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『義教記』~転生したら足利義教でした。【完結】  作者: 万人豆腐
『山門騒動』 永享五年(1433)

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第六十四話 対武貫上意図:長槍足軽

第六十四話 対武貫上意図:長槍足軽


 比叡山延暦寺はこの時代から百五十年ほど後、織田信長に焼討されたことは有名だが、何も初めてではない。足利義教も焼討している。全山皆殺しと言う事はないが、信長が初見ではないのだ。


 また、応仁の乱後、細川政元も比叡山を焼討にしている。根本中堂又燃えた。


 叡山が京の経済に大きく関わっており、尚且つ、オフショア・治外法権的存在であったことは少し前に述べたと思う。叡山に窓口的存在がいたのと同様、幕府にも窓口が存在する。山門奉行と京都所司代だ。


 歴史的には飯尾某が奉行を担当し、赤松のみっちゃんと叡山の僧が金貸しでズルをし、馬借が暴れたりしている。神輿を担ぎだし強訴を始めるのはこいつらも同じテキストを使っている。


 確かに、幕府の強制執行で本来取られる以上の財産を毟られた場合、支払以降の生活が成り立たなくなる。自己破産しても、持ち家は取上げられなかったるするじゃない? 支払いや利息の見直しも行われて、

無理のないレベルまで見直したるするでしょ。それを、幕府の力を背景とした……まあ、赤松・飯尾がグルになって無理やり回収してので爆発したってところだな。


 この世界では所司代は俺の部下なので、この話は半ば不発に終わっている。そもそも、正長の土一揆のきっかけを作った近江坂本の馬借どもに隙を見せるのは、こちらの手札を失うに等しいからな。


 本来なら、不法な抗議を行った馬借どもに懲罰を与えるところを、赤禿が後ろ暗い事をしているので「お互い様」でなあなあの決着を付けざるをえなかったのがこの年の十月に起こる一つの事件だったりする。これは、当然起こらない。主体者がいないからな。





 今一つ、坂本の馬借が絡む事件で、祇園社の設けた関で関銭を徴収された馬借が神輿を持ち出して祇園社に強訴を行ったりしている。これも、放置できないので、俺が御教書を発して仲裁したりすることになるのだが、これも、京における米の流通にこいつらが大きく影響しているからであったりする。


 赤松所司代時代、馬借・米商人と組んで京の米の価格を釣りあげる操作が行われていた形跡があり、洛中で騒動が発生していた。これも、所司代と侍所を分けることで未然に防ぐことが出来ていると言えるだろう。


 馬借も叡山も潜在的には、俺の敵と陰に日向に手を結び将軍の権威と権力を削ごうと暗躍している。馬借は赤松の禿げ、恐らく禿げの後は山犬の手が伸びるだろう。叡山には鎌倉公方の影響も出ている。


 鎌倉公方に関しては、叡山を使嗾し「いざとなったら俺が仲介する」とでも言っているようなのだが、駿河に挨拶も来れない遠い親戚が何言ってんだかと思わないわけでもない。お前の仲介に何の意味があるんだ?


 赤松のパグに関しては、京の知事兼県警本部長である所司代とは何の関係もなくなっているので、正直馬借たちもどうしていいのか分からないようである。新右衛門さんの所に山吹色の菓子は……この時代存在しないのだが、袖の下をもって現れるのだが、そりゃ、政所執事伊勢氏の婿さんがそんなもの受け取るわけも、便宜を図るわけもない。


 つまり、赤犬どもが悪さできたのは、関係ない播州人だったから金貰って京が困っても「俺ら播州人だし☆」で考えずにいられたのだが、奉行衆・奉公衆はそうではない。京の住人は家族や友人親戚なのだから、それらを困らせて私財を蓄えているのが分かれば……竹槍の先に自分の首が刺さることになる。だから、改善されているのだろう。


 馬借どもが徒党を組んで暴れるのに、新しい装備が有効かどうかのテストの最中でもある。





「上様、このような長い槍がなぜ有効なのでしょうか」

「それは、武者の槍は突く物だが、雑兵の槍は遠間から叩くものだからよ」


 はい、三間半の長槍……もしくはファランクスです。弓には弱いが馬や歩兵の突撃にはとても有効です。人間土塁だからな。


「この動く人の壁であ奴らを遠間から叩きのめす」

「はあ」


 実際、中庭に小姓らに三間半(約6m)の長槍を持たせ、木人を並べて実際に操作させてみる。頭のはるか上からバンバンと激しく穂先の無い槍が叩きつけられる。


「槍は太刀よりうんと安い。それに、逃げ散りやすい雑兵も槍を以って立ちふさがるだけなら、周りのものも大勢いるので簡単にはバラバラにならん。後ろで声を出す番衆が太刀を引き抜いて逃げるものを斬るとしておけば、相手が弱る間、長槍を上下に振る程度の事は続けられる」


 長槍持ちは『壁』なので、それが動きを拘束している間に、側面や背後からベテランの武者達が襲いかかることになるだろう。信長なら鉄砲だろうが。


「三列に槍持ちを並べ、その背後に熟練の足軽を配置する。槍で身動き取れぬほど叩きのめしたら、足軽が止めを刺して回る」

「……槍持ちは流人でも構わぬわけですな」

「訓練の費用も大して掛からんし、装備も槍だけで構わぬ。なにせ、鎧を身に付ければ動けなくなるであろうし、近寄られれば刀を持っていても容易に斬り殺される。集まり、乱れず槍先を揃える事こそが奴らの生き残る道。選択肢を絞り、やらざるをえなくすれば流民も強兵となる」

「……左様でございますな」


 さて、荷運び下肥担ぎで体力を培った口入屋で働く流人に新たな仕事が提供されることになる。


『槍で武者を叩きのめしてみませんか? 未経験者歓迎 装備支給 食事付き』




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[良い点] 『槍で武者を叩きのめしてみませんか? 未経験者歓迎 装備支給 食事付き』 この時代だと伍長以上の下士官(文字が読める人)の応募ですね。 [気になる点] 長槍隊が有効なほど、相手が群れてくれ…
[良い点] 圧倒放武な職場ですね
[一言] 『槍で武者を叩きのめしてみませんか? 未経験者歓迎 装備支給 食事付き』 安定の黒さ。でもそこが好き
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