お芋一切れ
飢饉が続いていた。俺も山門の陰に腰を落とし、項垂れている人々。お寺の賽銭も泥棒たちに持ち去られている。神仏にすがってもおなかの空腹はみたされない。
「おかあちゃん、おなかすいたよう」
「ごめんね。もう食べ物ないんだよ」
「わがまま言うでねえよ」
「おなかすいたよう」
「ほら。これお食べ」
姉が懐からお芋をとりだし妹にさしだした三人親子。
「あんたそれ。こないだの」
「うん。食べずにとっといたの」
「お姉ちゃん。いいの?」
「ほら、おたべ」
妹がお芋を受け取ろうとしたそのとき
「その芋!よこせや!」
山門の陰に腰を落としていた男がお芋を奪おうとした。
「ぐぉ」
その腕を刀が一閃切り落とした。いや峰打ちで叩き落した。
「ひぃ」男は逃げ去っていった。
地面に落ちる寸前でお芋を拾い、上へ放ると空中で三振りし、四切れをお姉ちゃんの手に戻した。
「ありがと」
俺は一切れもらった。
「ありがと」