1―2話 効果の秘密は、秘伝のお釜パワー!?
「おはようございまーす!!」
「あ、あら…イブちゃん!?」
「ど、どうしたの、こんなに早く来て!?」
何故か…驚きながら、言うカップチーノさん。
カップチーノさんは、この『魔法のお釜』の店主です。
「キラキラ―」 「キラキラ―」
「キラキラ―」 「キラキラ―」
自然のカーテンで覆われた窓ガラスの僅かな隙間からは、日差しがキラキラと差し込んで、薄暗い店内を照らします。そんな…程良く暗い店内の机には、色々な実験器具や謎の液体などなどが置かれています。魔法薬は、回復薬だけじゃありませんからね。
カップチーノさんは、相変わらず…
時間を見つけては、新しい魔法薬の研究をしているそうですね。
「回復薬が無くなったので、買いに来ました!!」
「そ、そうなのね…」
「いつも、私のお店で買ってくれて有り難うね!!」
「それは、勿論ですよ、カップチーノさん」
「カップチーノさんが作った魔法薬は、他のお店よりも効果が良いですからね!!」
「アラっ…」
「誉めてくれて、嬉しいわ。でも、誉めても何も出ないわよ♪」
意気揚々に言うカプチーノさん。
「そうだ、オマケに肌がピチピチになる魔法の美容薬も入れておくわね!!」
「…」(私)
「私も愛用している物よ。滅茶苦茶、お肌がピチピチになるわよ!!」
「イブちゃんも、良かったら使ってみてね♪」
「有難うございます…」
そんなカップチーノさんは、無精髭を生やしたオッサンです。
因みに…私は、オマケ欲しさにお世辞を言った訳ではありませんよ。
本当に、カップチーノさんが作る魔法薬は、他のお店の魔法薬と比べて効果が違うのです。
カップチーノさんは、その理由をこのお店に代々受け継がれている秘伝のお釜のお陰と言っています。本人曰く…
お釜パワーだそうですね。
最初…聞いた時は『!?』と思いましたけど、それはまた別の話です。
まぁ…そのお釜パワーのお陰か、良質の魔法薬を取り揃える『魔法のお釜』は、中々…知名度が高く、町の人達からは『路地裏の名薬局』と呼ばれているとか。そして、店主であるカップチーノさんは『路地裏の天才調合術師』と呼ばれています!!
(路地裏の天才調合術師か…)
私も…何か格好良い感じで、呼ばれたいですね♪
騎士として、名を揚げて有名になると『異名』も付きますからね。
なので…これは、私の今後の頑張り次第ですね。
「…」(私)
(まぁ…その異名の事は、さておきまして)
「あの~、カップチーノさん…」
「もう少し、お店の外壁の蔦や植物とかの手入れをした方が良いんじゃないですか。もう壁と植物が同化し過ぎて…お店があるのか、どうかも分からない状態ですよ」
私は、言う。
来店を重ねる度に、徐々に植物達に侵食されているお店を見て…
前々から心配していましたので。
「まぁ、そうね~」
「最近…魔法薬を作る事に夢中で、全然手入れをしてなかったからね。でも、別にお店が消えた訳じゃ無いから、特に気にしてないわよ♪」
「はぁ、そうですか…」
「困った事なんて、全然無いわ!!」
「むしろ、その方がより自然に囲まれている感じがして、とても癒されるわよ~♪」
「はぁ、そうですか…」
「てかてか私、てっきり…もう、午後だと思っちゃったわよ~!!」
「焦っちゃったわ~♪」
「えっ、何でですか…!?」
カップチーノさんは、急に不思議な事を言う。
私は『!?』になります。
「だって『午後の騎士天使』って呼ばれるイブちゃんが、午前に来るんだもの~!!」
「「えっ、午後の騎士天使―!?」」
(何ですか、その名前…)
「あら、知らないの…?」
「町の人達は皆、イブちゃんの事をね~『午後の騎士天使』と呼んでいるのよ」
「「えっ、そうなのオオ!!」」
「「で、でも、何で…!?」」
「それはね―」
カップチーノさん曰く…
私は、元々可愛いらしい少女の姿をしている反面、騎士として…とても凛々しく強いは姿は、そのギャップも相まって、町の人達の間でも、それなりの話題になっているそうです(一部、誇張表現有り)
そして、何故『午後』なのかと言いますと―
「午後の町に、優雅に現れた可憐な少女が…沢山のパンを抱えて食べ歩く姿は、町の人達にとても深い印象を与えたみたいね~♪」
「…」(私)
カップチーノさんは、言う。
つまり『午後』になっちゃった理由は…午後の町で、買い食いする姿が、町の人達の注目を集めたからなのでしょうか。
「因みに…私服姿のイブちゃんは、必ず午後にしか現れないからね~。そんな貴方が午前中に町をウロウロしていると、町の人達がビックリしちゃうわよ~♪」
「は、はぁ…」
確かに…私は、午後によく町中を散策(買い食い)をしていますけどね。因みに…休みの日は、お昼過ぎまで爆睡しているので、活動を始めるのが、必ず午後からですからね。そして…朝食と昼食を兼ねて買い食いをしているので、必然的に抱えるパンの量が多くなるのです。
(しかし、そんな理由で呼ばれているなんて…)
(それじゃ、只の『午後にパンを買っている人』なんじゃ…)
「そうそう『午後の大食い天使』って、呼んでいる人もいるわよ!!」
(((騎士が無くなった!!)))
「フフフフ…」
「でも、凄いじゃないの…騎士団に入って、その早さで『異名』が付くって結構、異例だと思うわよ。とても、尊敬しちゃうわ!!」
微笑みながら言うカプチーノさん。
しかし、それは尊敬や畏怖とは、程遠い感じ…
普通に、私をからかっているだけでした。
「ムムムムムム…」
(私だって、いつかは―)
「「「「「ボブウウウっ―!!」」」」」
「「!!」」(私とカップチーノさん)
(モクモクモクモク…)
(モクモクモクモク…)
「アラっ、嫌だ!!」
「この薬品じゃ、やっぱり駄目だったのかしら…」
近くの机に置いてあったビーカーから突然、謎の煙が上がります。
何かの薬品を調合していたのでしょうか。カップチーノさんは、私と話している間でも、手を止める事は無く、何かの魔法薬を作っている所でした。
相変わらず、研究熱心な方です。
それで今日は、どんな魔法薬を作っているのでしょうか…
いや、私は何となく分かっていました。
「ごめんなさい、イブちゃん」
「少し煙たいわよね。今、窓を開けるわ!!」
「「キィィィィィィィィ―、何なのよ、この蔦アアアア」」
「「全然、窓が開かないわアアアア!!」」
頑張って、窓を開けようとしているカップチーノさん。
しかし、蔦が絡まり窓はビクともしません。
「…」(私)
「ハァ、相変わらずですね…」
「もしかして、あの魔法薬を作っているんですか?」
私は、蔦に絡まったカップチーノさんに言う。
無理やり、窓をこじ開けたみたいです。
「ええ、そうよ…」
「私の夢である究極の魔法薬をね!!」
目をキラキラとさせながら言うカップチーノさん。
「まぁ、失敗続きだけどね…」
「前例が無い魔法薬だから、完成するかどうかも分からないわ。だからね…只の暇潰しも含まれているわ♪」
「ふ~ん…」
(究極の魔法薬ですか…)
「本当に完成すれば良いですね」
「でも、その時は…お店の名前を変えないといけないですね」
「それは、どうゆう意味よ♪」
カップチーノさんは、微笑みながら言う。
「い、いえ…何でもありません(ゴホ、ゴホ、ゴホっ!!)」
私は、煙のせいで咳をしている振りをして、誤魔化す。
「!!」(カップチーノさん)
「そうそう、その魔法薬の研究の過程で、つい先日…面白い魔法薬が出来たのよ。イブちゃんも、きっと興味があると思うわよ!?」
カップチーノさんは、意気揚々に言う。
「えっ、どんな魔法薬ですか…!?」