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第23話 『ジークバルト』

第23話 『ジークバルト』


 僕は情報系クラン【英知の聖杯】の代表、ソニアと会っていた。


 そして今、僕達に付けられていた二つ名を聞かされて、愕然となっている。


 「二つ名って、もっと有名な凄い人に付くんじゃないんですか!?」


 「何を言っている、君達は十分に凄いし、有名人だよ」 


 「え~!?」


 「そうだ、お前達は有名人なんだぜ」

 

 僕がソニアさんに疑いの目を向けていると突然後ろから声を掛けられた。振り向くと其処には赤いフルプレートアーマーに身を包んだ大男が立っていた。


 赤い鎧と背中の紅い刀身の大剣が、その者を誰だか雄弁に語っていた。


 「【ストライク・エクシード】のジークバルトさん!」


 「おう!だが『さん』はいらねぇ」


 驚いて、それ以上何も言えなかった僕を置いて、ジークバルトは空いた椅子に座って、ソニアさんと挨拶していた。


 「なるほど、コイツが漆黒か。こうしてみると普通の魔術師だな」


 「そこが彼の良さだよ。それであれだけの個性豊かなメンバーを纏めているのだから」


 「確かにな」


 ソニアさんと機嫌良さそうに笑うジークバルトさん。有名人二人に緊張が増す。


 「あ、あのなんでジークバルトさんがここに?」


 「だからさん付けはいらねぇって」


 気さくな人なのか、だが、一般人にそれは難しい。


 「今から私が君と会うと話したら、付いて来たんだよ」


 「なに、噂の漆黒の魔導師様を見たかっただけさ。それに顔も繋げときたかったしな」


 ジークバルトさんは僕を値踏みする様に楽しそうな視線を送ってくる。

 

 「様って、やめて下さい。それに顔を繋げとくって?」


 「オレのクランは最強を目指してる。勿論その中でも最強は俺だがな。だから有望な奴が居たら声を掛けるのは当然だろう?」


 理由は分かるが、何故僕。


 「僕達は、そんなんじゃ」


 「何言ってやがる。漆黒の魔導師様と言ったら、そこそこ有名なんだぞ、シン様」


 わざと様を付けて話してる。


 困惑する僕は、悪戯っぽく口元を上げるシークバルトの意図をどうにか汲み取った。


 「僕の事はシンと呼んで下さい。様もさんも要りません」


 「仕方ねぇな、ならオレの事もジークで良い!」


 それから3人で話をして、僕達は第三異界のボス戦の話になった。


 「【春雷】はついこの間、【カリュオーン】を倒したんだろう?」


 カリュオーンとは、第三異界の第七階層に居るボスの名前だ。


 「ええ、2週間前くらいに」


 「何分掛かった?」


 「え、確か10分ちょいくらいだったかな?」


 「かーっ!これだよ」


 「全くね」


 2人は呆れる様に僕を見て、指差してきた。


 「「それが既におかしい」」


 2人一緒に言わなくても良いのに。


 「カリュオーンを初戦で10数分で倒したのは君達だけだよ」


 「うち等だって、20分弱は掛かったってのに」


 「いや、それは皆さん達攻略組の情報が有ったからであって・・・」


 「それでも、私達には無理だね」


 「俺達でもやっとだろうな」


 ジークは少し、いや結構悔しそうに、今なら余裕だけどな!と付け足してくる。


 最初カリュオーンを倒すのに掛かったのは15分。弱点の属性も場所も分かってた。効果の高い魔法も知っていた。だから僕達は苦戦しつつも1回で倒す事が出来た。そして、メンバーを変えて挑んだ2回目は12分だった。それがそんなに速いタイムだったとは。


 「詰まり、君達は第三階層のボス攻略に宛がわれて当然の実力があるって事さ」


 「なるほど、僕達が第三異界のボス担当の理由は分かりました、僕達【春雷】は今回の依頼を受けさせて貰います」  


 「そうこなくちゃな。そこでだシン、俺達とタイムアタックをやらないか?」


 「タイムアタックですか?」


 「ああ、俺達【ストライク・エクシード】と【春雷】で勝負と行こうじゃないか」


 不敵に笑うジークの頭をソニアさんが小突いた。


 「こら!そんな事して失敗したらどうするの?」


 「うちやこいつ等がそんなヘマはしねぇよ」


 「そうかもだけど・・・」


 「大丈夫だよ」


 「それに、お前もこいつ等の本気の実力が知りたいだろう?」


 (それは・・・確かに知りたい)


 「分かった、でも絶対に失敗しないでね」


 「わーってるよ!心配すんな!」


 2人は勝手に話を進めているが、俺達の了承は無視の様だ。


 「で、どうだシン?」


 「いや、失敗出来ないクエストなら時間が掛かっても確実に行きたいかなと」


 【ストライク・エクシード】は兎も角、僕達に其処まで信用を寄せてくれるのは嬉しい反面、期待が重過ぎる気がする。


 「ああ!?何言ってんだよ。やろうぜタイムアタック!俺達なら少々無理しても失敗しないって」


 ジークはそう言ってるが、カリュオーンは其処まで甘い敵じゃない。ちゃんと強敵なのだ。それこそ少しの失敗や運の無さで失敗してもおかしくない相手なのだ。


 「しかし・・・」


 「分かった!ならこうしよう」


 何か自信満々にジークが僕の肩を掴んだ。逃がさない様に捕獲された気分だ。


 「お前達【春雷】が勝ったら、俺達が何かやろう」


 「達って、私を勝手に巻き込むな!」


 「何かとは?」


 「だから巻き込まないでって!」


 「それは追々考えるが、俺達に出来る事ならなんでも」


 「なんでもじゃない!そんなヤバイ約束を勝手にするな!」


 ソニアさんの焦りは当然だと思うが、ジークは一向に気にしない。


 「大丈夫だよ、【春雷】が、と言うかシンがそんな変な要求する訳無いだろうがよ?」  


 ジークは何気に釘を刺して来たが、そんな言葉を聞かず僕は勝った時の要求を考えていた。


 「ほら~、もう何か考えちゃってる~」


 泣きの入るソニアさんと違い、勝つ気で居る僕にジークは満足そうに笑っていた。


 「さて、じゃあ一週間後にボス前で会おう!」


 ジークは元気に、ソニアさんは疲れきった顔で席を立った。


 「詳細はまた後日メールするからね」


 僕も立ち上がると握手を交わした。


 「分かりました」


 これで、もろもろ契約成立と云う訳だ。  


 「本番迄に、精々練習しとくんだな」


 「ジークも油断しないでよ!」


 カン、と鎧を小突いて浮かれ気味のジークを諌める。


 「分かってるって、じゃあなシン!」


 「はい、ではソニアさん、ジークもまた」


 「またね」


 「おう!」


 僕は2人と別れ、部屋を出様と扉を見るとそこにクウとココ、それにハルさんが此方を覗いていた。


 「なっ!?何してるの!」 


 「い、いや~」


 「えっと・・・」


 「コウちゃんが美人さんと会うからって、みんな気になちゃって」


 そんなんじゃないからと3人を置いて、下に降りるとオズさん、タダカツさん、ツバメの3人も居たので、呆れてそのまま今回の依頼と賭けの話をするのだった。

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