ライナスルート10
この状況を目の当たりにして、鈍器で頭を叩かれた気分だった。
母様は腹黒王子の父様と結ばれて私が居る、ヒロインは腹黒王子ルートを攻略したんだと思っていた。
でもここはゲームであってゲームじゃ無い世界なのだ、攻略されていないライナス様が母様を好きじゃないなんて、何故決めつけて考えていたんだろう。
攻略したから恋愛感情が生まれるのでは無い、ここは普通に人が心を持っている、普通の世界なんだ。
急に凄く自分が惨めに感じてきて、1歩下がろうとして母様の手を引っ張ってしまった。私の行動で2人が気が付き、どうしたのかとこちらを見てくる。
なんて言っていいのか分からずに、母様の手のひらから手を抜いて更に1歩下がる。
「リリー、どうしたの?」
「姫?」
2人が声をかけてくれるが、頭がグルグルとして後ろを向いて走り出す。背後から母様の呼ぶ声が聞こえてきたが、そのままバラ園を走る。
私やっぱり子供になったんだなと思う、30代のOL時代の記憶を持っているが、ただ本当に持っているだけでは意味もない。
本当に情けなくて涙が止まらなくて、ポロポロと涙を流しながら走り続ける。
無茶苦茶に走り続けていると、後ろから追い越されて前に回られた。今1番顔を合わせにくいライナス様だった、ライナス様を確認すると私も止まってしまう。ポロポロと涙を流しながら走っていたので、結果泣き顔をライナス様に晒すことになってしまった。こういうところが子供扱いに繋がるのは分かるけど、今の私では我慢が出来なかったのだ。スカートを両手でギュッと握り嗚咽を漏らさないように頑張るが、両目から涙が大量に溢れてくる。
ライナス様は困った顔で佇んでいたが、こちらに近ずいて私の側まで来て片膝をついて視線を合わせてくれた。
「姫、この先は一般公開されているエリアになりますので、一緒にお戻りください。」
口を開くと嗚咽が出るのでしゃくりながら、首を横に振ってしまう。今ライナス様と一緒にいるなんて耐えることできない、こんな子供っぽいく泣いてみっともない所を見せたくない。
「姫落ち着いてください。私が傍に居るのが耐えれないなら、誰か交代を呼びますので、せめて代わりが来るまで我慢してください。」
そうじゃない!そうじゃなくて、と気持ちだけが高ぶってしまい、首を横に振りながらしゃくりが酷くなる。
こんな子供でしかない私だけど、私はライナス様にただ好きなのだと分かって欲しい。ライナス様の傍に居たいのだと、ただただそこ事を伝えたいのだと泣きながら実感した。
しゃくりながら泣く私をライナス様は眉毛を下げて困った表情で、背中を一定のリズムで叩いて宥めようとしてくれた。
それはライナス様の優しさなのは分かるが、本当に子供みたいに扱われている事実が悔しくて悲しい。
私はライナス様にとってはヒロインの子供で、王国の姫という子供なのだと感じると胸が苦しくなっていく。
目の前の少し困った表情で優しく諭すこの人に、1人の女性として見て欲しい。
ギュッと握りこんでいたスカートを手放して、ライナス様の首に小さな手を回して口ずけをする。前世も縁がなかった為か経験不足なせいでそれは口付けといえるものではなく、口と口をぶつけた様なものだった。
不意をつかれたのかビックリして固まったライナス様に、1歩下がって思いの丈を叫ぶ。
「わ…私はライナス様が好き!産まれる前から好きで、今はもっと好き。確かに私は子供だけど、この好きという気持ちは本物だから。
1人の女性として見て欲しい!」
制止されていたが思いを言い切って再び走り出す、ライナス様から否定やまた子供扱いな言葉を聞きたくなくて。
子供じゃないと訴えながら、子供の癇癪みたいな振る舞いをしてしまい自己嫌悪に陥る。
聞きたくなくて逃げる、本当に自分が子供で嫌になる。
だけど今はただこの場を逃げたくて走り続けた。
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