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第5話 『新メンバー、オズ』

VRMMOの世界に降り立ったお婆ちゃんは、リザードマンの戦士にビックリです。

第5話 『新メンバー、オズ』


 たった今、出会ったばかりのリザードマンの戦士オズの僕達と行動を共にしたいという申し出に、僕は戸惑った。


 「え!?」


 始めて会ったプレイヤーを簡単に信じるほど僕は素人では無い。不用意に相手を信じて実際に痛い目に合った事も有るくらいだ。


 それに今はお祖母ちゃんが一緒なのだ、どうしても警戒心が強くなってしまう。

 

 「いえ、私もこういうゲームは始めてな上、知り合いも居ませんし、色々教えて頂けないかと思いまして。其方の方は慣れている様ですし、偶然ハルさんを受け止めたのも何かの縁だと思いまして」


 オズは僕を見て「どうだろうか?」と返事を待つ。


 厳ついトカゲの顔が、不安そうな情け無い表情になっている。


 オズはリザードマンでしかも戦士。こっちは初心者で狩人のハルさんと後衛の魔法使いの2人なので前衛の壁役は欲しいのは事実だが・・・。

 

 返事を悩んでいると、ハルさんが僕のローブを引っ張った。


 「コ、じゃなくてシンちゃん。御一緒するくらい良いんじゃないかしら?」


 「うん、でも・・・」


 仲間を増やすのは、ハルさんがもっと慣れてからと思っていたのだが。


 「少し、御一緒して御人柄を見てみましょうよ」


 懇願する様に上目遣いで見詰めて来るハルさんに思わずたじろぐ。


 「うっ、分ったよ、分ったから」


 頭を掻いて僕は折れた。


 ハルさんとオズの顔がぱっと明るくなる。


 「ただハルさんはこんな感じなので・・・」


 「それは構いませんよ。よろしくお願いします。シン殿、ハル殿」


 このゲームに適性の無い人は最初体を動かすだけでも苦労するのは最初の500人が記事にして攻略サイトに載っていた。


 酷い人は酔った様に平衡感覚が崩れて歩くのは勿論、立つ事もままならない程だ。だがそれも10分もすれば慣れるのが普通らしいが。


 「よろしくお願いしますね」


 「こちらこそよろしくお願いします」


 僕の不安を余所に2人は仲良く挨拶していたので、僕も中に入る事にした。

 

 「所で殿はやめませんか?」


 「ああ、お気に為さらず。これはロールプレイなので。御二人は普通に話してくれて構いませんので」とオズは穏やかに笑った。薄い唇から見える牙がきらりと光る。


 リアルで巨大なトカゲの笑顔は少しコワイ。


 だが、ハルさんは既に慣れた様でにこにこしている。


 そう言えば、昔チンピラに難癖付けられた時も、お祖母ちゃんは平然としていた様な・・・。


 年の功なのか、物怖じしない性格なのか。


 「そう言えば、あの時のチンピラってどうしたっけ?」


 「コウちゃんどうかしたの?」


 「いや、何でも無いよ。其れより、そろそろ行こうか」


 僕たちは街中を歩きながらハルさんのリハビリを行なっていた。シンが手を取りエスコートして、その後ろをオズが付いて歩く。 

 

 「ボクは魔法使いだから杖は必須だけど、ハルさんとオズさんはどうする?」


 兎に角3人揃って装備を買いに行く事になっている。


 僕は必要な杖だけ買って、後は節約だ。


 「どうせ、今服を買っても弱いし、魔法職の防具なんてどうせ紙だしね」


 「そぉ・・・じゃあ、おばぁ・・・私も武器だけにするわ」


 「私はそうは行きませんよね?」


 オズは盾役なのだから当然紙装甲では話にならない。


 「そうですね、オズさんは壁役でもあるから防具は確りして欲しいです」


 「あとは回復薬も買わないと」


 「回復薬?」


 「うん、ボク達は回復役が居ないからね」


 「かいふく、やく?」


 ハルさんが首を傾げる。ゲームが始めてのハルさんには分り難い話だったのかな?


 「HPを回復する為の薬のやくと、仲間の回復を行なう役割の役ですよ」


 オズも初心者の筈だがちゃんと分っている様で助かる。


 「回復薬は1つ10Gだから、最低でも30~40Gは残して買い物しないと」


 「他に必要な物はあるの?」 


 「う~んこの辺は毒を使うモンスターは居ないし、取り合えず回復薬だけで良いと思う」


 「分りました。丁度着いたようですよ」


 3人は先ず武器屋に入ると其々の装備を物色した。

 

 「初期装備の売却価格を聞いておいてその分を上乗せして考えても良いけど、計算間違えないでね」


 「成る程、そうやって少しでも良い物を買うのですね」


 「まぁ、最初の町だからあんまり変わらないんだけどね」


 そう言いつつ僕は初期装備の木の杖を売って、檜の杖より1つ上の魔法の杖を買った。


 魔力消費量がほんの少し少なくなる最初の装備なのだ。その分物理攻撃力は最低値。


 オズさんは初期装備を売って、鉄の鎧を買っていた。武器は槍を選択。


 「なぜ槍を?」


 「ん?刀は高すぎるし、ハルバードは勿論ポールアックスにも手が届かなくてな」

 

 「ああ、刀って他のゲームでも高めですね」


 「槍は安いし、その代りに最低ランクとは云え金属鎧を買う事にします」


 ハルさんは小刀を購入した。普通の人は狩人なら弓だろうって思うかも知れないが『NLF』では初手としては間違いだ。


 弓やボウガン等は武器とは別に矢が必要になる。当然この矢は消耗品なのでお金の無い最初は結構痛い。作る事も出来るが素材集めが面倒だ。そんな諸々の理由で弓はオススメしない、出来ない。


 この後、防具屋に行ってオズの金属鎧を買った。


 「さて、ではレベル上げと資金稼ぎに行こう」


 店を出た僕達は町の外では無く町の中心に向かう。


 と、そこで僕はハルさんの腰の小刀を見て思い出し笑いをした。


 「あっ!コウちゃんまた!」


 笑った僕の背中を顔を赤くしたハルさんがポカポカと叩いてくる。


 「だって・・・」 


 余計に可笑しくなって、僕は笑いが堪えられなくなった。


 何故かと言うと、ハルさんが武器屋で小刀を買った時、店員から受け取った筈の小刀が見当たらなくて、詐欺に会ったと思ったらしい。しかも其の事を店員に言っても話を聞いて貰えず、僕に言う事も出来ず涙目になっていたのだ。


 (如何にNLFがリアルだと言っても、NPCは苦情までは対応してくれないよ)


 「む~!」


 単にストレージに入っていただけなんだけど。


 「ごめん、ごめん」


 笑いながら謝る僕を剥れて見ている。身長が低いから上目遣いだ。


 「さぁ、次行こう。ね?」 


 ハルさんの手を取り、ハルさんのペースに合わせてゆっくりと歩き出す。


 「シンちゃん何処に行くの?町の外は向こうだと思うのだけど」


 ハルさんは僕に手を引かれながら外壁に有る大きな門を指差す。が、僕達は門の有る方向とは別の方向に向かって歩いていた。


 「何か用事でも?」


 僕達の後ろを付いてきているオズも疑問に思った様だ。


 「冒険者ギルドでクエストを受けるんだよ」


 「冒険者ギルド?」


 ハルさんは分かってない様子。


 「そう、そこでモンスター退治の仕事を受けてレベル上げしつつ依頼もこなして報奨金も貰う」


 「成る程、一石二鳥ですな」


 オズさんの理解も得て、一人分かっていないお祖母ちゃんを連れて再び歩き出す。

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