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今回だけ連投です。

目を覚ました私は泣いた。

何故か部屋のベッドに横になっていたけれど、そんなことはどうでもよかった。


ずっと信じていた愛していた人に裏切られた。


酷すぎる。私が何をしたと言うのか。

いい大人だと言うのに、王妃だと言うのに、感情が止まらず大泣きした。

鼻が詰まり、目が腫れぼったい気がする。

久しぶりに泣いたな……と考えると、急に扉がノックされた。


!?


私はもしかしたら魔力暴走で城を壊したから捕まるのかもしれない。捕まって死刑になるかも。でももう良いか。生きてる意味も無い。

でも、泣いてるので返事も出来なくて、止まらなくて息も出来なくなってきた。

扉が開く音がして、誰かが中に入ってきた。


「お嬢様失礼いたします!どうなさったのですか!?」


入ってきたのはアンジェラ。小さい頃の私の専属侍女であり、私が昔クビにした優秀な侍女だ。

なんで……なんでアンジェラが?

……私に復讐しに来たの?

アンジェラの顔を見てビックリしすぎて、涙は止まった。


「…………アンジェラ……?」

「はい。アンジェラですよ、お嬢様。悲しい夢でも見たのですか?」


アンジェラはベッドの近くで腰を落として私に目線を合わせると、しっかり絞った濡れたタオルを渡してきた。


「…………アンジェラ……」


アンジェラは私が我儘を言っても注意してくれる唯一の人だった。優しく厳しく、私が小さな頃から傍に居てくれた。本当のお母様より母のような人だった。

私が癇癪を起こしてクビにしてしまい、後から凄く後悔したのだ。


私は差し出されたタオルじゃなくて、アンジェラの首に縋りついた。

アンジェラごめんなさい。そう伝えたかった。

あらあら、今日はどうしたんですか?と優しく言うとアンジェラは私の背中に手を回し持ち上げた。

持ち上げた!??

あ、アンジェラ…………あなた力持ちなのね!?

王妃である私の体重は多少贅沢しているので重いはず。

びっくりしてアンジェラの顔を見ると、アンジェラの瞳に写ったのは、いつもの私じゃなかった。

え?私じゃない?

んんんん?泣いた後で苦しいがアンジェラの瞳を覗き込む。


「レジーナ様、どうなさいました?」


そうクスクス笑うアンジェラ。

アンジェラ!目を閉じないで!でも、アンジェラは私をレジーナと呼んだ。私の名前だわ。

私も、さすがにおかしいことに気づいた。

アンジェラにしがみついている手を見ると小さい。

まさか……嘘でしょ?

そんなはずないじゃない。嫌だわ、ショック過ぎて私ったら夢を見てるのね?でも、アンジェラが出てくるなんて嬉しい夢だわ。

アンジェラは子供にするように私の背中をポンポンポンと叩きながら身体を揺らし始めた。

あ、寝かせる気なのね。と気づいたが泣き疲れと心地良さに逆らえず意識を手放した。



次の日、目が覚めた私は夢と変わらない違和感を覚えたため、急いでベッドから降りて鏡の前に走った。

そして冒頭に戻る。


「やっぱり……子供の私だわ」


顔をぺたぺた自分で触りまくる。

柔らかい。もちもち。

いま、私何歳なのかしら。

しかし、泣いたのは夢では無かったらしい。

目が若干腫れている。私が寝たあとアンジェラが冷やしてくれたのかな?


『おはよう、レジーナ』

『おはよーレジーナ!』


そう私の隣から声をかけるのは時の精霊と水の精霊。

変わらず精霊も見えるのね。


「おはよう精霊さんたち」


そう挨拶をして、着替えようとクローゼットを覗く。

わぁ……服がいっぱい。

私はあまり自分のクローゼットを覗く事が無い。

侍女が全部やってくれるから。


それにしても、ピンクに水色、リボンゴテゴテでフリフリヒラヒラなドレスばっかりだ。

つり目で赤茶色の髪の私には似合わないであろう服。

昔の私はこういうドレス好きだったものね。

私はクローゼットを開けたまま途方にくれていた。

どれぐらいそうしていたか分からないが、部屋のドアがノックされた音で我に返った。


「はい」

「お嬢様!ドナでございます!しっ、失礼致します!」


私はまた懐かしさに感動した。

小さい頃のもう人の専属侍女のドナ。私が虐めていた侍女だ。

虐めていた……と言うか、まだ侍女になったばかりで緊張して色々上手くできないドナにキツく当たっていたのよね。

私の許可も無くドアを開けたドナに思わず笑ってしまった。


「ふふっ」

「お、お、お嬢様?」


笑っている私が大変恐ろしいのかドナは顔を真っ青にしている。

その後ろから鋭い声が聞こえた。


「ドナ!お嬢様からの許可が出てないのにドアを開けるとは何事ですか!申し訳ありませんお嬢様。私の指導が甘かったようです。罰するのであれば私に。」


深々と頭を下げるのはアンジェラだ。

そうそう、私がドナに強く当たってたのはコレが嫌だったからだわ。アンジェラは私の怒りがドナに向かうのを庇う。

ドナが失敗したのに謝るのアンジェラ。アンジェラはドナを大切に侍女として育てようとしてた。私はアンジェラを取られたような気がして嫌だったのよね。んで、あまりにもドナを庇うから癇癪を起こしてアンジェラをクビにしたんだった。


でも、こうやって見るとドナも嫌じゃない。

アンジェラをクビにした後、ドナは人形のような侍女になって行くのよね。感情を出さない鉄仮面のような侍女に。


もしこの不可解な現象が私にもう一度人生をやり直すチャンスを与えてくれた事なのだとしたら……私はもう間違えないわ。


絶対にアンジェラをクビにしない!

私も幸せになってみせるんだから!


私はそう誓い、アンジェラとドナを見た。

ドナも自分がやらかした事に気づいたようで、アンジェラの隣で深々と頭を下げている。手はエプロンドレスを握り締めて震えている。


「怒ってないわよ、ドナ。アンジェラも頭を上げて?」


私がそう言うとゆっくり頭を上げたアンジェラとドナの瞳は見開かれていた。

この反応からすると、もう既にドナにキツく当たっていたのね。


「それよりも2人とも聞いてくれる?ドレスって他に無かったかしら……」

「え、あ……いえ、奥のクローゼットにお嬢様が着ておられないドレスが何着かあります。お持ち致しますか?」


アンジェラは何も追求する事無く、直ぐに先読みしてくれる。本当にできた侍女だわ。


「アンジェラ、お願い。」

「っ……少々お待ちください。」


またびっくりした顔。お願いって言ったこと無かったかしら。

小さい頃の私はどれだけ傍若無人だったのか。

頭を抱えたくなった。

アンジェラはドレスを取りに部屋から出ていった。

奥のクローゼットって言うのはこの部屋が面している廊下の奥にある、私専用のドレスや装飾品が置いてある部屋だ。そこには私が気に入らないと言った物が入れてある。


「ドナ。」

「はいぃぃ!!」

「私、顔洗ってくるから髪を整える準備しておいてくれるかしら。」

「は、はい!かしこまりました!」


私が顔を洗い歯を磨き戻ると、ドレッサーの椅子を引いて待っているドナ。この子やっぱり仕事は出来る子なのよね。

私が怖くて緊張しちゃうから失敗するだけで。有能じゃなきゃアンジェラが私にドナを付けるはずがない。

前は全く考えなかったけど、今なら色々見えてくる。

私が椅子に座ると、ドナは直ぐに目の前にアクセサリー類が入ったジュエリーボックスを出してくれる。


「ねぇ、ドナ?」

「は、はい!なんですか?」

「今日はハーフアップにしようと思うのよ。出来る?」


私は小さい頃はずっとツインテールだった。

フリフリヒラヒラに合うように。

だけど、私の精神は既婚者で……さすがにツインテールやフリフリヒラヒラはちょっと辛い。


「出来ます!ちょっとアレンジしてもいいですか?」


ドナは恐ろしく手先が器用だ。

鉄仮面ドナになってから、舞踏会の時とかドナに髪の毛をアレンジしてもらっていた。その前はアンジェラにしか触らせなかったからね。


「もちろんよ。お願いね?」

そう言うとドナは一瞬言葉に詰まってから、震える声でかしこまりました。と言った。

彼女の腕は信用してるから目を閉じてじっと待つ。

ドナの手が恐る恐るだけど、優しく私の髪の毛を触っていく。


「お嬢様、どの色の髪留めにします?」


ドナにそう言われて目を開いた。

アクセサリーを見ると、今更気づいたけど、どれもこれも青色。

しかも濃い青空の色だ。見てげんなりする。

この頃の私はもう既に、エドワルドが好きだったんだわ……

青空の色……彼の瞳の色だ。

…………絶対着けたくない。よし、全部売ろう。


「ドナ、リボンが良いんだけど……可愛いリボンない?」


「リボンですか?ありますけど……じゃぁ仮止めしておきますので、ドレスが決まったらドレスに合うリボンにしませんか?」


「うん。そうするわ!」


そう言って鏡を見ると、綺麗に編み込まれたサイドの髪に感動した。さすがドナね。


「可愛い髪型ね、ドナありがとう。」


私は鏡越しに見えるドナにそう言うとドナは泣きそうに顔を歪ませて、どういたしまして!と笑った。



閲覧ありがとうございました。

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