第五十九話 風々:大和制征の準備
第五十九話 風々:大和制征の準備
十月細川持之が管領に就任、斯波君お疲れ。関東討伐で頑張れよ。なんだか、義教が畠山満家や斯波義淳、満済さんが死んで歯止めがきかなくなったという表現をする者がいるが……とても心外です。
穏健派? 事なかれ主義だろ。満済さんは、まあしょうがない。本当は醍醐寺の坊さんなんだから。だがしかし、畠山と斯波は管領だろう。なに甘えたこと言ってんだお前ら。
斯波は、まあ爺さんの傀儡だったからしょうがないけどさ、畠山満家は義満に嫌われて弟に家督を奪われて、親父が死んだら弟が兄に譲ったって話だろ。つまり、一度失った人間は保守的になりやすいんだって俺は思う。また何かやらかして失うより、今のままが良いって後ろ向きの発想だな。
この二人が管領でいたおかげで、山犬と赤禿が伸張したんだろうと俺は考えている。アグレッシブな活動しても将軍も管領も事勿れの護り一辺倒だから、表面的に安定しても実際はバランスの問題だ。
だから、山名一強になった時に歯止めがきかず、細川勝元が一方の旗頭になってしまった。畠山も斯波も後継者争いで内紛してたからな。内部統制も甘かったんだろうな。他人に甘い奴が自分の身内に厳しくできるわけが無い。
その辺り、これからうまく利用して切り崩していかねばならないだろうな。
さて、問題です。何故、大和の国人は騒乱を止めないのでしょうか。
――― 答え、幕府の権威を認める気が無いから。
つまり、未だに大和は守護のいない国であると思っているわけだ。自分たちが好き勝手やって興福寺の寺領を横領しても、都合がいい時に思い出したように南朝方について「俺たちは南朝だから、味方するっしょ」くらいの勢いなわけです。
確か、大覚寺義昭騒乱ってのも大和はフィーバーするよな。北畠が暴れる時は同調する。なあ、この世にいらなくないかこいつら。
いや、独立したいなら浄土で独立させてやればいいんじゃない。一向宗がそうされたじゃない。都合がいい側に付いて世を乱す輩は許さないという姿勢を見せるのにちょうどいい見せしめだよな越智。伊勢街道を掌握するにもあのあたり直轄にしたかったんだよ丁度。
なに、上の奴らを根切にして、下の奴らは期間決めて奴隷に落とせばいいだろ。どうせ協力して調子に乗ってたんだ。上が全員死罪なら、下は十年二十年の農奴生活も仕方あるまい。そう思わない?
『加害行為は一気にやってしまわなくてはいけない。人にそれほど苦汁を舐めさせなければ、それだけ人の恨みを買わずにすむ。これに引き換え恩恵は、人々に長くそれを味わわせるためにも小出しに施すべきである』
越智氏の殲滅を繰り返さぬように、関東・九州の反乱を長引かせない為今回は徹底的にやる。勿論……『朝敵』の認定もしてやろうじゃないか。
南朝? もう何十年も前に無くなりましたけど。南朝の方から来ました詐欺でしょうか。あ、後醍醐天皇があの世で待ってらっしゃるでしょうから、送って差し上げますねって感じだな。
俺は駿河からの戻り道、次々と使者を出す。
伊勢では守護代たちとも顔を合わせ、越智攻めの伊勢方面の封鎖を行う事になるので戦の準備をするようにと指示を出す。
また、北畠には近習を将軍の名代として書面と共に遣わし、
「越智の者を匿う場合、同罪と見なし今度こそ根絶やしにする」と伝える。
はっ、こっちは本気だからな。
近江では六角経由で伊賀に使者を出し、越智の者が伊賀に逃亡してこないように間道含め関を設けて取り締まる事。
また、宇陀郡内を山狩りする予定なので、事前に隠し砦の類を洗い出すように指示を出す。
北畠同様、
庇い立てするもの、匿う者は朝敵として根絶やしにする事を伝える事も付け加える。
とにかく南朝を騙る賊徒を撫で斬りにするのだ。
南朝なんてものは存在しない。過去には存在したが、いまおわす帝を
貴ばない者は全て朝敵であり『まつろわぬ者』として古事記や風土記に
記載されている異形の蛮族同様として討伐する。
南朝を騙る賊を討伐するに、今後は令外官の官職の将軍名を復活させ、
副将軍格として討伐軍の対象とすることも考えよう。まあ、官位を与える
くらいのお金は出そうじゃないか。
『鎮狄将軍』『征越後蝦夷将軍』なんてのが奈良時代には存在したようだ。まあ、仕事は蝦夷征伐なんだけどな。
『討卑賊将軍』『征隼人持節度大将軍』というのも九州に派遣されている。隼人征伐だそうだ。
とにかく、帝の南都行幸前に足元を脅かす卑賊を討伐し、畿内を安らか
に知らしめんという事だよ諸君。
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