第16話 大変なことになってるみたいだね
『君の学校、大変なことになってるみたいだね』
遠足の翌日。
前日の疲れで、二度寝しかけていた俺はアマギゴエさんからのメッセージで起こされた。
寝ぼけまなこをこすってスマホの画面を見ても、意味が分からない。
『大変なことって何ですか?』
『学校に行ってみれば分かるよ。……掲示板を見てみな?』
嫌な予感が急速に膨らみ、眠気が一瞬で吹き飛んだ。
三人の彼女と付き合うなんてことをしている俺には、『大変なこと』という言葉がどうしても引っかかる。
もしかすると俺たちの関係に関わるものなのかもしれない。
そんな不安が急速に膨らむ。
俺は慌てて着替えを済ませると、朝食もそこそこに学校へ向かった。
学校に着くと、アマギゴエさんに言われた通り掲示板が立つ中庭へ向かう。
……ん?
そういや、なんであの人は俺の学校で起きたことを知ってるんだ?
もうちょっと遅い時間なら誰かがツイッターに投稿したりして、知ることはできるんだろうけど、あの時間だと登校している人はほとんどいないはずだけど。
もしかすると、最近彼女が三人もできたなんて俺が言ったから、実はアマギゴエさんが『ふざけるな』なんて怒っててからかわれたのかな?
でも、逆にその方がいいのかもしれない。
メッセージを確認した直後に感じた不安に比べると、からかわれるぐらいで済むなら安いもんだと思う。
――けれど、掲示板が立つ場所が見えてくると、そんな楽観的な考えは吹っ飛んだ。
掲示板の周りには生徒がひしめき合っていた。
こんなことは今までなかった。
むしろ大事なお知らせもスルーされることが多くて、生徒会や専門委員会が『掲示板を見てください』としつこく言わなければならなかったのに。
それなのに、この人だかりだ。
「ほんとかな?」「どうだろ? でもほんとだったらまずいよね」「うちの学校新聞は結構しっかりしてるからね」
そんな声が飛び交っている。
嫌な予感はますます大きくなる。
俺は人波をかき分け、掲示板が見える位置まで何とか進んだ。
周りに集まる生徒たちの視線を集めていたのは、学校新聞。
大きな見出しにこう書かれていた。
『生徒会と風紀委員会が癒着』
「なんだ、これ……?」
唸る俺の声は、周りの喧騒にかき消された。




