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第十三章:形なき図形

午後三時十七分。

警視庁第一課・資料室。


神谷弘志は、テーブルの上に各事件現場の写真を並べていた。


殺害現場、被害者の位置、羽根の置き方。

一見ランダムに思えるすべてを、

彼は一枚の地図の上に重ね始めていた。


「……位置関係に規則はない。

 だが、遺体の“向き”が……揃っているように見える。」


彼は定規を使って、各被害者の体勢と羽根の位置を線で繋ぎ始めた。


——やがて、浮かび上がる不思議な“回転”のパターン。


それは正円でも五芒星でもない。

ただ、回転する“渦”のような、何かの“目”にも見える形だった。


「……偶然か?

 それとも“設計”された何かか……」


その時、若い刑事の一人・佐藤が近づいてきた。


「神谷さん……まさか、形とかパターンとか言い出すとは……

 都市伝説じゃないんですから……」


「佐藤、これはただの推測じゃない。

 全ての遺体の向きと羽根の向きが、中心を描いている。」


佐藤は少し黙ってから苦笑いした。


「わかりました……じゃあ、もしそれが“模様”だとしたら、

 何のために? 誰に見せるために?」


弘志は答えなかった。

ただ、目の奥に一瞬の光が走った。


午後八時。

弘志のデスク。


オフィスに人影は少なかった。

ほとんどの刑事は帰宅、あるいは現場に出ていた。


だが、彼は黙々と資料を見つめていた。


地図の中心に描かれた“パターン”。

それを囲むように配置された事件現場。

そして、共通するのは——死の静けさと白い羽根。


(これは……“見せられている”のか?)


彼はそう思った。


犯人は、都市を“キャンバス”にして、

何かの“意味”を形にしようとしている。


「俺にだけ、見せているのか……?」


「いや……“俺たち”に……?」


その瞬間、ふと自分の言葉に違和感を覚えた。


「……“たち”?」


彼はその一言を打ち消すように、コーヒーを飲み干した。


静かな夜。

机の上の地図に、蛍光灯の光が滲む。


そしてその地図の上には、形容しがたい“眼”のようなラインが完成していた。

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