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1―4話 恋の相談ならお任せ下さい!! ~相談料は、パンでも可!?~





「あっ、バルモ(先輩)じゃん!!」


「おう、イブか…」



公園のベンチに座っていたのは、バルモでした。


その両手には、沢山のパンを抱えています。これは余程、お腹が空いているのでしょうか。しかし…その割には一口一口ゆっくり食べています。そして、そのパンを食べる顔にも元気が無い。折角…買ったパンが、あまり美味しくなかったのでしょうか。




「ああ丁度、良かった」


「お前も、このパン食べるか?」



私にパンを勧めるバルモ。




「えっ、良いんですか!?」

「じゃあ、いただきま~す」


(ムシャムシャムシャムシャ…)




「「いや、凄く美味しいじゃん!!」」




「ああ、そりゃまぁ美味しいよ…」




「…」(私)





「でも、どうしたの…?」


「こんなにパンなんて買って?」


パンを食べながら、聞く私。




 


「いや、それがな…」












「ヒュウウウウウウウウウウウウウウ―」






「ヒラヒラ…」 「ヒラヒラ…」




「ヒラヒラ…」 「ヒラヒラ…」






公園の中を、午前の爽やかな風が吹き渡る。



上空に舞い上がった枯れ葉は、降り注ぐ日差しに共に



またヒラヒラと舞い降りてくる。






まるで、天から誰かの羽根が落ちてくるみたいです。







私は細く長い髪を靡かせながら、何となく空を見上げますと



遥か空高くには―



天使の形をしている雲がありました。










(あっ、バルモの方に耳を傾けないと…)







聞くとー


バルモは、パーシャで人気のパン屋さん『小麦の魔法使い』の看板娘のミルフィールさんに片想いをしているみたいですね。私もミルフィールさんの事は知っています。町では、結構な美人として有名でして…



そのモデルの様なスタイルとルックス


そして、明るくハキハキした好印象な性格


誰に対しても、優しく丁寧な接客姿勢などなど




それらは、町の人達(主に男達)の心を鷲掴みにしているとか。

多くの人達が、彼女の虜になっているそうです。



「ふ~ん…」




バルモも、その中の1人だったとは…


これは中々、競争率が高いですね。


そんな彼女ですが、町の人達からは『パン屋の天使』と呼ばれているみたいです。本当に何で、この町…いや、この王国の人達は、何でもかんでも天使と呼びたがるのでしょうかね。全く…良いライバルですね。



(そう―)



「天使ならば、ここにもいるじゃないの!!」



午後の騎士天使と呼ばれている私が―

私は、キメ顔でバルモに言う。




「ああ、そりゃまぁ…ここは、天使ヶ丘公園だからな」


「天使(の像)は沢山、置かれているけどな」



バルモは、首を傾げて言う。




「…」(私)





「それで、今の進捗状況はどんな感じなの!?」

「お友達程度にはなったの!?」



「いや、進捗状況って…まだ、始まってすらいないよ」


「向こうの認識は、只の常連さんって感じだな。休みの日は、必ず『小麦の魔法使い』でパンを買っているからな。まぁ…顔くらいは、覚えられているとは思うけど」



「ふ~ん…」



「そして、いつも見栄を張って…」

「まぁ…目立とうと思って、ついパンを買い過ぎちゃうんだよ」



「えっ、見栄を張る所を間違えてない…?」




「…」(バルモ)




「一応、俺なりの考えもあってだな…」

「パンを沢山買えば、ミルフィールさんが『いつも、こんなに沢山のパンを買うなんて、パンがとても好きなんですね!!』とか話しかけてくるかもしれないからな。それをキッカケにして、話題を広げていこうと思っているんだ」




「はぁ…」


(凄く回りくどい…)



「まぁ…今の所、ミルフィールさんは『お買い上げ有難うございます。お釣りの○○Gです』くらいしか、話してこないんだけどな」




「…」(私)


(うん、そうだと思いますけど…)



「そのさぁ…」

「パンから恋愛の話題に広げるのは、中々大変なんじゃないの!?」




「でもでも…」

「例えば、こんな感じになれば良いなと思ってるんだ。イブ…ミルフィールさん役をやってくれるかい!?」


バルモは、私に台詞を書いたメモを手渡す。



「えっ、私がやるの!?」


「パンを食べながらで、良いからさ!!」

「自然な感じで、頼む!!」



「は、はぁ…」









        ~以下は、バルモと私の実演~







《題名》


バルモと小麦の魔法使い



《出演》


バルモ役 バルモ本人


ミルフィールさん役 イブ





「いつも、こんなに沢山のパンを買うなんて…」

「パンがとても好きなんですね!!」


ミルフィールさんは、パンを頬張りながら言う。



「そ、そうなんですよ、俺、ミルフィールさんが…じゃなくてパンが大好きで大好きで…あと仕事も騎士をしているからさ。身体も結構動かすから、凄くお腹が減るんだ!!」


バルモは、緊張しながら言う。



「まぁ、騎士なんですか!!」

「それは、凄いですね!!」


ミルフィールさんは、食パンにジャムを塗りながら言う。



「俺の名前はバルモって、言うんですけど…」

「今度、良かったら…」




「良かったら…」






(んっ、良かったら…何なの!?)





「…」(バルモ)




「「うううう~」」

「「緊張して、そんな事とても言えないよ~(泣)」」



(あっ、勝手に自滅した…)



「いや、ダメじゃん…」



ベンチで頭を抱えるバルモに言う私。





「いや、まだイメージトレーニングが足りないからだ!!」

「しっかりと、今の流れを練習して…」




「練習して…」





(んっ、練習して…何なの!?)





「ハァ…」

「やっぱり、このままパンを買い続けても何も変わらないんじゃ…それに本当は俺、パンよりもスパゲッティの方が好きなんだよな」


急にカミングアウトするバルモ。



「俺…何で、騎士になったんだろ」

「こんな事ならば、騎士じゃなくて、パン職人になるべきだった。そして『小麦の魔法使い』で働いていれば、もしかしたらミルフィールさんとも仲良くなっていたかもしれない…」


「イブ…俺は、一体どうすれば良いんだろうか!?」




「…」(私)



「アンタさ、騎士なんだから…少なくとも他の男共よりかは、一歩リードしている事は、まごうことなき事実なのよ。だから…もっと、自分に自信を持って積極的にガツガツいきなさいよ。少なくとも相手の動向を待っているより、アンタの方から話しかけるべきよ」



「は、はい!!」



「バルモ、アンタは最終的にミルフィールさんとゴールインして、幸せな家庭を築きたいんでしょ。その必要な物は、もう大体揃っている…」


「騎士は皆の憧れの仕事で狭き門だから、経歴は100点満点。そして…金銭的な面でも勿論、騎士は高給だから…家族をしっかりと養っていく事が出来る」




そう、だから―



「あと必要なのは、相手を誘う勇気…それだけよ」






「そ、そうか…」

「よし…じゃあ、次の休みの日にでも頑張って、話しかけてみようかな」


「んっ、あれ…パンが無い!!」


バルモは、驚きながら言う。

気付けば、私はパンを食べ終わっていました。







        ―さぁ、相談はここまでよ―






「もう1回、パンでも買ってきなさい」

「1日2回は、目立つわよ…いや、その必要はもう無いわね」


「あっ、はい!!」(バルモ)




パンを食べ終えた私は、バルモにそれっぽく言って立ち去ります。










「フンフフ~ン♪」


(あ~、パンが美味しかった)


私は、どっちかと言うと…バルモの相談よりもパンに食べる事に夢中になっていましたね。私は、鼻歌を奏でながら歩いていく。




日差しは、空高く昇り始める。


次第に、いつもの見慣れた景色になっていました。




公園を抜けた私は、町中の人混みの中に入る。

少し早いお昼を食べた私は、次に何をするか考えていました。

あっ、そうだ…ちょっと早いですけど、ルイアに連絡しようかな。




(ゴソゴソゴソゴソ…)



私は、懐から魔法のメモ帳とペンを取り出します。

私は、メモ帳に『ルイア、今何してる?』と書く。

すると…メモ帳に『今、丁度トレーニングが終わった所よ』と文字が浮かび上がります。そう、これは書いた文字が相手のメモ帳にも浮かび上がる仕様になっているのです。そして、相手が私宛に文字を書けば、私のメモ帳にその文字が浮かび上がりますよ。



これは『MINE(マイン)』と呼ばれています。



電話よりも、気軽で便利な連絡手段ですね。


王国の人達は皆『MINE』を使ってますよ!!




(カキカキカキ…)



『それじゃあ、いつも通り教会で待っているね♪』


『分かったわ!!』(ルイアより)




流石、ルイア…返信が早い。

休みの日は、いつも小高い丘の頂上にあるパーヴェル教会に行っているのです。ルイアと2人でね。



では、教会に向かいますか。














※少しでも、面白いと感じた方へ~

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