第33話 『闇夜の刺客』
お話も終盤です。
戦闘シーンは苦手ですが、最後の戦いが始まります。
次回からw
第33話 『闇夜の刺客』
ツバメが姿を消してから一週間、僕達は第四異界の中ボスを倒して、第四階層の奥へと足を進めていた。
突然音信不通になった事でパーティの空気も重かったが、タダカツさんやココ、そしてクウ達が少しづつ雰囲気を取り戻してくれて表面上は平静を取り戻し、今も何とかゲームを続けてる。
ボス部屋への道程は潅木の生える岩山と広がる岩石砂漠で、過酷な乾燥地帯が冒険者の侵入を阻んでいた。
そして、僕達もまたこの砂漠を越えて今、第四階層のボス部屋の前に立っている。
「じゃあ、着替えようか」
砂漠戦用に作った防具から此処のボス戦用に作った装備に衣装チェンジだ。
其々、この4階層に来てから作った新装備に変更していく。
オズさんやタダカツさんの頑丈そうな鎧に僕やクウのローブ、そしてココやハルさんの皮鎧だがっ!?
「ハルさん!?」
また、お祖母ちゃんはミニスカートの鎧を着ているにも関わらず、スパッツや半パンと行った見た目装備を付け忘れているのだ!
どうも、装備変更の時にインナーまで一緒に外す癖がついてしまっているらしい。
普段のインナーだって、下着と云う訳ではないのだが、お祖母ちゃんが初期設定しているインナーは基本中の基本の白の競泳水着の様なシンプルな形の物なので、そう見えてしまうのだ。
「ハルさん!?」
慌てるクウがハルさん前で手を広げて隠す。
「見るな!タダカツ」
そして、オズさんはと云うと顔を真っ赤にしてタダカツの目を塞いで、自身は横を向いていた。
「オウ、たかがゲームのグラフィックじゃないですカ~」
まぁ、確かにそうなのだが・・・。
そのグラフィックが見た目15歳の美少女なので困る。
そして、僕もまたココの熊手で目を潰されていた。
お祖母ちゃんには急いでズボンを穿いて貰い、やっと落ち着いた。
「ハルさ~~~ん」
「ごめんなさいね。おろしたての鎧が嬉しくって、うっかり・・・」
そう言って、ハルさんは新装備を確かめる様に、ぴょんぴょんと飛び跳ねている。
チラチラと見えてるが、今回は大丈夫だ。と思ったら何故かクウに目を覆われた。
解せぬ。
そんな風にボス戦の準備をしていると、他のパーティの人達が現れた。
岩陰の向こうから、ひょっこり出てきた6人は、僕達の顔を見るなり、手を振って走ってくる。
「あ、【春雷】の皆さんじゃないですか!?」
「え!?」
「どうも」
向こうのリーダーと挨拶を交わしたら握手を求められたので応えた。
あの作戦の動画公開後、僕達はちょっとした有名人になった。
特に有名になったのが、ハルさんだ。
まるでアニメや漫画の忍者の様な動きで、カリュオーンに止めを刺したハルさんは一種のアイドルの様だった。
ただ本人がそんな扱いを嫌がったのと、運営とジークやソニアさん達が動いてくれて、少しづつ沈静化して行っている。
嘘か真か、一部の熱狂的かつ紳士的なファンの間で紳士協定が結ばれたらしいなんて、話も有った。
そして、そんなファンの間で『幼女忍者』から、『アイドル忍者』にジョブチェンジしているという噂も・・・。
実際のジョブは狩人だけど。
そう言えば、壁解放後レベル80を過ぎた辺りから上級職へのジョブチェンジが出来るとの報告も有った。
僕達の中で、80を超えた者が居ないのでこのボス戦で経験値を稼ぐつもりだ。
「じゃあ、そろそろ行きますね」
僕達は手を振って、ボス部屋に入る為の石碑に手を置いた。
新しい武器と防具のお蔭で無事ボスを倒し、第五異界へと辿り着いた僕達はポータルの登録をしてクランホームに戻って来ていた。
第四異界のボスは何でも食べるオオサンショウウオの姿をした20m級のモンスター『ドゥルガーヴ』強酸の体液とブレスが厄介で、しかもぬるぬるした皮膚が物理的な攻撃が通り難い。ただ、火魔法には弱い事が分かっている。
そんな、物理攻撃に耐性の高いモンスターだと思っていたのだが、ハルさんがズバズバ斬っていた。
何故切れるのか聞いたら、芯を外さなければ大丈夫と言っていたが、マネをしようとしていたオズさんもタダカツさんもほとんど出来ていなかった。
更に言えばハルさんの動きも良かった。これまでも十分凄かったが、今迄以上に動きが良く、本当に忍者の様だったのだ。
「ハルさん、何か有った?」
「なにって?」
本人は分かってないのか、首を傾げてる。
「イエ~ス!なにかこう、動きがシュバ!シュバ!って感じでしタ~」
タダカツさんが動きを真似つつ、説明している。
「そうかしら?確かに最初に比べれば随分体が動かし易くなった気はするけど」
「そうですよ!あのヤモリをすぱすぱ斬って、凄いです!」
ココが手を取って涙目でハルさんに尊敬の目を向けていた。
ココは『ドゥルガーヴ』のあの見た目に、恐怖していたので、さっさと倒してくれたハルさんに感謝していたのだ。
(この後、連戦して経験値稼ぎをするつもりなのだが・・・あと、ヤモリじゃなくてオオサンショウウオな)
「兎に角ボス戦は終りましたし、次ぎは第五異界ですな」
「少し見たけど、次ぎは和風な感じでしたね」
第五階層は純和風で、戦国時代が好きなタダカツさんは楽しみにしていた様だ。
「は~い、とっても楽しみで~ス!」
わいわいと話す中、ハルさんが時間となった。
「それじゃあ、私はこれで失礼しますね」
立ち上がり、お辞儀をして消えたハルさんを見て、何か何時もと違う感覚を感じたが、それが何か分からず僕はもやもやしたがココとクウが買い物に町に出ると言うので、付き合ってからログアウトした。
そして、ツバメが姿を消して二ヶ月が過ぎた。
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草木も眠る丑三つ時。そんな言葉も滑稽に聞こえるほど世の中は目まぐるしく、昼夜関係無く世の中は動いているがそんな現代でも病院と云うのは別物で、夜勤の看護師意外は静かに寝静まっている。
そんな病院に、1つの影が忍び込んだ。最新のセキュリティも、アナログな人の目も掻い潜る。
まさに、忍び込むのに相応しい格好をした黒装束の小柄な姿が、地上7階の個室の前に居た。
恐らく複製されたセキュリティカードでロックを解除。
ピッ!
と云う電子音も手で塞いで抑える。
音も無く開くドア。その狭い隙間に滑り込み、そっとドアを閉めてベッドを確認する。
患者の名前が書かれたプレートには目標の人物の名前が書かれていた。
(名前は其のままなのですね)
苗字は違っている。だが、これだけの間姿を暗ましていたのだ。名前くらい変えていて当たり前。
いや、ファミリーネームだけ変えているという事は、普通に生活し、普通に結婚したのかもしれない。
この部屋を契約者の名前も同じ苗字だったので、後者なのだろう。
彼女は私が生まれるずっと前に里を抜け、多くの追手を再起不能にして数十年もの平穏を手に入れたのだろう。
そんな彼女も半身不随になって、碌に動けなくなっている。
年も年だ。もう60才・・・医療の発展した現代ではまだまだ人生半ばかもしれないが・・・。
スッと、腰からカーボンセラミックの短刀を抜いて両手でしっかりと持ち、ゆっくり振り上げる。
顔ははっきりとは見えないが、微かな呼吸音とそれに合わせてゆっくり上下する布団が其処に生きた人間が居る事を示している。
視線を定め、手に力を込めた時、迷いが生じた。
祖父の言葉が蘇る。
「紫苑、お前が我等が里の最後の継承者となってしまった。お前の父や母には悪い事をしたと思っている。そして、お前にも・・・」
「長っ!?」
「紫苑、私が悪かった。過去の遺恨や立場に囚われ、お前を不幸にしたワシを許して欲しい・・・」
「そんな、そんなっ!私にとって大切な家族です。そして厳しくも優しい、大切な師です」
私は、祖父でもある師の手を両手で包み、祈る様に祖父の快気を願った。
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