第24話 『下準備を始めよう』
プレイヤー達の自主イベントの為の準備開始です!
第24話 『下準備を始めよう』
僕の話を聞いたみんなの反応は概ね同じで、やる気満々だ。
特に、クウとツバメ、タダカツさんのやる気が凄い。
ただ問題が1つ有る。
「で、攻略メンバーなんだけど」
そう、僕達は7人。しかし、ボスエリアに入れるのは6人なのだ。
僕とクウとココ、この3人は後衛なので基本固定である。問題は前衛なのだが・・・。
「ここは私が抜けるのが正解ですね。師匠とそこのトカゲを一緒にするのは嫌ですが」
ツバメは僕が言う前に自分でそう告げてくれた。僕の事を気遣っての事だろう、戦力分析が出来る上に優しい娘だ。
しかし、僕の居ない間にオズさんと何が有った。
「ツバメちゃん・・・」
ハルさんはツバメの事を思い心配しているが、こんな事はこれからも多々あるので慣れて欲しい。もっと人が増えればハルさんや僕だって外れるかもしれないのだから。
「良いのです、師匠。それにシンさんもその考えの様ですし」
確信を持った表情で僕を見てくる。
「そうだね、言い難かったから自分から言ってくれて助かるよ」
「シンちゃん」
「シン!?」
僕を嗜める様な目で見るハルさんとクウを手で制した。
「でも、勘違いしないでくれツバメが弱いからって訳じゃないからな」
これは間違い無く本心だ、同じレベルの狩人なら、ツバメの方が確実に強いのだから。
「分かっています。私の戦闘スタイルは師匠と被りますから」
「ああ、その方が良い場合も有るけど、今回は違うと云うだけだよ」
物分りの良い妹ってこんな感じかなとか思うと、自然と顔が綻ぶ。
「はい!次ぎは参加出来る様に精進します!」
ツバメの表情に曇りも無く、本人が納得しているので、ハルさんもクウも納得してくれた。
これで面子は決まった。後は当日失敗しない様に訓練有るのみだ。
(所で、本当に2人に何が有ったの?)
僕は小声でクウに尋ねると、クウは楽しそうに含み笑いをして、話してくれた。
ハルさんと親しそうにしているオズさんに嫉妬して二人の中を警戒しているらしい。
「師匠を誑かす不埒者は私が許しません!」だそうだ。
「いや、オズさんも良い歳の筈だし、ハルさんはお祖母ちゃんだし・・・」
だが、そんな事を知らないツバメは若い二人の仲を邪推してるのだとか。
「で、ハルさんの事話さなかったの?」
「ハルさんの個人情報を私が話す訳には行かないでしょう?」
確かにその通りだが、これは楽しんでるな。
「うん、そうだね。大した問題にならない様なら暫くこのままにしよう」
僕とクウは、お互いに悪い顔で口角を上げたのだった。
結局一週間の間に出来た訓練は10回程だけだった。依頼の為にとソニアさんやジークから貰った情報で、僕達は装備を強化する為の採取集めに出ていたからだ。
お蔭で、全員防具が格段に上がったし、当然武器も強化された。
第三異界、第七階層ボス【カリュオーン】
その姿は小さな小人の様な姿で、汚いローブを着ていてその中身は良く分からない。2又のフォークの様な杖の先端が動物の角の様に捻じ曲がった形状で、魔法を使って攻撃してくる。
この攻撃を潜り抜け、ダメージを与えるとHP残り半分で姿が変わり、下半身は蛇、上半身はライオンの獣人で背中に蝙蝠の翼が生えた姿に変わるのだ。
この状態で更に体力を半分にまで落すと強化される。この状態になると兎に角強い。
そもそも姿を変え、攻撃パターンも耐性も変わるので、多くの状況への対応が必要だ。
先達の情報で弱点も行動パターンも分かってるのだから、事前に出来る事は多い。ちゃんと準備をすれば、レベルが低めのパーティでも10回と掛からず倒せるだろうという評価だ。
まぁ、パーティの構成や運が悪かったら別だが。
そこで、僕達は二手に分かれて素材集めをしたのだ。
ツバメ、ココ、僕のパーティと、ハルさん、オズさん、タダカツさん、クウのパーティだ。
ハルさんと別パーティで、しかもハルさんがオズと一緒と云う事で、一部反論は有ったが却下した。
ハルさん達には第四階層でグランドトータスを、僕達は三階層に戻ってサンダーバードを倒す。
「じゃあ、オズみんなを頼むよ」
「お任せを。シン殿も御武運を!」
「ああ!」
「師匠に手を出したら許しませんよ~!」
僕に手を引かれながら、ツバメの声が青い空を突き抜けた。
僕達はポータルで第三階層、北の町『ケント』に移動、そこからサンダーバードの狩場と言われるフィライト高原を目指し、オズさん達は第四階層の東の町『デボック』から更に東のブラウケン山脈を目指した。
「ハル殿、クウ殿、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「わ、私もまだ、大丈夫・・・」
「オズ殿、私への気遣いは無しですカ~?」
「タダカツ殿は心配しとらんよ」
「NO~!連れないのでス」
タダカツの『NO~!』が木霊するブラウケン山脈は岩と火山の山々で、その奥地にグランドトータスが生息している。
その火山への山登りの疲労と熱さが、戦う前からプレイヤーの精神を削る過酷な場所だ。
グランドトータスは名前の通り大きな陸亀で、その大きさは全高が20m近くもある大型モンスターだ。ただその分動きは悪く、攻撃自体は簡単に当たる。
そして問題はその硬さで、並みの攻撃力ではまさしく刃が立たない。そこで、今回タダカツには斧の代わりにハンマーも装備して貰った。硬いグランドトータスも打撃武器なら多少は良いダメージが入る筈だ。
オズさんにはパーティの指揮と前衛のサポートを、タダカツさんには攻撃とヘイト稼ぎを、ハルさんには道具、主に回復薬を沢山持たせて、戦闘しつつ臨時の回復役をして貰う。
そして、クウには戦闘をメインに回復する様に伝えてある。
其々が、周りに気を配り、自分の得意な事だけじゃなく、パーティ全体の為の行動を心掛ける練習もこっそり兼ねている。
後は擬態に気が付けば、遅れを取る事は無い筈だ。
それに、ハルさんも居るし、クウとの相性も良い。
そして、僕達は単純に対空戦闘が出来る僕とココ、そして回避が上手く攻撃力の有るツバメとパーティを組んだ。
ハルさんと一緒に居ない時のツバメとの連携の練習も兼ねてるのは内緒だ。
ケントの町でサンダーバードの討伐クエストを受けて、フィライト高原までギルドの馬車でやって来た。
「ここが、フィライト高原。気持ちの良い場所ですね」
青い空と緑鮮やかな草原が広がる高原地帯。遠くにはまだ誰にも登頂されていない切り立った岩山が見える。
ココは背伸びをして、座りっぱなしで固まった体を解す。
「うむ、空気が美味しい気がします」
ココと話しながらもツバメはちゃんと警戒していて、周囲を見渡してる。流石、こう云う所はハルさんと似ている。
「だね、これでサンダーバードや他のモンスターが出なければ、ピクニックに良さそうだけど」
「その、サンダーバードとはどの様なモンスターなのですか?」
手を翳し、遠くを見る様な仕草で空を見回してる。さっき遠視のスキルを使っていたので実際に遠くを見ているのだろう。
「ツバメは知らなかったっけ?全幅が10mを超える鷲の様な見た目の銀色の鳥だよ。雷と共に現れて、人や動物を襲い餌として巣に連れて行くんだ」
「UMAのサンダーバードその物ですね」
若い・・・って僕と1つしか違わないんだが、女の子がUMAを知ってるとはちょっと驚いた。
「良く知ってるね。まさにあれがモチーフだろうね。ただ雷属性の攻撃をしてくるから、気を付けて」
ツバメ、僕、ココの順番でフォーメーションを組んで、晴れ渡った高原を進む。
「しかし、これではただのハイキングですね」
サンダーバードの生息域に入って、15分。未だに巨鳥の姿が無く、ただの散歩状態だ。
「お弁当とか持ってくれば良かったですね~」
真面目なココも、気が緩んでいる。
「確かにそんな感じだが、味覚が無いから食べても美味しく無いんだけどね」
そう、『NLF』にはまだ味覚が実装されていない。何れは再現する予定だと何かのニュースに乗っていたが、どうなのだろか?
「なら、今度皆さんで一緒に何処か行きませんか?」
「それって、リアルでって事?」
ツバメはココに答えながらも警戒を怠らない。
「はい、何処か良い高原とか、キャンプなんかも良いですね」
「ココってアウトドア派だったっけ?」
以前のココはどちらかと言えば大人しいタイプだったので、インドア派のイメージだ。だからアーチェリーをやっている事にも驚いた。
「いえ、そう言う訳では無いのですが、折角こうして知り合えたのでもっと仲良くなれたらなと・・・」
「ココ殿はシン殿と仲良くなりたいのですね?」
「ふんにゃ!?」
(変な声だ)(変な声だ)
「そ、そんなんじゃ、にゃ!?」
(あ、噛んだ)(噛みましたね)
「先輩の事は知ってますし、私は他の方達とも仲良くなりたいんでしゅ!」
(おしい!)(最後で噛みましたね)
その後も色々言ってたけど、みんな住んでいる所がバラバラだろうから会うのは難しいかも知れないと告げたら、シュンとなったので無理かもしれないが、後で聞いてみようと云う事で落ち着いた。
ツバメがココを宥め終わった頃、空に暗雲が立ち込め雷が近付いて来た。
「先輩、これって」
「ああ、お出ましだね。みんな戦闘準備!作戦通りにやれば勝てるさ」
「雷の精霊、スパークバグよ。私達に雷の加護を、雷装!」
「風の精霊、シルフよ。私達に風の加護を、風装!」
「ありがとうココ」
キィィィーーーーーーッ!
上空から聞こえた、金切り声が響き、暗雲から巨大な怪鳥が現れた。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
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