冬のこと
境内
乾いた葉が落ちて
音はない
土のにおいがして
冷たい日が満ちる
影が映る
冬の雨
ついさっきまで雪だった
ふと雨になって
服を湿らしていく
風でひしゃげた蓬生は
寒さのなかでもじっとして
空を顧みるけれど
雲にさえぎられながら
山はやはり山
青い暮れ方
心は波のようにくだけて
形がない
光の底で眠りについて
海の天窓をぽかんと見上げ
星のたわむれを
眺めるばかり
ある日のむなしい道のり
人もいない春を待ちあぐねる
私はとても愁しいので
立てもせず
座れもせず
この茫々とした草原にくずおれて
風吹きすさぶ野の先を
身をふるわせて
眺めている
涙は血からできるけど
泣きはらしたら逝けるのか
漠然と無為なこの私が、砂みたいに無くなれるのか
何も知らないので、何もできない
日が沈んで
星が満ちて
やがて夜明けは来るけれど
くたびれたまま
影に濡れた土の上に寝そべって
頬を当て
何もないまま
どこにも行けないまま
光は落ちる
昼休みの踊り場みたいな沈黙のさなか
時が渡る音をかろうじて耳に捉える
誰かと語らうためには
この春はぼくにはあまりにむなしいので
近づくその日を知るための
本能さえ凍てついて
涙に濡れたぼくを
乾かす太陽すら冷えて
今ではもう
世界は泥にまみれる