~measure ability~
かなり短めですが、キリをよくするために投稿します。
ケンが作ってくれた昼飯は普通に美味かった。卵とキノコをフライパンの上でからめたパスタという非常に女子力の高いものが出てきた。食欲をそそる香りに濃すぎず薄すぎないちょうどいい味付け、文句なしだ。本人は簡単なものだと言っていたけど、あれ程のものをさらりと出せる男子大学生は中々いないんじゃないか?
さて、昼食を終えた俺達は再び市街地へやってきていた。目指すは市役所、少し離れたところにあるらしく、20分くらい歩いた。
中に入ると受付の女の人が笑顔で迎えてくれた。平日の昼下がりということで、他に人はあまりいない。
「いらっしゃいませ。ご用件は?」
「この人の竜人登録をお願いします。」
特に待ち時間もなく案内されてケンが用件を話す。ケンの名前、住所、電話番号といった個人情報を用紙に記入し、「契約竜人」の欄に俺の名前を書いた。
「牙竜院ケン様、アナマナ様ですね。主従契約を行います。よろしければ、竜人の方の潜在能力をお測りすることができますが。」
「ポテンシャル?」
「はい。爪や鱗などの貴女の身体の一部から遺伝情報や表面硬度、残存魔力などを読み取り、戦闘における能力の善し悪しを測定します。といっても、あくまで目安程度ですけど。」
つまりあれか、異世界転生お決まりのイベントの”魔力測定”ってやつか。ファンタジー世界に行った主人公がよく冒険者ギルドでやるやつ。
「へぇ、面白そうだな。参考にもしたいのでぜひお願いします。」
「はい。では、サンプルをこちらのケースに入れてください。」
身体に力を込めて竜人化する。ボンッと腕が剛腕に変わり、腰から尻尾が伸びて頭にツノが生える。左腕の鱗を一枚掴んでブチッと抜いた。音は大きいが痛みはそれほどでもない。ムダ毛を抜いた時と同じような感覚だ。
抜いた鱗を受付の人が差し出してくれたシャーレのようなケースに入れる。受付の人はそのケースを受け取ると、パソコンの隣に置いてある電気ポットみたいな機械に入れた。
「あの、ひょっとしてこの場で結果が出るんですか?」
「はい、あと2分程お待ちいただければ。」
「そんなに早いんですか?」
「はい。遺伝情報といっても個人を特定するDNA鑑定程隅々まで調べるわけではありませんし、サンプルの表面から読み取れる情報を、これまで蓄積された竜人のデータと照らし合わせて相対的な数値を出すので、そんなにお時間はいただきません。」
おお、めちゃハイテクだ。俺を生み出したクローン技術といい、少なくとも生物学分野ではこの世界の方が進んでいる。
そうこう言っている間にも、すでに機械は測定を完了させて、ガーッと印刷機から測定結果が出てきた。
「お待たせしました。こちらがアナマナ様の能力値になります」
ほう、どれどれ……
名前:アナマナ
属性:闇・炎
生命力:108
攻撃力:130
防御力:95
魔術攻撃:80
魔術防御:85
俊敏性:102
「わっ、すごい! 高水準な能力だね!」
用紙に印刷された俺の測定結果を見てケンが喜ぶ。竜人について詳しい彼から見てこの結果は良い方らしい。主人であるケンが喜んでくれるのは素直に嬉しい。
ただ…この数値の並び、すごく見覚えがあるぞ。具体的には前の世界で遊んでいたゲームで。もっと具体的に言えば某紅白のボールでモンスターを捕まえるゲームの、ネット対戦の王者と言われたあいつだ。俊敏性、多分素早さのことだろうけど、その数値が”102”ってところが非常に印象深い。
どういう因果だおい。確かにあのゲームは好きだったけど、あいつはそこまで好きってわけじゃなかったぞ。どういう繋がりがあって俺があいつと同じ能力値になってんだ?
「典型的な攻撃型だね。攻撃力と俊敏性が高い、でもそれでいて生命力と防御力と魔術防御の数値も低くないから並み以上の防御も確保されてる。一番低い魔術攻撃の数値も80あるから、魔術に頼った戦術もとれる。すごい無駄のない優秀な能力値だよ。」
用紙を眺めながら呟くケンの解説がまんまあいつのネット上での評価で苦笑してしまう。色々言いたいことはあるけれど、ケンが喜んでくれるなら良しとしよう。
あと見逃していたけど属性は炎と闇と書いてある。炎属性持ちということは、この季節にセーターを着ても暑さが苦にならないことに関係しているのだろうか。闇属性であることの影響はまだ分からない。夜目が効きやすいとかかな?
「ケン、攻撃型というのは何だ?」
「竜人の戦いにおける戦闘スタイルのことだよ。能力値の長短で大体決まってくるんだ。高いスピードと攻撃力で攻める攻撃型、相手の攻撃を受け止めて反撃することに長けた防御型、高い生命力で粘り勝ちを狙う持久型、能力にムラがないバランス型の四種類に分けられるんだ。」
「…さっきから思ってたんだが、随分竜人のことを戦闘力という部分で評価するんだな」
危険とはいえ、せっかく超人的な力をその身に宿した存在が人間の隣にいるのだから、もっとこう、生産的だったり実用的な目線で分析されてもいいものなのに。
「そこはほら、やっぱり竜人は人間を遥かに超える能力の持ち主なわけだし、いざという時のためにどうしても戦闘能力の分析が優先されてしまうんだよ」
つまり、社会において人間が学歴や職歴で評価されがちなのと同じように、竜人は戦闘能力の高さを社会から見られているというわけか。この世界では竜人による犯罪も絶えないみたいだから、そうなってしまうのも仕方ないのか。
「牙竜院様、アナマナ様。契約の手続きを進めさせていただきますね。」
おっと、少し能力について考えすぎてしまったようだ。
「この後アナマナ様は別室にて簡単な健康診断を受けていただきます。その間に主人である牙竜院様には注意事項のご説明と、証の発行をさせていただきます。ここまででご質問はございますか?」
「いえ、大丈夫です。」
「では、牙竜院様はこの場でお待ちいただいて、アナマナ様は2階に上がって診察室の方へお進みください。」
市役所に診察室があることに少々違和感を覚えるも、こっちの世界とあっちの世界では常識が違うのだと納得する。ケンと別れ、指示された通りに2階の診察室へと向かった。