ライナスルート15
悲しい展開が続いていますが、もう少しお付き合いください。
「姫様、とてもお綺麗です。」
「リナ、ありがとう。」
鏡に映る自分の顔を見る、ピンクの髪の毛は綺麗に編み込まれている。父様似の目は淡い色合いで彩られ強調せず、柔らかなイメージで仕上がっている。
王命で決まったこの結婚、何としても纏めねばいけない。この婚礼には私の個人的な気持ちは必要無い、円満な関係を築かねばいけない。
ドクンと痛む胸を押さえて立ち上がる、胸に痛みに繋がる何かを振り払うように振り向き歩き出す。以前の様に振る舞うことは許されないのだ、もう何も知らなかった子供のままではいられないんだから。
指定された部屋に辿り着き、騎士が開けたドアを通り抜ける。
室内に入り数歩進んだ時、部屋の奥の窓際に佇む人物を見て、動きが止まってしまった。
ありえない!目を見開き前を見据える、ここに居るはずの無い人物がそこに佇んでいる。
後ろから聞こえるドアの閉まる音で、目の前の人物がこちらを振り向いた。そして佇む私に気がつき、いつもの様に微笑んだ。
そこに居たのはライナス様だった…。
「姫様、こんにちは。」
何故このような場所にライナス様が居るのか分からないが、震える身体で挨拶を返す。
「ライナス、ごきげんよう。」
「今日は一段と輝いて見えます、美しくなられましたね。」
今更そんな言葉聞きたくない!先程この気持ちは置いてきたつもりだったのに、心が悲鳴をあげそうになるのを抑えて言葉を返す。
「ライナスも元気そうで何よりです、額の傷はもう痛みは無いのですか?」
「ご心配ありがとうございます、もう痛みはございません。」
「そう、それは良かったわ。」
あの事件で私を庇って傷ついた額の傷は、今は赤くなり額から眉にかけて痛々しく今も残っている。あの事件のせいでライナス様は第2騎士団の副団長の地位も失い、辺境に送られてしまう事となったのだ。
誰よりも私を恨む資格のあるのがライナス様だ、幼い頃の私のわがままのせいで全てを失ったのだから。
正面を向いてライナス様を見つめる事が出来ず、斜め下に視線を向けてしまう。
幼い頃見たライナス様が母様を見つめる瞳を思い出すと未だに心が痛くなる、特別は母様であって私じゃ無いんだ。あのバラ園でライナス様と母様との間にある絆を見せつけられた、私には絆など存在するはずも無く虚しい関わりでしかない。
私はライナス様の唯一になりたい、離れている間もずっと思っていたのだから。ライナス様にも幼い頃にも伝えたが、子供ではなく1人の女性として見て欲しい。
確かにあの頃と比べれば身長も伸びたし、色々成長し女性と呼ばれる存在ににはなったと思う。だけど心は幼い頃から変わらず、ライナス様からの愛を求めて泣くばかりだ。
私を見て、私を愛してと…。
なにも成長していない自分に吐き気を覚える、あの頃なりふり構わず叫べていた私の方が前向きだったのかもしれない。
体裁を取り付くわないといけなくなった今、叫ぶ事が叶わなくなったドロドロとした気持ちが心に痼となって残る。
どう足掻いても私ではライナス様の特別にはなれないのだから、そうこの気持ちはライナス様にとって重荷にしかならないのだから…。
必死に押さえ込んだ決意が、ライナス様を前にするとまたぶれてしまう。責務を果たす為には今更そんな事は出来ない、私の決意が揺らぐ前に早くこの場から逃げないと。
「私は部屋を間違えた様だから、失礼するわ。」
言い終わるなり身体の向きを変え、部屋を出るために歩き出そうとするが、背後から伸びてきた腕にふわっと優しく囚われた。
私が動かなくなったのを確認した後、そっと後ろに抱き寄せられて温かな温もりを背に感じている。されるがままにライナス様の腕の中に抱き込まれたのに、私は目を見開き動くことが出来ずにいた。
いつの間に背後に詰め寄られていたのか、全く分からずに混乱してしまう。何が起こっているのか現状を把握出来ずに、温もりに包まれながら思考が停止しそうになる。
「部屋を間違えてはいませんよ。」
後ろから抱き込まれた事によって、耳元でライナス様の普段とは違い、艶っぽい言葉が聞こえてくる。
「やっと迎えに来る事が出来ました。姫様、貴方を愛してます。」
何を言われているのか分からなくなってくる、今ライナス様は何を言っていたのだろう。
反応が薄く動かない私を、捕まえておかなくても逃げないと判断したのか腕の拘束を解き、ライナス様は私の正面に回り込んだ。
「姫様、愛しています。どうか私のものになってください。」
私の手をすくい上げ、手のひらをキスを落としながら囁かれている。震える唇で、なんとか一言だけ呟くように言葉が零れ落ちた。
「…嘘よ。」
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