第22話 『三者会合』
第22話 『三者会合』
翌日の昼過ぎに、僕達は示し合わせて第三階層北の町『チョードル』に集まった。
リザードマンのオズに驚いているココを2人に紹介して、今日の予定を提案するつもりだったが、もう2人見慣れないい冒険者がハルさんとオズの後ろに控えていた。
「で、後ろの2人は誰?」
「うむ、では紹介しよう。タダカツ」
タダカツと呼ばれた赤く重い鎧と盾、背中に大きな盾を背負った、見た目は初老の戦士が前に出た。
高い位置のポニーテールの様なまげと豪快なもみ上げ、高身長で筋肉質、圧が強い容姿の男性だ。
ズン!
僕より身長が高く、体が大きいタダカツに見下ろされると、凄い圧にちょっとたじろぐ。
「ハ~イ、私の名前はタダカツ。見ての通りの盾戦士デ~ス」
僕やクウ、ココががっくりと崩れる。
ハルさんは年の功だろうか、まるで動じずにこにこしている。
タダカツは見た目と違って、とても明るいノリのおじさんだろうか?
「もしかして、タダカツさんはアメリカの人?」
「イエ~ス!でも、リアルの詮索は無しですよ~」
「ああ、ごめんなさい。余りの強い個性につい・・・」
「ふっふっふっ、良いです、良いです。後、オズと同じでさん付けは無しデ~ス」
「分かったよ、タダカツ」
フランクな態度が嬉しかったのか、タダカツさんは僕の手を取ってブンブンとにこにこで握手をした。
「で、そちらは?」
今度はハルさんの後ろの女の子を全員が見た。
「はい!私の名前はツバメと申します。師匠に助けられて、お仕えする事になりました。狼獣人の軽戦士です」
ピシッとした動きでハキハキと喋り、頭を下げる元気で真面目そうな雰囲気と少しの緊張が伺える。
「師匠ではないですよ~」
そして、師匠と呼ばれたハルさんはにこにことその事を否定している。
「何故ですか師匠!」
「私は、お友達が良いんです」
二人の間に何が有ったかは追々聞くとして、その場で自己紹介をして本題に入った。
「さて、ココ、ツバメさん、タダカツの3人に確認だけど、僕達とパーティを組むって事で良いのかな?」
3人は其々、頷いて同意してくれた。ただ少し問題が有る。『NLF』は6人パーティ制だのだ。
現在此処には7人、一人多い事になる。
「これは、もうクランだね」
「くらん?」
オズとタダカツ以外が頭を捻った。
「コウちゃん、クランって何?」
「クラン。ギルドとも言うね。クラブとか団体って意味かな」
オズが簡単に4人に説明してくれる。
「『NLF』にはまだクラン制度は有りませんが、独自にコミニティを作って名乗ってますね。攻略組最強の【ストライク・エクシード】や情報&考察組最大の【英知の聖杯】が有名です」
「聖杯の掲示板は私も見てマ~ス」
クエストやボス戦はパーティ単位でないと、ダメだが、通常マップなら2パーティに別れて、一緒に行動すれば良いので僕達は7人で初心者のココとツバメのポータル巡りをしながら、ゲームの基礎知識や戦闘での立ち回り等を教えながら、第一異界、第三階層から回る事になった。
タダカツさんは第二異界まで進んでるので、申し訳ないところだが、快く付き合ってくれている。
「オズやみんなとのパーティプレイは楽しいで~ス」だそうだ。
僕とタダカツさん、クウ、ココ組とハルさんとオズさんにツバメ組の二手に別れて第一階層を巡る。
一番遅れているココが申し分けなさにしていたが、クウやハルさん、ツバメも含めた女子・・・うん、女子同士で話す事で少しづつ打ち解けて、そんな雰囲気も薄らいでいる。
「タダカツは『NLF』は製品版から?」
「イエ~ス、やっと時間が出来たので始めましタ~」
「盾役が戦士のオズさんだけだったので、タダカツが入ってくれて助かります」
「私は専門家ですからネ~、お任せあれ~デス、私がみんなを守りますヨ~」
頼もしい前衛を得ても僕達は焦らず、主要ポイントを巡り、クエストをこなし、世界を巡った。
兎に角各所の移動用ポータルの登録は最重要事項だ。
そして、約1月後第二回イベントも終わり、第三異界、第七階層のボス『カリュオーン』を倒し、第四異界に辿り着いた僕達が始まりの町『エデン』の周りを探索している途中、ニュースが飛び込んだ。
『ストライク・エクシードと英知の聖杯、第四異界を隔てる壁の謎を解く!』
このニュースは少し停滞気味だった『NLF』に活気を取り戻した。
そして、ニュースが流れてから4日後の土曜日、この2クランから全プレイヤーに重大な依頼があった。
一週間後の夜、21時に全てのボス部屋に突入して、ボスを攻略して欲しいと云う物だった。
大ボス、中ボスは1箇所に付き8つの部屋が有る。詰まり第四異界までのボスは6体。掛ける8部屋なので48パーティが必要なのだ。
この申し出を受けたパーティから選抜、確実に勝てそうなボスに其々が宛がわれた。
僕達【春雷】も一応、参加を表明したら第三異界のボス『カリュオーン』を倒して欲しいというメールが返って来て驚いたものだ。
『始めまして、【英知の聖杯】の代表ソニアと言います。今回は応募ありがとう御座います。【春雷】さんには第三異界のボスをお願いしたいと思います』
『始めまして、【春雷】のシンと言います。まさか第三異界を任されるとは思わず、驚いています。僕達の担当で間違いないでしょうか?』
『ありがとう御座います。担当は間違いないですがそうですね、一度会えませんか?そこで詳しくお話したいと思います』
(有名クランのマスターが僕達に会いたい?)
まぁ、折角の有名人とのコネが出来るかもしれないという打算も有って僕はソニアさんの申し出を快く了承した。
ゲーム内時間で1時間後、第四異界、始まりの町『エデン』。その町に有る食堂の2階に上がると其処には既に1人の女性が座っていた。
この手の場所は、体力回復等の食料を取る場所でも有るのだが、まだ味覚が実装されていないので、食べた気がせず、不人気なのだが、こういった話し合いの場所として重宝していた。
その女性は僕を見ると立ち上がり。手を上げる。
「始めまして、私が【英知の聖杯】の代表ソニアだ。君がシン君で間違い無いかな?」
確かに、聖杯のソニアだ。動画や掲示板の画像で見たソニア本人が其処にいた。
白に蒼の刺し色が入ったローブを纏う癖毛ショートの銀髪、碧眼で眼鏡のエルフだ。
「呼び捨てで構いませんよ。【春雷】のシンです。よろしくお願いします」
「そう、畏まらないでくれ」
ソニアは僕に椅子を勧めると自身も座って、僕の事をジロジロと見た。
「あの、なにか?」
アバターとは言え、見た目年上のお姉さんにジロジロ見られるのはむず痒い。
「いや、失礼した。【春雷】さんは他のパーティの様に我先にと攻略を進めるのではなく。寧ろじっくり確実に準備をして攻略をしているよね。しかもこの世界を楽しむ様に、ゆっくりと・・・」
「今でこそメンバーは7人になりましたが、最初僕達は少数でしたから」
「ああ、ベータテストの時は3人だったね」
情報組のトップはそんな事まで知っているのか、と驚かされるが、これは僕達が知らないだけだと呆れ気味に教えられた。
「それに、折角の美しい世界です。楽しまないと」
「美しい世界か、確かにその通りね。この世界を作った人は優しい人だと思うわ。これだけ美しい世界を作ったんだもの・・・」
ソニアさんの目が優しく揺れる。
「僕もそう思います。リアルと同じかそれ以上に美しいと」
自由に動けないお祖母ちゃんには、掛け替えの無いものかも知れない。
「しかし、君は落ち着いてるね。雰囲気は見た目通りなのに」
「そうですか?」
「ああ、流石【春雷】のブレイン。漆黒の魔導師シンだね」
「え、なんですかそれ?」
思わず変な顔になっていたのだろう、ソニアさんがくすくすと笑っている。
「君は巷では、そう呼ばれてるのだよ。漆黒の魔導師シンとね」
「あう、そんな・・・僕達は・・・」
ソニアさんは楽しそうに指折り数えていく。
「美少女忍者ハル、侍リザードマンオズ、滅殺天使クウ・・・」
(え?・・・って、クウ・・・)
「製品版からのメンバー、ウィリアム熊ココ、アメリカン侍タダカツ、ハルの忠犬ツバメと実に個性的じゃないか」
僕は頭を抱えて机に突っ伏した。
「なんですか、それ!?」
僕達は良いが、クウとタダカツ、ツバメの3人は遊ばれてるだけだと思う。
助けを請う様な目でソニアを見たが、答えは最悪だった。
「君達【春雷】のメンバーの二つ名だよ」
(やっぱりかーーー!)
そんな僕を見て、ソニアはくすくすと楽しそうに笑うのだった。
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