ライナスルート12
閲覧ありがとうございます、ライナスルートもクライマックス突入です。
楽しんでいただけると嬉しいです。
右顔を血に染めたライナス様に私は目を見開き、声にならない悲鳴をあげつつ傷に震える手を伸ばす。ライナス様は伸ばす手を掴み大丈夫だという様に、優しく微笑み私を抱き上げた。
私は震える手でただただライナス様の首に抱きついて、泣く事しか出来ない。
そして私を取り戻したライナス様は、男達を振り切って走り出した。ライナス様は男達に暴力を振るわれてボロボロの身体なのに、私をこれ以上危険に晒さないようにとの気遣いに涙が止まらない。
しばらく走った先に庭園警邏中の兵士達を見つけ、兵士の1人に私を預けた後、ライナス様は数人の兵士を連れて来た道を戻って行った。名前を呼び手を伸ばす私に優しく微笑み、進行方向を見たライナス様の表情は騎士としての凛とした顔つきをしていた。
兵士に預けられた私はそのまま王宮に戻され、連絡を受けて慌てて来た両親の元に戻った。泣きながら無事を喜び抱きしめてくれる母様に抱きつき泣いていると、父様が2人を纏めて抱きしめてくれた。両親の腕に抱かれホッとした瞬間、気の緩みからか泣きながら気を失ってしまった。
私が起きた時には全て片付いていた、犯人の確保もライナス様の処分も…。
ライナス様は私を危険に晒した罪で、未だに魔物が生息している辺境の地に送られることになっていた。この辺境の地はゲームでは最終決戦があった場所で、戦いによって荒れた大地に闇の力の残滓が残った場所だ。その闇の力が残った為か、この地には未だに魔物が生息していて人々に危害を加えている。
私のせいでライナス様をそんな危険な地に送ることになってしまった事に、泣いて父様に訴えたが聞き入れて貰うことが出来なかった。
ライナス様が出立する日、私は見送りの為に母様と共に門まで来ていた。どれだけこの日が来なければ良いのにと思っても、無情にもこの日を迎えていた。
出発準備をしている一団の中に、折れたのか左腕を固定し布で首に吊っているライナス様を見つけた。
あの一件の後ライナス様に会うことが出来ずに、今日まできていたのだ。謝罪をせねばと思う気持ちと、感謝を伝えねばと思って過ごしてきた数日を思い出す。こちらに気がついたライナス様は、一団に指示をした後こちらに来てくれた。
歩いてくるライナス様の右側の額には、大きなガーゼが貼り付けられていた。あの時大量に出血していた場所だと気が付き、また涙が溢れそうになった。
「王妃様に姫様、この様な場所まで見送りありがとうございます。」
「ライナス、貴方の無事を祈っているわ。」
ライナス様と母様が話すのが一段落着くのを待っていると、ライナス様がいつもの様に話しやすいように膝を着きしゃがんでくれた。
泣きそうな表情の私をみたせいか、ライナス様は困った様な表情を浮かべてしまった。困らせるために来たんじゃないと、笑顔を心がけて声をかける。
「ライナスこの前は注意してくれたのに迷惑かけてごめんなさい、そして助けてくれてありがとう。」
するとライナス様は微笑みつつ返事を返してくれた。
「いえ姫様、守りきる事が出来ずにすみませんでした。姫様はいつでも笑っていてください、姫様が泣いているのは皆心配します。」
ライナス様の左腕にそっと触れて、身体の状態を聞くと大丈夫ですと答えてくれた。ライナス様とポツポツと話していると、母様は一団の方に向かい歩き出した。母様がいなくなった事で、姫としてではなく私個人としての話をする。
「本当にごめんなさい、父様に言ったけどどうにもならなくて。ライナスは私を守ってくれたと言っているのに、父様は聞き入れてくれなくて…。」
「当然の結果だと思っています。姫様お父上と話してあげてください、姫様が冷たいと嘆いておられましたよ。」
父様はライナス様になんて事を話しているんだ、一瞬で恥ずかしさに顔が赤くなるのがわかった。
聞き入れてもらえなかった後からどう接して良いのか分からなくなって、父様とは話していないのだ。
「娘に嫌われたらお前のせいだと、酷く狼狽えて泣いておられましたよ。」
恥ずかしさに更に追い打ちがかかる、アワアワとしているとライナス様が笑ってくれた。
「姫様はこれまで通り振る舞えば良いのです、どうか笑顔を忘れずに過ごしてください。」
言い終わるとライナス様は右手で私の左手をすくい取り、そっと手の甲に口ずけをしてくてた。そして立ち上がり一団に声をかける。
「出発する、皆位置につけ。」
私は口ずけされた左手を握りながら、去っていく一団を見送る事しか出来なかった。
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