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【書籍化・コミカライズ】期間限定、第四騎士団のキッチンメイド~結婚したくないので就職しました~  作者: 皿うどん
貴族学校のメイド令嬢

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第二のはじまり

「ダリア家からの連絡です。王都に少数の影あり。大半は王城でいまだ捜索中」

「第四騎士団に見張りをたて、王城を探索しはじめました!」

「使った秘密通路の存在は知らないようです」


 みんながバタバタと動いているあいだ、邪魔にならないように、ソファの端っこに座る。

 忙しそうなみんなに状況を聞ける雰囲気でもないので、せめてお茶でも淹れることにした。

 キッチンに立ち、なにがあるか確認する。


「ロアさまはなんでも好きに使っていいと言ってくれたけど、メイドさんに聞いてないから、どうしても気が引けるなぁ……」


 美少女メイドの主はロアさまみたいだけど、勝手にキッチンのものを使われて、いい気はしないだろう。


「エドガルド様は砂糖たっぷりのロイヤルミルクティー。ロアさまとアーサー様とロルフ様はブラックコーヒーだけど、疲れてるロルフ様は甘いものを飲みたいだろうな。レネ様は飲み物より、ガッツリご飯を食べたい気がする」


 それぞれの好みはわかっているけれど、相変わらず飲み物を入れるのはそんなに上手ではない。


「あっ、飲み物の瓶がある! よかった!」


 注ぐだけのコーヒーと紅茶は本当にありがたい。ついでに冷蔵庫の食材を借りて、ご飯を作ることにした。

 いまからまた移動するかもしれない。せめて食べられるときに食べてもらいたい。


「メイドさん、すこし使わせてもらいます!」


 冷蔵庫を開けて、ソーセージや卵、野菜を取り出す。

 ゆで卵を作っている間にソーセージを茹で、レタスを洗ってちぎる。バケットを軽く焼いて、切れ目に具を入れていく。

 食べやすい大きさに切って、マスタードとマヨネーズをかければ完成だ。

 大きなお皿にサンドイッチを盛り付け、テーブルに運んだ。


「みなさん、お腹が空いていたらどうぞ。ずっと走っていて疲れたでしょう」

「ノルチェフ嬢……そうだな。ちょうど一段落ついたところだ。みなで食べよう」


 みんなの前に、飲み物の入ったカップを置いていく。


「作業を中断させてしまって、すみません。何かしながら食べられるようにサンドイッチにしたので、どうぞ、そうしてください」

「いや、休憩を忘れていた。思い出させてくれてありがとう、ノルチェフ嬢」


 微笑んでみせるロアさまの顔色は、やっぱり悪い。みんな夜中に起きて、警戒しながらずっと走ってここまで来たんだから、当たり前だ。

 カーテン越しの窓からはうっすら明かりが差していて、夜明けが近いことがわかる。


「もう少しして落ち着いたら、ノルチェフ嬢にもきちんと説明する。待っていてほしい」

「それは後でいいですよ。エドガルド様、おかわりはいかがですか?」

「ください」


 そう思って、ミルクティーを五杯分くらい持ってきている。ロルフにも同じものを入れると、ほうっと息をついた。


「あー、甘いのが染みわたる……疲れるとたまに甘いものがほしくなる時があるんだよ。さすがアリス、俺の好みも覚えてくれてるんだな」

「コーヒーも用意しているので、お好きなほうを飲んでくたさいね」


 レネにもお茶を渡すと、口の端が汚れていることに気付いた。


「レネ様、ついてますよ」


 ちょっと失礼して、マヨネーズをナフキンでぬぐう。


「はっ、恥ずかしいことしないでよね! ボクだって気付いてたし!」


 赤くなったレネが微笑ましい。乱暴に口をぬぐい、照れ隠しのように大きく口を開けてサンドイッチにかぶりつくレネは、一番男らしい食べ方をしている。


「ノルチェフ嬢、私にもついてしまいました。取ってください」


 振り返ると、大きなハムをべろんと口の横につけたアーサーがいた。


「えっ……ふふっ、あははっ! それ、どうやってつけたんですか?」

「頑張りました。いまも落ちないように微妙に顔を傾けています」

「や、やめてください!」


 本当に久々にお腹を抱えて笑った。

 ハムを落とさないようににじり寄ってくるアーサーがおかしい。笑いながらナフキンでハムをつまみ上げると、アーサーがそのハムを食べてしまった。

 アーサーらしくない行動に驚く。


「ノルチェフ嬢が作ってくれたものですから」


 張り詰めていた空気が、アーサーのおかげで、いい意味で緩んだ。


「私もいただきますね」


 端っこのソファに座って、サンドイッチを頬張る。甘いミルクティーとしょっぱいサンドイッチの組み合わせは、とてもおいしい。

 警戒はどうしても消えないけれど、みんなで笑ってご飯を食べることが出来るなら、きっと大丈夫だ。


「お下がりください」


 アーサーが機敏に立ち上がる。剣を抜くと同時に、ドアがノックされた。さっと緊張が走る。

 立ち上がったロアさまがわたしの前で剣を抜き、その前にアーサーが出る。背後には、いつの間にかレネがいた。

 動くとみんなの邪魔をしてしまう。固まるわたしの前でドアが開く。


「遅くなりまして申し訳ございません。ただいま戻りました」


 美少女メイドが素早くドアを閉め、優雅に膝を折る。


「クリスか。収穫は?」

「ご報告いたします」



第二章が始まりました。

よろしくお願いします!

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