わらずパンジーは自由奔放。寧ろ魔王の脅威という枷がなくなったため旅行を気ままに楽しんでいる。

 俺も解放してほしいんだけれど、パンジーほどステルス性能は高くないからジュシュに捕まっちまうんだよなぁ。

「平和な世界なんだし、聖女なんていなくてもいいじゃねぇか」

「仕方ないわよ。デイジーかわいいから。信者だってたくさんいるんでしょ」

「嬉しくねぇよ!」

 パンジーだって、勇ましい聖女の姿に脳を焼かれた信者がたくさんいるんだけどな。悲しいかな、信者の数が比じゃねぇんだよ。チクショー。

 ちなみに俺とパンジーが揃っている時の人気は言うまでもないだろう。ギャンブルで例えるならLT引いたかのように信者が集まってくる。いや常にラッシュ状態なんだけれども。

「あははっ。ストレス溜まってるね。こういう時は運動して美味しい食べ物食べるのが一番だよ。今からお忍びしに行こっ」

「あっ、おい。コレから祈祷の時間がっ……」

「そんなのバックレちゃえばいいじゃない。人生楽しまなきゃ損なんだから」

 慌てるオレの手を引いて、パンジーは窓から外の世界へと飛び出した。こりゃ後からジュシュにこっぴどく怒られるだろう。

 やれやれだわ。結局俺は、世界がどうなろうとパンジーに振り回される運命みたいだ。

 まっ、楽しいから文句を言えねぇんだけどな。

 振り返って花のように笑うパンジーに、微笑み返して二人で自由へ走ったぜ。

 思いついた設定オンリーで物語を書くのはやめた方がいいなと思いました(ソレでも書くつもりだけれども……

 世界観が陽炎のようにユラユラしてるのはもう仕方ないとして(オイっ!)、せめて登場人物ぐらいはしっかり練り固めた方がよかったかな(そんな気力ないけれど)

 駄文でございますが、楽しんでいただけたなら嬉しいです(楽しめなかったらごめんなさいorz

 後リアクションだけでもしていただけると嬉しいです(強欲

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