第37話 『エピローグ。再会』
残り1話!
投稿開始から色々書き直してたら、1話増えましたw
第37話 『エピローグ。再会』
「荷物は此方でお預かりして、御部屋の方に御運びして置きますので、先ずは此方の方に来て頂けますか、お連れ様がお待ちしております」
そう言って、室内用の車椅子を用意してくれた。
年配の仲居さんが、僕たちを案内したのは、どう見てもお客様用ではない応接室で、どうぞ。と言われて中に入ると1人の中学生位の少女とお祖父ちゃん。そして、年配のアメリカ人っぽい人が寛いでいた。
「お祖父ちゃん!?」
「うん、皆無事に着いた様だね」
手にしていたカップを置いて、お祖父ちゃんが立ち上がる。
「え、なんで?」
驚いている僕の横から顔を覗かせる空がお祖父ちゃんの顔を見て、やはり驚いている。
僕達が全員部屋に入ると、其れまで黙って座っていた少女が意を決した様に立ち上がり、此方を向くとピシッと切れの良いお辞儀をした。
元気の良いポニーテールが振れている。
「始めまして、シンさん、クウさん、ココさん。私がツバメこと音羽紫苑です。この度は多大なご迷惑を掛けしてしまい申し訳ありません!」
ぽかんとする僕達と何時までも頭を下げたままの紫苑と名乗った少女。
色々言いたい事を考えていたのに、実際に目にすると言葉が出なかった。
そんな僕の横を2人が飛び出して、紫苑に抱き付いた。
「「ツバメちゃん!」」
「は、はい!?」
突然涙目の2人に抱き付かれ、おろおろと戸惑っている。
「なんで急に居なくなったのよ、みんな心配したんだよ!」
「元気で良かったです~」
2人に心配されたり、質問されたりで返事に困っているとお祖父ちゃんが助け舟をだした。
「ほらほら、お嬢さん達。先ずは落ち着いて自己紹介をしようじゃないか」
そう言って、皆をソファに座る様に勧め、そのままお祖母ちゃんの所に行くとお互い微笑み有ってから車椅子を押した。
皆がソファに座り、用意されたお茶を飲んで一息吐いてから自己紹介を始める事となった。
「では、私から始めましょうか。私の名前はトニー・ブラウン。春香さんの夫で、孝太の祖父です。そして【NLF】ではリザードマンのオズと名乗ってます」
「やっぱりオズさん!」
「オズが師匠の夫・・・」
紫苑はわなわなと自分のやらかした事に驚愕している。
驚きと恥ずかしさ、申し訳ない気持ちで顔を隠してしまった。
紫苑はオズさんからハルさんを守ろうとしていたが、まさか夫婦の間に割り込んでいたとは夢にも思わなかったのだろう。
「オズさんって、コウちゃんのお爺さんだったんだ」
「みたいだね・・・全然気が付かなかったよ」
空は何度か会って居るが、片手で足りるくらいだし最後に会ったのも数年前だった筈だ。
「頑張って、キャラクターを作りかしたからね。それでも春香さんには気付かれてたみたいですけど」
「そうなんですか!」
女性陣は何故か目を輝かせ、何時気が付いたとか、どうして気が付いたとか聞いている。
「私も気になりますね、春香さんは何時から私だと気が付いていたのですか?」
聞かれたお祖母ちゃんは、頬を押さえ恥ずかしそうに下を向くと、視線だけお祖父ちゃんに向けて申し訳無さそうに答えた。
「もしかして、と思ったのはその、最初に話しをしていた時ね」
これにはお祖父ちゃんも驚いていた。
そして、空と心音はキャーキャー言っている。
紫苑は悔しそうというか色々難しい顔だ。
「それで、私がハルカこと春香・ブラウンです。コウちゃんの祖母です」
「来て頂いて光栄です、師匠!」
「始めまして、心音です!」
心音は先走ってるな~、空は軽く手を振っている。
「では、次は私ですネ!」
その喋り方で予想は確信になる。と言うか最後の一人だ。
「やっぱりタダカツさん」
「そうで~ス。私が侍タダカツ!アルフレット・バートンで~ス」
実に楽しそうに盾を構えるポーズを取って笑う、黒い肌に白い歯が栄える50才位の陽気なアメリカ人だ。
「やっぱりアメリカの人だったんだ」
「タダカツさんと同じで大きいです」
「ハハハッ!これからもよろしくで~ス」
そして、僕、空、心音と続いて最後の紫苑に注目が集まった。
「その、改めましてツバメこと音羽紫苑です・・・、」
紫苑は頭を下げたまま、動かない。
「その、皆さんには色々心配をお掛けしま・・・した」
声が震えている。そして、ぽたりぽたりと水滴が床に落ちていた。
「私、何も言わずに・・・シンさんや皆にも一杯メール貰ったのに無視しちゃって・・・」
「紫苑ちゃん・・・」
震える声は嗚咽に変わり、溢れる涙が床に広がっていく。
どう答えようかと迷っていたらお祖母ちゃんが答えた。
「お家の事情だったのでしょ?もう良いのよ。もうね・・・」
「でもっ!」
「今日は楽しい集まりなのでしょ?だったら、笑顔で皆で楽しみましょう、ね?」
「春香さん・・・」
二人で何かしら話をしたんだろうか?僕達には言えない事も、師匠と親しんでいるお祖母ちゃんには話していたのかもしれない。
何か2人だけで通じ合ってる感じがする。
それでも頭を上げようとしない紫苑にどうしようかと考えていると、事情を知っているっぽいお祖母ちゃんが目配せして頷いた。
僕にどうにかしろと?
見れば大人陣は僕に期待の眼差しを向けている。アルフレットさんの小さなガッツポーズは僕に頑張れって事ですね。
僕はまだ頭を下げたままの紫苑を見て、仕方無いと覚悟を決めて歩み寄った。
僕は下げたままの紫苑の頭をポンと手刀で叩いてその小さな肩に手を置いた。
そして、屈んで目線の高さを合わせると、姿勢はそのまま顔だけを上げた紫苑と目が合った。
驚く紫苑。
そんな紫苑に僕は微笑んで、お帰りとだけ告げた。
変な事は言わない、無駄な事も言わない、兎に角何度か送ったメールの所為で嫌われてるなんて事は無さそうで本当に良かった、と胸を撫で下ろしてたら紫苑が勢い良く飛び退いた。
「え?!そんなに嫌われてたのか!?」
僕が悲しそうに落ち込んでいると、紫苑が慌てて否定してくれた。
「ち、違います!驚いちゃっただけで・・・」
「驚く?」
僕が俯く紫苑の顔覗き込もうとすると空が割って入ってきた。
「はい、其処まで」
「先輩、初対面の女の子に近いです」
僕達は2人にソファに引き戻され、色々と話し合った。
その後、遅めの昼食を取る頃には皆、打ち解け合って和気藹々としていた。
紫苑はまだわだかまりの様な物を感じている様だが、時折見せる笑顔に大丈夫だと感じる。
食後ゆっくりしていると、食後の運動にと誘われて、全員で外に出た。
今日はゆっくりリゾートを楽しむ事になっているので、ゲームは明日からとなっている。
「ここは・・・?」
見上げる僕達の目線先には高く聳える木々とその木々を繋ぐ様に、木やロープで作られた遊具が連なっている。
所謂ツリー・アスレチックだ。
しかも、高い・・・。
紫苑とアルフレットさん、空は楽しそうに見上げ、僕とお祖父ちゃん、心音は青い顔をしていた。
「行きますよ!最強のレベル7を目指して登りましょう!」
紫苑が指差す其の先を視線で追うと、最も高い場所にゴールを知らせる鐘が有った。
「一番速くあの鐘を鳴らした人は皆に何かお願いが出来る事にしましょう!」
「ええー!?」
其の高さは7階建てのビル並み。これまではレベル5までしかなかったが、村のリニューアルに際してレベル6と7追加されたのだそうだ。
正式には3日後のオープンからなので、今は貸切なのだそうだ。なので気になる所が有ったら教えて欲しいと言われてる。
皆は順番に登り始め、僕はお祖父ちゃんと心音と顔を見合わせ覚悟を決めた。
いや、諦めかな?
「お先に失礼しますね」
心音がお辞儀をして先に行く。
「それじゃあ、私もちょっと行ってくるよ春香さん」
「はい、気をつけて下さいね」
車椅子の上でにこやかに手を振るお祖母ちゃん。
そして、溜息を一つ吐いて僕達も諦めた様に重い足を進めた。
そして、数十分。レベル5で怯えて動けない空を置いて、まるで忍者の様に最強のレベル7を飛び回る紫苑が居る。
僕はレベル2のデッキで肩で息をしながら上を行く2人を見た。
因みに心音はレベル3の不安定な足場で、揺らしている。
お祖父ちゃんは1つ先のデッキで、アルフレッドさんは僕の横で息を切らせながら一緒に3人を見上げていた。
「さて、女性陣に負けていられませんね。行きましょうか」
そう言って立ち上がり、ローラーを1つ外して、次の遊具のロープに引っ掛け様とした時、疲れからかお祖父ちゃんがふら付いた。
「危ない!?」
足を踏み外し、休憩スペースから落ちそうになる。
お祖父ちゃんが僕達の方に手を伸ばすが、疲れている僕やアルフレットさんは動きが遅くて間に合わない。
(お祖父ちゃん!)
思わず目を瞑ってしまった僕の横で、誰かが囁いた。
「もう、気を付けてって言いましたのに」
(え!?)
恐る恐る目を開ければ、ローラーを別のロープに引っ掛け、落下を防止してお祖父ちゃんを引き上げているお祖母ちゃんの姿が有った。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
次38話で最終回となります。
投稿は今晩の予定です。
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