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『義教記』~転生したら足利義教でした。【完結】  作者: 万人豆腐
『永享の乱』 永享九年/嘉吉元年(1437)

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第九十六話 この湊を:よこせ兵庫☆

第九十六話 この湊を:よこせ兵庫☆


 関東の治罰も済み、時代が変わったことを寿ことほぐ為に、俺は花園君に「改元しようぜ!」と提案した。


 元号は『嘉吉』。『周易』の「孚于嘉吉、位正中也」から採っているのだというが、理由は後付けで良い。兎に角、この元号のうちにけりをつける。


――― 災い転じて福と成せるか。


 俺だって、百まで生きるとはいえ、現役で動けるのは後十年もないだろう。生き急いでも何らおかしくないのだよ。


『嘉』も『吉』も縁起の良い文字なのだが『嘉吉』は『不吉』に通じる気がするのは俺の前世の記憶のせいだと思われる。


 



 俺の『悪御所』のあだ名は『餅公方』で完全に上書きされている。みんな、征夷大将軍って武家の棟梁だって忘れてたんじゃねぇの? 貴種だよ俺。

 

 自分たちの都合のいいときだけ、南朝の名前出して逆らったり、その馬鹿どもを使嗾して民を苦しめる戦を繰り返す悪の親玉鎌倉公方を治罰した俺は、京のみならず、畿内をはじめ東は鎌倉、西は山口まで「俺にも餅をくれ」という熱い眼差しを受けているのだ。


 いや違う、太平の世を求められているのである。守護や管領、その他のいつから湧いているか分からない「元**」とか「元祖**」「本家**」を残らず「朝敵」として討伐しようという空気が流れ始めている。


 時間をかける、空気を作る、これ大事。


 伊賀も「あ、これ、ついてった方がよくね?」という空気であるし、元国司の信濃村上氏が朝敵として族滅され、沢・秋山一党の事も含めると伊勢国司の芋畠従三位君も首の後ろがチリチリしているようである。


「さて、赤松を暴発させ、その後は六角討伐であるか」

「……進めておりまする」


 今浜の惣構は一年程で完成するらしく、様々な人間が今浜に出入りしている状況で、六角や京極の影響下の国人共も「将軍の直臣になりたい」と声がかけられていると、義郷から文が届いている。いざという時の安堵状の準備を滞りなく行わせるようにしている。


 大和も特に問題なく、筒井が調子に乗っているというが、今までのギリギリライフからすれば許容できる範囲だろう。それに、播磨攻めには先鋒を務めさせるつもりなので、よろしくな。


 いま、赤松には近習の庶流赤松「播磨守」満政経由で、「九州征伐の為、兵庫湊を接収する。代官は満政」という命令を出している。多分、のらりくらりと躱して、俺を暗殺する準備が整ったところで油断させるために兵庫を明け渡す算段だろう。OK、タイミング待ってる。




 六角は近江に将軍直轄の街が新たに作られ、堅田衆と将軍家が琵琶湖の通商路を確保したのが恐らく気に入らない。とは言え、その湊は東国へ出兵する為の兵站拠点であり、「お前ら、朝敵の討伐になんか貢献してるのか?」という素朴な疑問で、打破できる程度の言いがかりである。


 そして、山名は虎視眈々と俺の隙を狙っている。もしかして、赤松と組んで俺を殺す気満々マンなのかもしれない。こんな所で山名宗全に死なれると、先のイビリ甲斐が無くなるので、あまり暴れないでもらいたいものである。さりげなく、近習経由で釘を刺しておこう。


 細川持之、相変わらずの昼行燈である。構わないんだよ、誰かが管領やっときゃいいんだから。義持時代みたいに、しゃしゃり出られても困るんだよ。あれだ、義満爺が将軍の頭越しに政治をしていたから、宿老を味方につけてバランスを取らざるを得なかった。それが倣い草になって、禿げ親父が死んだ後も、バランスとりで終わっていったわけだ。おまけに、一人息子はいきなり死ぬし。子供いっぱい作っておけばよかったのにな。


 俺は、宿老共が仕切っている間は「よきに計らえ」で子どもガンガン作る事にしたけどな。ライフワークバランスが悪かったな兄貴は。




 そして、月も改まった二月、突貫工事で改築した赤松邸が完成したという情報と共に、赤松満祐から「関東成敗の祝宴」を催したいと知らせがあった。


 自分の快気祝いと、新築した屋敷に俺を招いて歓待したいのだという。新築の屋敷に上司を招いて祝い事を主宰する。長年幕府の宿老として支えてきた赤松満祐としては、関東の件が落着して安堵した……というとても良い名分が立つ。


 将軍の「御成」を招請は、将軍が家臣の館に出向き祝宴を行う重要な政治儀式である。つまり、将軍と言えども、この手の誘いを断るのははっきりと相手に対し隔意があると知らしめることになる。


 赤松満祐の体面を潰す事になり、相手に反乱を起こさせる口実になり得るわけだ。だから、殺そうとしていると分かっていても避ける事は出来ない。


 この日の為に、俺は長い人生を耐えてきたのだ。あと少しで、心にずっとあるしこりが消えてなくなるのだと思えば、多少の危険は許容しよう。


 さて、どの辺りまで周知させるかだな。まあ、山名宗全こと、持豊にはどさくさに紛れて斬りつけてもいいかもしれない。そんなの、分からんよね。



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― 新着の感想 ―
[一言] ついに開幕の話に追いつきますね いかに準備を整えた上といっても相手の懐深くに飛び込むわけで、事態がどう動いていくのやら
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