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『義教記』~転生したら足利義教でした。【完結】  作者: 万人豆腐
『宣徳要約』 永享六年(1434)

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第七十七話 もう船は作れない:次の遣明船決まる

第七十七話 もう船は作れない:次の遣明船決まる


 この時代における五山の僧というのは、東大卒の官僚様のようなものであり、俺の側近に加わった義郷は差し詰め財務官僚から国会議員に転身したようなものだろうか。


 対する宿老たちは、県議上がりの地元利権を代表する存在だろう。話が噛み合わないが、舐められることは多分ない。いざとなれば、還俗して斯波家の当主だって務められるのだからな。


「……以上でございます」

「「「……」」」


 次の遣明船のお話が既に始まっている。来年には向かわせることになっている。『義郷』は今回、既に進んでいる故唐船奉行に任じはしないが、十年後? の正式な遣明船の派遣の際には奉行ができるように実務経験を積ませたいと思っている。


 ちょっと考えると、財務官僚が政治家になった場合って、税務署を退職した税理士や「辞め検」と言われる検事を退職した弁護士のような感じなのだろうな。元々そこにいた人間だから、内部事情がよくわかるし、コネも伝手もある。なら、ブレーンとして利用しない手はないと思うのだが、どうなんだろうな。


「今次の遣明船は幕府・相国寺・大乗院・山名氏・妙法院の五隻で進めておりまする」


 唐船奉行である 飯尾某が説明を始める。前回も今回も単独参加は幕府・相国寺・山名氏・妙法院で、赤松ら大名合同は無しである。


――― 山名、どんだけ金持ってんだよ!!


 妙法院は三十三間堂で有名な蓮華王院の本院で、初代院主を最澄が務めた名門、尚且つ、二百年ほど前からは法親王が務めている天台宗でも別格と言えるだろう。


 大乗院は興福寺だな。


「多武峯寺も希望しておりますが、今回には船の用意が間に合わぬ事になりそうで、見送りとなりましょう」


 多武峯寺は藤原鎌足の菩提寺。藤原氏所縁という点では興福寺同様なのだが、こっちは対抗上天台の末寺となっている。つまり……仲が悪い。であるから、大和の統治には協力的なのだ。興福寺の敵は味方……ということらしい。


 遣明船は所謂『千石船』に相当する大型航洋船なので、船自体を持っているものが少ない。大内、細川辺りも出したいのであろうが内部統制が進んでいないので次回以降になるの様子だ。


 そういう意味で、山名は西軍の大将を務める事は全くおかしくない存在であり、足利将軍などなんとも思っていないだろうという事は察せる。


「では、それで進めるという事で構わぬ」

「はっ!」


 因みに、今回の正使であった龍室道淵君は、どうやら山名と組んでズルしたらしいので……内偵中です。頑張れ、阿弥ちゃん聖ちゃん。この辺りも、山名本体ではなく、山名に関わる存在で幕府より山名の利を貴んだ奴らを処罰していくことで、統制する気があるというアピールは大切だと思うの。


 一発で免取は無理でも、累積で何回か免停喰らわせて免許消すのはそうそう難しくないと思う。赤松が先だけどな。




 因みに、明からの使僧は『春雷』という、なんだか微妙な名前の坊主だったんだが、満済さんにこっそり「しれっと船出してもOK」と聞いたところ、「明の船を使えば分からないから、上手くやれ」と言われたようである。


 長江やシナ海で国内でも船で物資のやり取りをしていることから、向こうの商人と顔が繋がれば、問題なくある程度の貿易は可能となるらしい。なるほど、倭寇とうまくやれって事か。


 とはいえ、明の政府の弾圧が激しくなる百年位後に倭寇が盛んになるから、今のところ朝貢貿易を制限しながらも続けている方が良いのかもしれない。


 とはいえ、最初十七カ国であった朝貢国が最大六十カ国にも増えてしまい、ちょっぴりのお土産で沢山のお土産ゲット作戦を禁ずる方向に明は動いている。それに、「そのうち関税をかけるようになるかもしれない」とも聞いている。お財布が厳しいことになり、最初は私貿易も許可制であったのが全面禁止、そして、公的な勘合貿易のみ許す形で現状維持されているので、ありがち貿易ブーストは無理っぽいな。


 


 勘合貿易に関しては貿易そのものの利益も大切だが、日本の統治者を外部の大勢力である『明』の皇帝が足利将軍家である事を認めたということに意義がある。


 国内最大の権威である『帝』と、この世界(と思われている東アジア)の最大国家『明』の皇帝が俺を日本の統治者として今回改めて認めたということだから……逆らうってのはどうなのという事になる。


 今後も遣明船に関しては幕府の仕切りで行うわけで、今川君辺りも参加できるように声をかけてみようと思う。金さえあればどうとでもなるのだが……次回は厳しいだろうな。関東制圧が終了するまで、駿河は京としてブレイクしにくいと思うもんな。





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― 新着の感想 ―
[気になる点] 明は当時、世界最大ですよ。 [一言] 未来の経済知識が有る分、細川、山名とか大手を潰した場合の損失に目が行き、史実程徹底できないパターンだ。 遣明船は民間船を借り入れ、遠洋航海用に改造…
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