第八十一話 それとも二人:篠川公方と稲川公方
第八十一話 それとも二人:篠川公方と稲川公方
俺の中では……九州・関東・奥州は『化外の地』として切り離し、緩やかな連邦制? という名の放置を目指そうと考えている。だって、奥州は金もでなくなるし、馬は自前で調達すればいいじゃない? 米とか高く売りつければいいんじゃないかと思う。もしくは、馬肉食べればいいんじゃないかなお前らは。
関東はそこまでではないが、関東管領の下で白黒つける方がいい気がする。まあ、官位あげないだけだけどね。だって、『化外の地』で何で将軍が官位帝におねだりすると思ってるんだ。朝貢してこいや!!って言えばいい?
反抗するなら、勝手にやればいいと思うんだよな。元々京にいない奴らだし。現地で自活すればいいと思う。
関東にどうしても欲しいものって……絹糸くらい? 明と貿易して不足する分くらいは買ってもいいかもしれないが、質は確か悪いよね?木綿の生産が明で盛んになってきている時期のはずなので、その辺り、禅僧で詳しい奴いないかね。
実際、この五十年後くらいから記録が全国的に見られるんだが、既に、禅寺辺りが茶と並行して綿花の栽培を始めているかもしれないな。三河は将軍の奉公衆の領地も多いので、ちょっと調べてもらうのもいいな。
――― や、別に生産チートじゃないから。歴史準拠だからね!
実は、鎌倉公方の他にも、今一人別の公方が存在する。篠川公方、足利満直は足利持氏の叔父である。また、その弟の満貞は稲川公方と呼ばれ、二人とも陸奥に滞在している。
いや、ただ存在しているだけなんだけどね。
奥州管領が有名無実化したり、鎌倉府管轄になった奥州が反乱を起こしたりという事で……お前らが室町将軍にしている事と同じだよな! それで、持氏の親父が四十年くらい前に弟二人を送り出したわけだが、それで何か改善したわけでもない。
関東が関東管領と鎌倉公方に別れて争っているように、奥州は元の奥州管領の斯波氏や伊達氏と鎌倉公方派遣組に、奥州管領に対抗する国人がついて争うという二重構造になっているわけです。
だからさ……手を引いちゃおうと思うんだよ。別に、戦国末期までちまちま小勢力同士で争ってたじゃない? 任官するなら朝貢しろ、勝手に争ってこっち見んな! ってやる方がいいと思うんだよね。
なので、鎌倉府が鎮守府に改変された時点で、その鎌倉府の出先機関の思い付き公方たちは廃止します。そして手を引く。そもそも、領地が奥州にあったとしても横領されて京まで届かないから。無いのと一緒だから。
それに、なんかかまってちゃんして来たら、奥州藤原氏みたいな対応をすればいいんじゃないかな。毛皮とか金とか馬とか交易すればいいと思う、駿河までおいで。
とはいえ、持氏牽制のために「大事な存在だよ!」アピールは継続中です。
正長二年、鎌倉公方につく石川氏が白河結城氏や那須氏と抗争を起こし持氏が支援すると、篠川公方は幕府に対して持氏討伐のための兵を送ること、下総結城氏・小山氏・千葉氏に対して篠川公方に従うように命じる御内書の発給を要請したんだ。
だがしかし、実際、このオッサンは自分は出陣しなかったんだよな……意味ないだろお前の存在。
一応、東国の守護らに満直への支援を命じる御内書を発給しているけどな。居てもいなくても同じだし、鎌倉公方がいなくなれば不要の存在だよな。
鎌倉公方=出張所の所長で人事権無いのに、勝手に弟を派遣して『公方』名乗らせてんじゃねぇよ。遠い親戚のおっさんの分際で。この親にしてこの子ありだよな。おまけに派遣した足利満兼は禅秀と一緒に反乱起した賊だよね。そのまま配置して、何の実績もないとかおかしすぎる。
「御内書は希望通り発してやれ。向こうが何一つ対応できずとも構わぬ。命じた事も出来ない遠い親戚など、あてにする必要も守る必要もないからな。精々、実績を見させてもらおう」
「……」
上杉禅秀の孫の『周泰』君が顔を引きつらせています。ほら、うちは実力主義だから、血筋が良くて当たり前、結果を出して一人前だから。下手に、一族率いるより、単独で行動する方が仕事楽しいだろ?
守護代とか調整するの面倒じゃない? 国人領主とか言う事聞かないしな。これから内部統制を強化していくには、切り捨てたり圧し潰したりする対象をはっきり見せて行かないといけない。
叡山は生かさず殺さず、大和で片鱗を見せた次は関東。東北は切り捨て、次に九州に戦力を集中する。南九州は……交易対象だな。
山口で南九州と交易、駿河で奥州・関東と交易するくらいの感覚だろうか。
蝦夷とは日本海側の交流になるのだろうか。その場合、越前敦賀あたりを抑えるとして、その場合、近江を直轄領にする必要があるかもしれないな。九州の前に……近江征伐が必要だろう。
ほら、甲賀に追い出してもいいしな! 六角は歴史的にも甲賀に落ち延びるのがデフォだからね。
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